《完結》虐待されてる奴隷少女を救った、異世界最強の龍騎士
第102話「謎の小隊」
執務室。
城に連れ帰られた龍一郎は、ふたたびエムールにお見合い写真を押し付けられることになった。
「さあ。どのお嬢さまとお見合いなされますか? 個人的な意見を言わせていただくと、スフィル公爵の娘がオススメですよ。公爵の娘ですから、非常に強力なコネクションができると思います」
「エムール。知ってるだろ。オレはベルのことが好きなんだ。お見合いなんかできないって」
なんでこんな胸の内を、他人に打ち明けなくはならないのかと思う。
「もちろんリュウイチロウさまが、ベルのことを気にかけているのは存じております。その思いは涙ぐましいとさえ思いますよ」
「だったら、お見合いなんて出来ない」
「会うだけでも良いのです。無碍に断ると良い印象を与えませんよ」
「向こうは結婚するつもりで来るんだろ? 会って変に期待させるほうが失礼じゃないか?」
「そこは上手くやってください」
「上手くってなんだよ」
「とにかく、有力な貴族たちとのコネクションをつくるために……」
おーい、主人――と部屋に跳びこんできた者がある。
インクだ。
「こらッ。入ってくるときは、ノックぐらいしろッ」
と、エムールがインクに怒気をブツけてきた。
「私と主人の仲なんだから、ンなの必要ねェんだよ」
と、インクが言いかえしている。
この2人はなにかといがみ合っている。
インクという邪魔が入ったおかげで、話が途切れた。龍一郎は安堵した。エムールには申し訳ないが、やはりお見合いをする気分にはなれない。
で、どうしたんだ――と龍一郎はうながした。
「おっと、そうだ。大変だぜ、主人」
「何が?」
「都市の外に、どっかの小隊と思われる騎士が来てるんだ。女の人が追いかけられてるみてェだったぜ」
「小隊だって?」
とっさにこのあたりの地図を、脳裏に思い描いた。別に国境付近というわけではない。近くにグランドリオンがあるぐらいだ。グランドリオンにいる貴族の私兵か何かだろうかと思った。どこの小隊であるにしろ――。
「女の子を追いかけまわすというのは、気になるな。よし、助けに入るとしよう」
「さっすが、主人だぜ」
と、インクは指をパチンと鳴らした。
「私もお供しましょう。《血動車》の準備をして参ります」
エムールが弾かれたように立ち上がる。
「いや。老赤龍に乗って行くから大丈夫だ」
「わかりました。くれぐれも無茶はなされないように。私も城の騎士を連れて後から、応援にまいりますので」
「わかった」
エムールが執務室から出て行くのを確認した。
龍一郎は執務室の窓を全開にした。うららかな空のもとに、セリヌイアの都市を見下ろすことができる。
窓の外には城の屋根が露台のごとく伸びている。龍一郎はその屋根に乗った。インクも屋根におりてきた。地上を見下ろす。城の執務室から地上までは、おおよそだが100メートル近くはあるように感じた。
「シッカリ捕まってろよ」
「りょーかいッ」
インクのカラダを抱えたまま、龍一郎は屋根から飛び下りた。カラダが地上に向かって真っ逆さまに落ちてゆく。
まさに命綱なしのバンジージャンプだ。
「いやっほォォ――ッ」
と、インクが叫んでいた。
落下してゆく龍一郎のカラダを、ふわりと救い上げた赤い影があった。
老赤龍だ。
龍一郎が来て欲しいと思うと、老赤龍は必ずそのタイミングで現われる。屋根から身を投げ出すことも、老赤龍を信用しているからこそ出来ることだった。
「まったく、無茶をするでないわ」
老赤龍はあきれたようにつぶやいた。
城に連れ帰られた龍一郎は、ふたたびエムールにお見合い写真を押し付けられることになった。
「さあ。どのお嬢さまとお見合いなされますか? 個人的な意見を言わせていただくと、スフィル公爵の娘がオススメですよ。公爵の娘ですから、非常に強力なコネクションができると思います」
「エムール。知ってるだろ。オレはベルのことが好きなんだ。お見合いなんかできないって」
なんでこんな胸の内を、他人に打ち明けなくはならないのかと思う。
「もちろんリュウイチロウさまが、ベルのことを気にかけているのは存じております。その思いは涙ぐましいとさえ思いますよ」
「だったら、お見合いなんて出来ない」
「会うだけでも良いのです。無碍に断ると良い印象を与えませんよ」
「向こうは結婚するつもりで来るんだろ? 会って変に期待させるほうが失礼じゃないか?」
「そこは上手くやってください」
「上手くってなんだよ」
「とにかく、有力な貴族たちとのコネクションをつくるために……」
おーい、主人――と部屋に跳びこんできた者がある。
インクだ。
「こらッ。入ってくるときは、ノックぐらいしろッ」
と、エムールがインクに怒気をブツけてきた。
「私と主人の仲なんだから、ンなの必要ねェんだよ」
と、インクが言いかえしている。
この2人はなにかといがみ合っている。
インクという邪魔が入ったおかげで、話が途切れた。龍一郎は安堵した。エムールには申し訳ないが、やはりお見合いをする気分にはなれない。
で、どうしたんだ――と龍一郎はうながした。
「おっと、そうだ。大変だぜ、主人」
「何が?」
「都市の外に、どっかの小隊と思われる騎士が来てるんだ。女の人が追いかけられてるみてェだったぜ」
「小隊だって?」
とっさにこのあたりの地図を、脳裏に思い描いた。別に国境付近というわけではない。近くにグランドリオンがあるぐらいだ。グランドリオンにいる貴族の私兵か何かだろうかと思った。どこの小隊であるにしろ――。
「女の子を追いかけまわすというのは、気になるな。よし、助けに入るとしよう」
「さっすが、主人だぜ」
と、インクは指をパチンと鳴らした。
「私もお供しましょう。《血動車》の準備をして参ります」
エムールが弾かれたように立ち上がる。
「いや。老赤龍に乗って行くから大丈夫だ」
「わかりました。くれぐれも無茶はなされないように。私も城の騎士を連れて後から、応援にまいりますので」
「わかった」
エムールが執務室から出て行くのを確認した。
龍一郎は執務室の窓を全開にした。うららかな空のもとに、セリヌイアの都市を見下ろすことができる。
窓の外には城の屋根が露台のごとく伸びている。龍一郎はその屋根に乗った。インクも屋根におりてきた。地上を見下ろす。城の執務室から地上までは、おおよそだが100メートル近くはあるように感じた。
「シッカリ捕まってろよ」
「りょーかいッ」
インクのカラダを抱えたまま、龍一郎は屋根から飛び下りた。カラダが地上に向かって真っ逆さまに落ちてゆく。
まさに命綱なしのバンジージャンプだ。
「いやっほォォ――ッ」
と、インクが叫んでいた。
落下してゆく龍一郎のカラダを、ふわりと救い上げた赤い影があった。
老赤龍だ。
龍一郎が来て欲しいと思うと、老赤龍は必ずそのタイミングで現われる。屋根から身を投げ出すことも、老赤龍を信用しているからこそ出来ることだった。
「まったく、無茶をするでないわ」
老赤龍はあきれたようにつぶやいた。
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