《完結》虐待されてる奴隷少女を救った、異世界最強の龍騎士
第97話「お見合い」
城の食堂。
大きさは学校の体育館ほど。天井はドーム状になっている。床は黒と白のタイル床になっており、木造の長イスと長机が整然置かれている。食堂には老赤龍が身を丸めるようにしてくつろいでいる。
老赤龍が出入り口として使っている巨大な窓がある。今は閉ざされているが、たっぷりの日差しを取り入れていた。
その一席に、龍一郎は座っている。
ベーコンエッグの乗ったトーストが、皿の上に置かれていた。香ばしい肉の匂いが龍一郎の鼻腔を刺激した。ゴクリ。生唾。食べようと手を伸ばしたところでエムールが割って入った。
「リュウイチロウさま、今日のお見合いはスフィル公爵の娘と、シラティニア伯爵の娘から申し込まれております」
エムールが、見合い相手の顔写真を龍一郎に見せてきた。まさに青春の美の結晶と言うべきキレイな女性たちだった。白く透明な肌や艶やかな髪は、写真の中からも甘い匂いを放つかのようだ。
が――。
龍一郎は興味がない。
いや。
興味がないと言えばウソになる。
キレイな女性を見ると、好かれたいとは思うし、頭がポーッとなる。
けれど、お見合いとなると話が変わってくる。
「だからオレはお見合いとか、そういうのはやるつもりないんだって」
「形の上だけでも良いのです。龍一郎さまのお見合い相手が殺到しており順番待ちの状態なのですよ」
エムールはそう言って、お見合い写真をぐいぐい押し付けてくる。
ケルゥ侯爵に仕えていたエムール・フォン・フレイは、龍一郎を主人として鞍替えしていた。「リュウイチロウさまに救われたこの命。リュウイチロウさまのために使わせていただきます」と、エムールは志願してきたのだ。
龍一郎は龍騎士の爵位をもらいうけた。それと同時に、湖に浮かぶ水上都市であるセリヌイアを拝領したのだ。
つまり、一城の主である。
エムールはその龍一郎の部下になるとみずから申し出たのだった。
「だってオレはまだ16歳なんだよ。結婚なんかできるわけないだろ」
「血質値が良ければそんなことは関係ありません。ゼルン王国の貴族たちがこぞって、龍一郎さまとの結婚を申し出ているのです」
「だってオレは……」
龍一郎は上座にすわっている。
右手にはエムールが座り、左手にはメイドたちが座っている。
メイドたちは一様に黒いドレスに白い前掛けをしている。そのなかにはベルもまじっている。ベルはカラダが弱いので、働かせるのはどうかと思った。だが、「何かお役に立ちたいのです」と言って、みずからメイドになったのだ。
そのベルの可憐な顔に見惚れた。
結婚はさすがにまだ早急だと思うが、仮に結婚するならベルとしたい。龍一郎はベルにどうしようもなく惚れているのだ。そのベルを前にして、他の女のお見合いというのは、さすがにフシダラな気がする。
「良いですか龍一郎さま」
エムールは身を乗り出して来る。
エムールの顔立ちも非常に整っている。少年のような凛とした顔立ちをしているが、それがエムールの飾り気のない素朴な魅力でもある。顔を近づけられると緊張をおぼえる。
「な、なんだよ」
と、龍一郎は上体を後ろに引いた。
「ゼルン王国の国王が、リュウイチロウさまに龍騎士という特別な爵位をさずけた。つまりリュウイチロウさまは貴族なのです」
「まぁ、そうなるのかな」
貴族になったという自覚は、まだあまりない。
「ただの貴族ではないのですよ。龍を従える貴族。しかも血質値200の龍神族なのです。貴族たちから龍一郎さまの言動は注目されているのです。とりあえず、その気がなくとも、お見合い相手と会うべきです」
唾を飛ばしながらの熱弁だ。エムールの唾から、ベーコンエッグトーストを守らなくてはならなかった。
「わかった、わかったよ」
「あッ、それからもうひとつお見合いの申し込みがあるのですが」
「他にも何かあるのか」
龍一郎はヘキエキした。
モテるのは良い。
気分が良くなるのはトウゼンだ。
だが、ベルより可憐で健気な娘に出会えるとはトウテイ思えなかった。
龍一郎がお見合いすることに関して、ベルがどう思っているのか、龍一郎は非常に気になる。キレイな女性なら片っ端から手を出す男だと思われたくはない。
ベルはあまり感情を表に出すタイプではないので、何を考えているのか読み取りにくい。今も軽くうつむいているだけだ。
「フィルリア姫もお見合い相手として名乗り出ています」
「ダメダメ。フィルリア姫とオレなんかがじゃ、釣り合わないよ」
「フィルリア姫より、高貴な女性がお好み――と?」
「違うって! そうじゃなくて、あんなキレイな人とオレじゃ釣り合わないって意味だよ」
フィルリア姫は、ゼルン王国の第三王女だ。
めくめくその美貌たるや、会うたびに戦慄をおぼえるほどだ。
高嶺の花は、あくまで高嶺に咲いているものだ。苦労してそれを摘みに行こうとは思わない。そんな遠くに咲いている花よりも、龍一郎はベルという身近に咲いている花に苦心しているのだ。
「モテる男は辛いのぉ」
老赤龍が茶化してきた。
龍一郎は日に日にベルにたいしての想いが強くなっている。決して、冗談で済むことではない
茶化した老赤龍を軽く睨めつけた。
大きさは学校の体育館ほど。天井はドーム状になっている。床は黒と白のタイル床になっており、木造の長イスと長机が整然置かれている。食堂には老赤龍が身を丸めるようにしてくつろいでいる。
老赤龍が出入り口として使っている巨大な窓がある。今は閉ざされているが、たっぷりの日差しを取り入れていた。
その一席に、龍一郎は座っている。
ベーコンエッグの乗ったトーストが、皿の上に置かれていた。香ばしい肉の匂いが龍一郎の鼻腔を刺激した。ゴクリ。生唾。食べようと手を伸ばしたところでエムールが割って入った。
「リュウイチロウさま、今日のお見合いはスフィル公爵の娘と、シラティニア伯爵の娘から申し込まれております」
エムールが、見合い相手の顔写真を龍一郎に見せてきた。まさに青春の美の結晶と言うべきキレイな女性たちだった。白く透明な肌や艶やかな髪は、写真の中からも甘い匂いを放つかのようだ。
が――。
龍一郎は興味がない。
いや。
興味がないと言えばウソになる。
キレイな女性を見ると、好かれたいとは思うし、頭がポーッとなる。
けれど、お見合いとなると話が変わってくる。
「だからオレはお見合いとか、そういうのはやるつもりないんだって」
「形の上だけでも良いのです。龍一郎さまのお見合い相手が殺到しており順番待ちの状態なのですよ」
エムールはそう言って、お見合い写真をぐいぐい押し付けてくる。
ケルゥ侯爵に仕えていたエムール・フォン・フレイは、龍一郎を主人として鞍替えしていた。「リュウイチロウさまに救われたこの命。リュウイチロウさまのために使わせていただきます」と、エムールは志願してきたのだ。
龍一郎は龍騎士の爵位をもらいうけた。それと同時に、湖に浮かぶ水上都市であるセリヌイアを拝領したのだ。
つまり、一城の主である。
エムールはその龍一郎の部下になるとみずから申し出たのだった。
「だってオレはまだ16歳なんだよ。結婚なんかできるわけないだろ」
「血質値が良ければそんなことは関係ありません。ゼルン王国の貴族たちがこぞって、龍一郎さまとの結婚を申し出ているのです」
「だってオレは……」
龍一郎は上座にすわっている。
右手にはエムールが座り、左手にはメイドたちが座っている。
メイドたちは一様に黒いドレスに白い前掛けをしている。そのなかにはベルもまじっている。ベルはカラダが弱いので、働かせるのはどうかと思った。だが、「何かお役に立ちたいのです」と言って、みずからメイドになったのだ。
そのベルの可憐な顔に見惚れた。
結婚はさすがにまだ早急だと思うが、仮に結婚するならベルとしたい。龍一郎はベルにどうしようもなく惚れているのだ。そのベルを前にして、他の女のお見合いというのは、さすがにフシダラな気がする。
「良いですか龍一郎さま」
エムールは身を乗り出して来る。
エムールの顔立ちも非常に整っている。少年のような凛とした顔立ちをしているが、それがエムールの飾り気のない素朴な魅力でもある。顔を近づけられると緊張をおぼえる。
「な、なんだよ」
と、龍一郎は上体を後ろに引いた。
「ゼルン王国の国王が、リュウイチロウさまに龍騎士という特別な爵位をさずけた。つまりリュウイチロウさまは貴族なのです」
「まぁ、そうなるのかな」
貴族になったという自覚は、まだあまりない。
「ただの貴族ではないのですよ。龍を従える貴族。しかも血質値200の龍神族なのです。貴族たちから龍一郎さまの言動は注目されているのです。とりあえず、その気がなくとも、お見合い相手と会うべきです」
唾を飛ばしながらの熱弁だ。エムールの唾から、ベーコンエッグトーストを守らなくてはならなかった。
「わかった、わかったよ」
「あッ、それからもうひとつお見合いの申し込みがあるのですが」
「他にも何かあるのか」
龍一郎はヘキエキした。
モテるのは良い。
気分が良くなるのはトウゼンだ。
だが、ベルより可憐で健気な娘に出会えるとはトウテイ思えなかった。
龍一郎がお見合いすることに関して、ベルがどう思っているのか、龍一郎は非常に気になる。キレイな女性なら片っ端から手を出す男だと思われたくはない。
ベルはあまり感情を表に出すタイプではないので、何を考えているのか読み取りにくい。今も軽くうつむいているだけだ。
「フィルリア姫もお見合い相手として名乗り出ています」
「ダメダメ。フィルリア姫とオレなんかがじゃ、釣り合わないよ」
「フィルリア姫より、高貴な女性がお好み――と?」
「違うって! そうじゃなくて、あんなキレイな人とオレじゃ釣り合わないって意味だよ」
フィルリア姫は、ゼルン王国の第三王女だ。
めくめくその美貌たるや、会うたびに戦慄をおぼえるほどだ。
高嶺の花は、あくまで高嶺に咲いているものだ。苦労してそれを摘みに行こうとは思わない。そんな遠くに咲いている花よりも、龍一郎はベルという身近に咲いている花に苦心しているのだ。
「モテる男は辛いのぉ」
老赤龍が茶化してきた。
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