《完結》虐待されてる奴隷少女を救った、異世界最強の龍騎士
第89話「龍の目覚め」
ガケをよじ登ろうと試みてみた。しかし、少しのぼったところで手を滑らした。谷底に尻を打ちつけた。
「いってー」
「ムリすんなって」
と、インクが駆け寄ってきた。
「チョット、登れそうにないな」
運動音痴の龍一郎では難しいものがある。かりに龍一郎が登れても、インクを引き上げることが難しい。
「龍に頼んでみたらどうだ?」
「龍に?」
「助けてくれたんだし、頼んだら上に連れて行ってくれるかも」
「クロエイから助けてくれたって言ってたけど、どうやって助けてくれたんだ?」
「その龍、クロエイのこと食ってたよ。バクバク――って」
「そりゃまた、ずいぶんと悪食だな」
あんなものを食って、腹とか壊さないのだろうか。
龍だから、大丈夫なのか。
「だからたぶん、私たちにたいして好意を抱いてくれてると思うけど」
「言葉通じるのか?」
「さあ……」
と、インクが首をかしげる。
ポニーテールがゆらりと揺れた。
「起こしたとたんに食い殺されるとかないだろうな?」
「エサならたくさんあるし、たぶん大丈夫じゃないか?」
たしかに人肉はあたりに散らばっている。
セッカク血を差しだして肩代わりしたのに台無しだ。ケルゥ侯爵にたいして苛立ちを感じる。
「で、どうやって起こすんだ。あれ?」
「叩けば良いんじゃない?」
「マジかよ」
龍一郎はなるべく龍を刺激しないように、息を殺して近づいた。
眠っているライオンを起こしに行くようなバカはいない。相手はライオンどころか、それよりもはるかに巨大な龍なのだ。
起こした途端に食い殺されるんじゃないかと思うと、さすがに腰が引ける。
「んー。コホン」
と、龍の前に立ち、咳払いをしてみた。
反応をうかがう。
……すやすや。
「もしもし?」
頭に触れてみた。
硬い。岩肌のようだ。
「なんだ、コゾウ」
しゃべりかえしてきた。
まさか理解できる言語で返してくると思っていなかった。酷く驚いた。驚きのあまりボウ然となった。
「しゃべれる――のか?」
「龍神族どもに、言語を解するチカラを与えたのは、誰だと思うておるか」
龍はそう言うと、口をニヤリと釣り上げてみせた。
鋭くとがったキバがあらわになる。
「じゃあ、あんたが老赤龍って龍か」
「その通り。あらゆる時代やあらゆる世界から、龍神族を召喚した根源である」
カラダを丸めていた龍は、しゃんと立ち上がった。
2本の足で立ち上がる。腹が見えた。腹の部分は白い甲冑のような皮膚でおおわれていた。翼の内側には無数の血管が浮き出ている。紅色の尻尾がお尻でユッサユッサと揺れていた。業火が揺らめいているかのようだ。
見ているだけで、圧倒させられた。
「オレを召喚したのも?」
「我だ」
「どうしてオレを、レオーネに召喚しんだんだ?」
一度、聞いてみたいことだった。
運動神経が良いわけでも、頭が良いわけでもない。いたって平凡な高校生の龍一郎が、どうして召喚されたのか。
「このレオーネという世界にはびこる思想に染まっていない者であれば、誰でも良かった」
「じゃあ、偶然選ばれた1人ってわけか」
そういうことだ、と老赤龍はその長い首をタテに振った。
「我は過去のことを悔いておる。非常に多くの悲劇を産み落としてしまった。我らの罪――龍罪を払拭してもらわねばならぬ。そのために13人の龍神族を招いた」
非常に低い声音をしている。
大岩を引きずるかのような声だ。
「龍罪?」
「龍の罪だ。クロエイを産み落とし、血質値などという概念のもとになってしまった。龍神族を招いたのは、その罪滅ぼしのつもりだ」
「なら、奴隷をできるだけ助けたい――って思ってるってことだよな?」
「我ら龍が生んでしまった人の格差を埋めたいとは思うておる」
「じゃあ、協力して欲しいことがある」
話したいことは、いろいろあるが、今はノンビリしている暇はない。
「コゾウの血と、我の血とは相性が良かった。おかげでかぎりなく、龍に近い血を与えることができた。コゾウの頼みであればきいてやろう」
助けたい人がいる。
龍一郎はそう言った。
「いってー」
「ムリすんなって」
と、インクが駆け寄ってきた。
「チョット、登れそうにないな」
運動音痴の龍一郎では難しいものがある。かりに龍一郎が登れても、インクを引き上げることが難しい。
「龍に頼んでみたらどうだ?」
「龍に?」
「助けてくれたんだし、頼んだら上に連れて行ってくれるかも」
「クロエイから助けてくれたって言ってたけど、どうやって助けてくれたんだ?」
「その龍、クロエイのこと食ってたよ。バクバク――って」
「そりゃまた、ずいぶんと悪食だな」
あんなものを食って、腹とか壊さないのだろうか。
龍だから、大丈夫なのか。
「だからたぶん、私たちにたいして好意を抱いてくれてると思うけど」
「言葉通じるのか?」
「さあ……」
と、インクが首をかしげる。
ポニーテールがゆらりと揺れた。
「起こしたとたんに食い殺されるとかないだろうな?」
「エサならたくさんあるし、たぶん大丈夫じゃないか?」
たしかに人肉はあたりに散らばっている。
セッカク血を差しだして肩代わりしたのに台無しだ。ケルゥ侯爵にたいして苛立ちを感じる。
「で、どうやって起こすんだ。あれ?」
「叩けば良いんじゃない?」
「マジかよ」
龍一郎はなるべく龍を刺激しないように、息を殺して近づいた。
眠っているライオンを起こしに行くようなバカはいない。相手はライオンどころか、それよりもはるかに巨大な龍なのだ。
起こした途端に食い殺されるんじゃないかと思うと、さすがに腰が引ける。
「んー。コホン」
と、龍の前に立ち、咳払いをしてみた。
反応をうかがう。
……すやすや。
「もしもし?」
頭に触れてみた。
硬い。岩肌のようだ。
「なんだ、コゾウ」
しゃべりかえしてきた。
まさか理解できる言語で返してくると思っていなかった。酷く驚いた。驚きのあまりボウ然となった。
「しゃべれる――のか?」
「龍神族どもに、言語を解するチカラを与えたのは、誰だと思うておるか」
龍はそう言うと、口をニヤリと釣り上げてみせた。
鋭くとがったキバがあらわになる。
「じゃあ、あんたが老赤龍って龍か」
「その通り。あらゆる時代やあらゆる世界から、龍神族を召喚した根源である」
カラダを丸めていた龍は、しゃんと立ち上がった。
2本の足で立ち上がる。腹が見えた。腹の部分は白い甲冑のような皮膚でおおわれていた。翼の内側には無数の血管が浮き出ている。紅色の尻尾がお尻でユッサユッサと揺れていた。業火が揺らめいているかのようだ。
見ているだけで、圧倒させられた。
「オレを召喚したのも?」
「我だ」
「どうしてオレを、レオーネに召喚しんだんだ?」
一度、聞いてみたいことだった。
運動神経が良いわけでも、頭が良いわけでもない。いたって平凡な高校生の龍一郎が、どうして召喚されたのか。
「このレオーネという世界にはびこる思想に染まっていない者であれば、誰でも良かった」
「じゃあ、偶然選ばれた1人ってわけか」
そういうことだ、と老赤龍はその長い首をタテに振った。
「我は過去のことを悔いておる。非常に多くの悲劇を産み落としてしまった。我らの罪――龍罪を払拭してもらわねばならぬ。そのために13人の龍神族を招いた」
非常に低い声音をしている。
大岩を引きずるかのような声だ。
「龍罪?」
「龍の罪だ。クロエイを産み落とし、血質値などという概念のもとになってしまった。龍神族を招いたのは、その罪滅ぼしのつもりだ」
「なら、奴隷をできるだけ助けたい――って思ってるってことだよな?」
「我ら龍が生んでしまった人の格差を埋めたいとは思うておる」
「じゃあ、協力して欲しいことがある」
話したいことは、いろいろあるが、今はノンビリしている暇はない。
「コゾウの血と、我の血とは相性が良かった。おかげでかぎりなく、龍に近い血を与えることができた。コゾウの頼みであればきいてやろう」
助けたい人がいる。
龍一郎はそう言った。
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