《完結》虐待されてる奴隷少女を救った、異世界最強の龍騎士
第86話「エムール・フォン・フレイ Ⅰ」
フィルリア姫に送った伝書鳥が、エムールのもとに戻ってきた。「リュウイチロウの捜索に死力を尽くす」と書かれていた。
「はぁ」
と、エムールはため息を落とした。
捜索してくれるのは良いが、やはりまだリュウイチロウの安否は不明のままのようだ。
困った。
エムールは頭をかかえた。
エムールは自宅にいた。自宅と言っても騎士に与えられているアパートの一室だ。木造のテーブル、イス、ベッド――と簡素な様子をていしている。
場違いに大きなクローゼットだけが異様な存在感をはなっている。ふだんエムールが使う黒騎士の鎧が入っているのだ。
ベッドでは小さな生き物が、カラダを丸めている。
ベルだ。
リュウイチロウが地上に取り残されて、安否不明の旨を伝えるとベルは卒倒してしまった。それ以来、何かに耐えるかのように身を縮こまらせている。今もフトンを頭からかぶってしまっていた。
「どうやら、まだリュウイチロウの安否は不明のようだ。しかし、心配は必要ない。フィルリア姫が必ず見つけ出してくださるはずだ」
「……」
ベルはブツブツとひとりでつぶやいていた。
よく聞いてみると、「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……」と連呼しているのだった。
肉体はここにあるが、心はどこか別の場所にあるかのようだった。
(まいったな)
と、エムールは思う。
この娘の心は、リュウイチロウがいなければ絶対零度の恐怖の中にあるようだった。
オマケに今、セリヌイアの騎士たちが血眼になって、ベルのことを探している。
セリヌイアは浮上とともに、血質値の低いものを地上に放り出した。ベルも見つかりしだい、この都市から放り出されるはずだ。
セリヌイアは、かなり地上から離れた位置にある。ここから放り出されたらベルは死ぬ。ベルひとりの命を慮って、いちいちセリヌイアを地上におろすということは、まずありえない。
「リュウイチロウさまから、言われているのだ。ベルの身柄はこのエムール・フォン・フレイの名のもとに、必ず守り通して見せる。なにも心配する必要はない」
そう優しく語りかけてみるが、ベルの目は死んでいる。
コンコン。
トビラがノックされた。
エムールは気を引き締めた。ベル捜索の手が伸びてきたことを悟った。
「ここに隠れていてくれ」
と、ベルのことを、黒騎士の鎧の入ったクローゼットに押しこんだ。
「はぁ」
と、エムールはため息を落とした。
捜索してくれるのは良いが、やはりまだリュウイチロウの安否は不明のままのようだ。
困った。
エムールは頭をかかえた。
エムールは自宅にいた。自宅と言っても騎士に与えられているアパートの一室だ。木造のテーブル、イス、ベッド――と簡素な様子をていしている。
場違いに大きなクローゼットだけが異様な存在感をはなっている。ふだんエムールが使う黒騎士の鎧が入っているのだ。
ベッドでは小さな生き物が、カラダを丸めている。
ベルだ。
リュウイチロウが地上に取り残されて、安否不明の旨を伝えるとベルは卒倒してしまった。それ以来、何かに耐えるかのように身を縮こまらせている。今もフトンを頭からかぶってしまっていた。
「どうやら、まだリュウイチロウの安否は不明のようだ。しかし、心配は必要ない。フィルリア姫が必ず見つけ出してくださるはずだ」
「……」
ベルはブツブツとひとりでつぶやいていた。
よく聞いてみると、「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……」と連呼しているのだった。
肉体はここにあるが、心はどこか別の場所にあるかのようだった。
(まいったな)
と、エムールは思う。
この娘の心は、リュウイチロウがいなければ絶対零度の恐怖の中にあるようだった。
オマケに今、セリヌイアの騎士たちが血眼になって、ベルのことを探している。
セリヌイアは浮上とともに、血質値の低いものを地上に放り出した。ベルも見つかりしだい、この都市から放り出されるはずだ。
セリヌイアは、かなり地上から離れた位置にある。ここから放り出されたらベルは死ぬ。ベルひとりの命を慮って、いちいちセリヌイアを地上におろすということは、まずありえない。
「リュウイチロウさまから、言われているのだ。ベルの身柄はこのエムール・フォン・フレイの名のもとに、必ず守り通して見せる。なにも心配する必要はない」
そう優しく語りかけてみるが、ベルの目は死んでいる。
コンコン。
トビラがノックされた。
エムールは気を引き締めた。ベル捜索の手が伸びてきたことを悟った。
「ここに隠れていてくれ」
と、ベルのことを、黒騎士の鎧の入ったクローゼットに押しこんだ。
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