《完結》虐待されてる奴隷少女を救った、異世界最強の龍騎士
第85話「フィルリアフィルデルンⅢ」
(チクショウッ)
と、フィルリアは胸裏で毒を吐く。
リュウイチロウというこの世界にとって、重要な駒を亡くしたかもしれない。
(私にとっても、亡くしたくない青年であった
と、下唇を噛みしめた。
彼をセリヌイアにやったのはフィルリアだ。意図していなかったとしても、血を出すように促したのもフィルリアだ。
自責の念があった。
「おい、まだ到着しないのか?」
「もうすぐです」
「そうか」
焦燥がフィルリアの胸奥でうずまいていた。一刻もはやくリュウイチロウの捜索に取り掛かりたかった。
1人の青年の安否に動揺していることを気どられまいと、泰然としているつもりだ。が、どうしても護衛の騎士を急かしてしまう。
「見えてきましたよ」
街道を真っ直ぐ行くと、セリヌイア跡地が見えてきた。できるだけ接近してから《血動車》を止めさせた。
「これは酷い……」
フィルリアはつぶやき、《血動車》から出た。
セリヌイアはまるで巨人に踏み荒らされたような景観になっていた。都市は浮かび上がり、その部分はボッカリと穴が開いている。
周囲の貧民街があったはずの場所は、木材や木端が散乱していた。
その貧民街跡地には、まだ多くの人が残されていた。
「グランドリオンに応援を要請して来い。私は救助にあたる」
「はい」
グランドリオンを拝領した新しい領主は、フィルリアのイヌみたいな男だ。フィルリアの頼みなら、なんでも言うことをきくはずだ。
貧民街跡地に踏み込んだ。
足元の木端を踏み分けて進む。
カラダの一部が黒くなっている者が少なからずいた。暗黒病。フィルリアは自分の血を飲ませて治癒していった。
これがフィルリアの血のチカラだ。
治癒していくと同時に、リュウイチロウの話をうかがった。幸いとでも言うべきか、リュウイチロウの目撃証言は多かった。
リュウイチロウは貧民街を守るために、《血影銃》でクロエイを迎撃していたということだ。
その雄姿をマブタの裏に、ありありと描くことができた。しかしその後、リュウイチロウがどうなったのか知る者はいなかった。
浮かぶ都市の足元に近づいてみた。
朝日を受けて大きな影を落としていた。入射角の違いで落ちる影の場所が変わってくるのだろう。影は都市の真下というより、すこしズレた位置にできていた。
(やはり、そんなに高くは飛んでいないか……)
クロエイに襲われないだけの高さを保てれば良い――というわけだ。雨宿りでもするかのように、陽光を避けるクロエイたちが、都市の下に集っていた。日中は心配ないだろうが、日が暮れると出てくることだろう。
都市の痕は酷いものだ。
巨大な穴が開き、あちこちに亀裂が入っている。もはや大地が裂けてしまっている。奈落をのぞいてフィルリアは胆を冷やした。
落ちたら、助かりそうにない。
(それにしても――)
と、フィルリアは空を見上げた。
少しずつセリヌイアは移動しているように見える。
いったいどこへ向かっているのだろうか?
小一時間もしないうちにグランドリオンから、応援がやって来た。まだ生き残っている者たちを《血動車》に乗せて、グランドリオンまで運送することにした。
ケガ人の中にリュウイチロウの姿を探した。
残念ながら、見当たらなかった。
セリヌイアが、ユックリと、だが着実に、グランドリオンへ向かっているような気がした。
伝書鳥は、ちゃんとエムールのもとに帰っただろうか――と、フィルリアは空を見上げた。
と、フィルリアは胸裏で毒を吐く。
リュウイチロウというこの世界にとって、重要な駒を亡くしたかもしれない。
(私にとっても、亡くしたくない青年であった
と、下唇を噛みしめた。
彼をセリヌイアにやったのはフィルリアだ。意図していなかったとしても、血を出すように促したのもフィルリアだ。
自責の念があった。
「おい、まだ到着しないのか?」
「もうすぐです」
「そうか」
焦燥がフィルリアの胸奥でうずまいていた。一刻もはやくリュウイチロウの捜索に取り掛かりたかった。
1人の青年の安否に動揺していることを気どられまいと、泰然としているつもりだ。が、どうしても護衛の騎士を急かしてしまう。
「見えてきましたよ」
街道を真っ直ぐ行くと、セリヌイア跡地が見えてきた。できるだけ接近してから《血動車》を止めさせた。
「これは酷い……」
フィルリアはつぶやき、《血動車》から出た。
セリヌイアはまるで巨人に踏み荒らされたような景観になっていた。都市は浮かび上がり、その部分はボッカリと穴が開いている。
周囲の貧民街があったはずの場所は、木材や木端が散乱していた。
その貧民街跡地には、まだ多くの人が残されていた。
「グランドリオンに応援を要請して来い。私は救助にあたる」
「はい」
グランドリオンを拝領した新しい領主は、フィルリアのイヌみたいな男だ。フィルリアの頼みなら、なんでも言うことをきくはずだ。
貧民街跡地に踏み込んだ。
足元の木端を踏み分けて進む。
カラダの一部が黒くなっている者が少なからずいた。暗黒病。フィルリアは自分の血を飲ませて治癒していった。
これがフィルリアの血のチカラだ。
治癒していくと同時に、リュウイチロウの話をうかがった。幸いとでも言うべきか、リュウイチロウの目撃証言は多かった。
リュウイチロウは貧民街を守るために、《血影銃》でクロエイを迎撃していたということだ。
その雄姿をマブタの裏に、ありありと描くことができた。しかしその後、リュウイチロウがどうなったのか知る者はいなかった。
浮かぶ都市の足元に近づいてみた。
朝日を受けて大きな影を落としていた。入射角の違いで落ちる影の場所が変わってくるのだろう。影は都市の真下というより、すこしズレた位置にできていた。
(やはり、そんなに高くは飛んでいないか……)
クロエイに襲われないだけの高さを保てれば良い――というわけだ。雨宿りでもするかのように、陽光を避けるクロエイたちが、都市の下に集っていた。日中は心配ないだろうが、日が暮れると出てくることだろう。
都市の痕は酷いものだ。
巨大な穴が開き、あちこちに亀裂が入っている。もはや大地が裂けてしまっている。奈落をのぞいてフィルリアは胆を冷やした。
落ちたら、助かりそうにない。
(それにしても――)
と、フィルリアは空を見上げた。
少しずつセリヌイアは移動しているように見える。
いったいどこへ向かっているのだろうか?
小一時間もしないうちにグランドリオンから、応援がやって来た。まだ生き残っている者たちを《血動車》に乗せて、グランドリオンまで運送することにした。
ケガ人の中にリュウイチロウの姿を探した。
残念ながら、見当たらなかった。
セリヌイアが、ユックリと、だが着実に、グランドリオンへ向かっているような気がした。
伝書鳥は、ちゃんとエムールのもとに帰っただろうか――と、フィルリアは空を見上げた。
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