《完結》虐待されてる奴隷少女を救った、異世界最強の龍騎士

執筆用bot E-021番 

第84話「フィルリア・フィルデルン Ⅱ」

「やっ、止まれッ」
 フィルリアはそう怒鳴った。



 護衛の騎士があわえてブレーキを踏んだ。



「どうかしましたか?」
「エムールからの伝書鳥だ」



 フィルリアは外に出て、空に手を振った。伝書鳥は目ざとくフィルリアのことを見つけて降下してきた。



 伝書鳥は貴族たちのあいだではよく使われる鳥で、非常に頭が良い。《血動車》で手紙を届ける郵便屋の商売敵だ。



 手紙を広げる。
 かなり急いで書いたと思われるエムールの文字がつづられていた。



 リュウイチロウの血を吸い上げて、セリヌイアが浮上したこと。セリヌイアの浮上とともに、できた影から大量のクロエイが出没したこと。そして、リュウイチロウが助けた1500人は地上に置き去りにされたことも書かれていた。



「ケルゥ侯爵め!」



 手紙はさらに続く。



 貧民街はクロエイの襲撃により潰滅。
 さらに、リュウイチロウの安否は不明。エムールとベルの2人はセリヌイアに乗っており、ベルの身柄はエムールが保護しているということだった。



 リュウイチロウの安否が不明。



 その事実に、フィルリアは後頭部を殴られるような衝撃をおぼえた。



「バカなッ。ケルゥ侯爵は、リュウイチロウを連れて行かなかったということか?」



 手紙に向かって怒鳴っても、返答はない。
 手紙の内容を護衛の騎士たちにも伝えた。



「いかがいたしましょう?」
 と、護衛の騎士が問いかけてきた。



「急ぎセリヌイアへ行く。生き残っている者がいるかもしれん。まだ私の血で助けられる者もいるはずだ」



「しかし、都市の影でクロエイが大量発生しているのでは?」



「都市の浮上具合にも寄るだろう。高く飛んでくれているのであれば、大丈夫だろうとは思うが……」



 ここから見る限りでは、そんなに高くは飛んでいないように見える。空を飛ぶというよりも、空中に浮遊しているといったほうが的確かもしれない。



「接近は危険でしょう」



「安心しろ。危険だと判断したらすぐに退く。それに、これからは朝だ」



「はッ」



 エムールに返答を書いた。
 リュウイチロウの身柄はこちらで捜索するということ。ベルの身柄は引き続き死守しておけ、ということ。



 伝書鳥は、優雅にたゆたう空中都市へと引き返して行った。

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