《完結》虐待されてる奴隷少女を救った、異世界最強の龍騎士
第70話「ケルゥ侯爵の領主館~後編」
「オレは別の遠い世界から来ました」
と、龍一郎はつぶやいた。
「龍神族にはそういうヤツが多い」
「オレの世界では、人間が平等であることを美徳としていたんです。奴隷を全面的に肯定できないのは、その影響もあるかもしれません」
「このレオーネという世界にはクロエイというバケモノがいるのだ。クロエイたちは血質値の低いものに誘われる」
ケルゥ侯爵は、うっすらと生やしたアゴヒゲをナでながら言った。
「ええ」
「その血質値の低い者を守って、何が得られる? 何かメリットがあるか?」
「感謝されます」
バカみたいなこたえだが、龍一郎が率直に思っていることだ。グランドリオンの者たちは実際、龍一郎に感謝してくれた。恨まれるよりかは何倍も良い。
「感謝されて気持ち良くなる。それはわかる。しかし、それは浅慮というものだよ」
ケルゥ侯爵は続ける。
「血質値の低いものをエネルギーにして、ユックリと殺してゆく。するとやがてこの世界には血質値の高い者だけが残される。血質値の高い者と高い者が子供を生めば、さらに高い者が生まれる」
そして最終的には――とケルゥ侯爵はさらに続けた。
「血質値の低い者はいなくなる。みんな血質値が高ければ、クロエイを誘うことはない。明かりさえつけていれば、安心して夜を過ごせる」
そうだろう、とケルゥ侯爵が龍一郎の顔をのぞきこんできた。
「それは――」
シュバルツ村の出来事が、龍一郎の脳裏をかすめた。
ベルがいなければ、巨大種があの村に来ることもなかったのかもしれない。
「間違えているか?」
「それこそ理想論です。大勢の人間が死ぬことになる」
さすがにケルゥ侯爵の意見は、過激すぎる。
血質値の低い者はみんな殺してしまえと言ってるのと同じだ。
「残酷な策だと思うかね? しかし、血質値の高い者だけの世界をつくりさえすれば、クロエイに襲われる可能性はグッと少なくなる。まさしくユートピアだ!」
ケルゥ侯爵は声高らかにそう叫んだ。
この人は、マチス侯爵とは違う。
そう感じた。
ちゃんとした根拠があって、血質値の低いものを虐げているのだ。
「ケルゥ侯爵の言ってることはわかります。ですが、オレはその意見を認めるわけにはいきません」
その意見は、ベルの存在を否定する。
龍一郎はどうしようもなく、隣に座っている小さな生き物に惚れているのだ。ケルゥ侯爵の意見を受け入れるということは、ベルを助けたことも間違えていたということになる。
ははははッ――とケルゥ侯爵は豪快に笑った。
「私は〝龍の血派〟の意見をまっこうから否定するつもりはないよ」
「そう――なんですか?」
「〝純血派〟だとか、〝龍の血派〟だとかは、すべてクロエイがいるからこそ、出てくる思想だ。大地に縛られている者たちのタワゴトだよ」
ケルゥ侯爵は、飄々とそう言った。
愛想の良い人だが、腹の底の見えない人だ。
と、龍一郎はつぶやいた。
「龍神族にはそういうヤツが多い」
「オレの世界では、人間が平等であることを美徳としていたんです。奴隷を全面的に肯定できないのは、その影響もあるかもしれません」
「このレオーネという世界にはクロエイというバケモノがいるのだ。クロエイたちは血質値の低いものに誘われる」
ケルゥ侯爵は、うっすらと生やしたアゴヒゲをナでながら言った。
「ええ」
「その血質値の低い者を守って、何が得られる? 何かメリットがあるか?」
「感謝されます」
バカみたいなこたえだが、龍一郎が率直に思っていることだ。グランドリオンの者たちは実際、龍一郎に感謝してくれた。恨まれるよりかは何倍も良い。
「感謝されて気持ち良くなる。それはわかる。しかし、それは浅慮というものだよ」
ケルゥ侯爵は続ける。
「血質値の低いものをエネルギーにして、ユックリと殺してゆく。するとやがてこの世界には血質値の高い者だけが残される。血質値の高い者と高い者が子供を生めば、さらに高い者が生まれる」
そして最終的には――とケルゥ侯爵はさらに続けた。
「血質値の低い者はいなくなる。みんな血質値が高ければ、クロエイを誘うことはない。明かりさえつけていれば、安心して夜を過ごせる」
そうだろう、とケルゥ侯爵が龍一郎の顔をのぞきこんできた。
「それは――」
シュバルツ村の出来事が、龍一郎の脳裏をかすめた。
ベルがいなければ、巨大種があの村に来ることもなかったのかもしれない。
「間違えているか?」
「それこそ理想論です。大勢の人間が死ぬことになる」
さすがにケルゥ侯爵の意見は、過激すぎる。
血質値の低い者はみんな殺してしまえと言ってるのと同じだ。
「残酷な策だと思うかね? しかし、血質値の高い者だけの世界をつくりさえすれば、クロエイに襲われる可能性はグッと少なくなる。まさしくユートピアだ!」
ケルゥ侯爵は声高らかにそう叫んだ。
この人は、マチス侯爵とは違う。
そう感じた。
ちゃんとした根拠があって、血質値の低いものを虐げているのだ。
「ケルゥ侯爵の言ってることはわかります。ですが、オレはその意見を認めるわけにはいきません」
その意見は、ベルの存在を否定する。
龍一郎はどうしようもなく、隣に座っている小さな生き物に惚れているのだ。ケルゥ侯爵の意見を受け入れるということは、ベルを助けたことも間違えていたということになる。
ははははッ――とケルゥ侯爵は豪快に笑った。
「私は〝龍の血派〟の意見をまっこうから否定するつもりはないよ」
「そう――なんですか?」
「〝純血派〟だとか、〝龍の血派〟だとかは、すべてクロエイがいるからこそ、出てくる思想だ。大地に縛られている者たちのタワゴトだよ」
ケルゥ侯爵は、飄々とそう言った。
愛想の良い人だが、腹の底の見えない人だ。
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