《完結》虐待されてる奴隷少女を救った、異世界最強の龍騎士
第64話「セリヌイアへ」
翌朝。
龍一郎とベル。それからエムールの3人は、シュバルツの村を後にした。
村を守ったことに多大な感謝を寄せられた。心地よく村を後にしたのだが、ベルの顔色はさえなかった。
シュバルツ村から、セリヌイアへの道中。村へ向かったときと同じくエムールが《血動車》を走らせてくれることになった。
その車内で、ベルは真っ青な顔をしていた。
「どうした? 車酔いでもしたか?」
と、心配になって龍一郎はベルに尋ねた。
「いいえ」
と、ベルがかぶりを振った。
「じゃあ、どうしてそんな顔をしてるんだ? 何か厭なことでもあったか?」
しばらくベルは目を閉ざしていた。
そして不意にマナジリを決した。
「あの巨大種のクロエイが、シュバルツの村に来たのは、私のせいではないか――と思うのです」
「なんで?」
「私の血質値が低いから」
クロエイは質の低い血に引き寄せられるという習性がある。そのことをベルは言っているのだろう。
「考え過ぎだろ」
と、龍一郎はその意見を一蹴した。
「ですが、ロッツェオさまは言っておりました。今まで真っ直ぐ村に向かって来たことはなかった――って。ですが、昨晩は巨大種が明かりを無視してまで襲ってきた。それはやはり質の低い血を持つ者がいたからではありませんか?」
奴隷として扱われる者の血質値は、10以下だと聞いている。ベルはその中でも特別、血質値が低い。
たしか、2だか3だったはずだ。
ベルの意見は筋が通っていた。けれど、「そうだ、お前のせいだ」なんて言えるはずがない。
「でも、追い返すことができた。誰もクロエイにはならなかったんだから、それで良いじゃないか」
「……はい」
と、ベルはうつむいた。
まだ何か言いたげだったが、その言葉を引き出すことはできなかった。ヤケド痕のある横顔と、白く膨れ上がった古傷のついたウナジが見えた。そんなベルが悄然としていると、ただの女がしょげているよりも、いっそう哀れを誘う。
ベルは賢女だ。
ベルの考は正しいのかもしれない。
もしも2人きりだったら、「オレが守るから」ぐらいのセリフは言えたかもしれない。でも、エムールがいた。
沈黙がおりてきた。
エムールが気をきかせたのか、会話をつないだ。
「それにしても、龍のウロコがあるなんて。すごかったですね」
「結局、龍を見ることはできませんでしたけどね」
「リュウイチロウさまは、龍を見たかったのですか?」
「そりゃ、見たいでしょう。エムールさんは見たくないんですか?」
エムールは苦笑した。
「見るだけなら良いですけど、襲われたりしたらひとたまりもありませんからね。レオーネの神話に登場する龍は、絶滅するまで争うほど獰猛だったそうですから」
「たしかに、襲われるのはカンベンですね」
やがて、セリヌイアの都市の城壁が見えてきた。
龍一郎とベル。それからエムールの3人は、シュバルツの村を後にした。
村を守ったことに多大な感謝を寄せられた。心地よく村を後にしたのだが、ベルの顔色はさえなかった。
シュバルツ村から、セリヌイアへの道中。村へ向かったときと同じくエムールが《血動車》を走らせてくれることになった。
その車内で、ベルは真っ青な顔をしていた。
「どうした? 車酔いでもしたか?」
と、心配になって龍一郎はベルに尋ねた。
「いいえ」
と、ベルがかぶりを振った。
「じゃあ、どうしてそんな顔をしてるんだ? 何か厭なことでもあったか?」
しばらくベルは目を閉ざしていた。
そして不意にマナジリを決した。
「あの巨大種のクロエイが、シュバルツの村に来たのは、私のせいではないか――と思うのです」
「なんで?」
「私の血質値が低いから」
クロエイは質の低い血に引き寄せられるという習性がある。そのことをベルは言っているのだろう。
「考え過ぎだろ」
と、龍一郎はその意見を一蹴した。
「ですが、ロッツェオさまは言っておりました。今まで真っ直ぐ村に向かって来たことはなかった――って。ですが、昨晩は巨大種が明かりを無視してまで襲ってきた。それはやはり質の低い血を持つ者がいたからではありませんか?」
奴隷として扱われる者の血質値は、10以下だと聞いている。ベルはその中でも特別、血質値が低い。
たしか、2だか3だったはずだ。
ベルの意見は筋が通っていた。けれど、「そうだ、お前のせいだ」なんて言えるはずがない。
「でも、追い返すことができた。誰もクロエイにはならなかったんだから、それで良いじゃないか」
「……はい」
と、ベルはうつむいた。
まだ何か言いたげだったが、その言葉を引き出すことはできなかった。ヤケド痕のある横顔と、白く膨れ上がった古傷のついたウナジが見えた。そんなベルが悄然としていると、ただの女がしょげているよりも、いっそう哀れを誘う。
ベルは賢女だ。
ベルの考は正しいのかもしれない。
もしも2人きりだったら、「オレが守るから」ぐらいのセリフは言えたかもしれない。でも、エムールがいた。
沈黙がおりてきた。
エムールが気をきかせたのか、会話をつないだ。
「それにしても、龍のウロコがあるなんて。すごかったですね」
「結局、龍を見ることはできませんでしたけどね」
「リュウイチロウさまは、龍を見たかったのですか?」
「そりゃ、見たいでしょう。エムールさんは見たくないんですか?」
エムールは苦笑した。
「見るだけなら良いですけど、襲われたりしたらひとたまりもありませんからね。レオーネの神話に登場する龍は、絶滅するまで争うほど獰猛だったそうですから」
「たしかに、襲われるのはカンベンですね」
やがて、セリヌイアの都市の城壁が見えてきた。
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