《完結》虐待されてる奴隷少女を救った、異世界最強の龍騎士
第40話「領主館2階へ」
さすがは領主の館と言うべきか。水道が通っていた。
地下から水をくみ上げる形式らしく、チューブに血を通すとかわりに水を出してくれるのだった。
以前都市で見た、給水泉と同じ仕組みだろう。
「明かりがついているとはいっても、油断はするな。クロエイがいないとも限らないからな」
「はい」
厨房の明かりを維持するために、血を供給させられていた奴隷がいた。手足に枷をつけられていて、逃げられないようになっている。
はじめてベルと会ったときのことを思い出した。助けてやりたいのはヤマヤマだが、今ここでチューブを抜いたら、厨房も暗闇になってしまう。
「悪いが、このまま事情を聞かせてもらうぞ」
と、フィルリア姫が女奴隷から事情を聞きだしていた。
女奴隷のほうも今、明かりを絶やすのが愚策であることはわかっているようだ。チューブを抜いてくれとは言わなかった。女奴隷の話によると、クロエイはこの屋敷から出たそうだ。
「最初にクロエイになった者は、誰だ?」
「おそらく、侯爵さまの御子息かと」
女奴隷がそう言ったので、龍一郎は雷に打たれたような衝撃を受けた。
クラウスのことだ。短い付き合いとはいっても、悪い人物ではなさそうだった。クロエイになったのかと思うと、ショックを覚えた。
「マチス侯爵は?」
「侯爵さまもすでにクロエイに」
ちッ――とフィルリア姫は舌打ちした。
「では、この屋敷の明かりを維持しているのは誰だ?」
「侯爵さまの御客人で、ソトロフ男爵さまの御子息さまです。たしか――スクラトア・クェルエイさまとか」
その名前は薄っすらと、龍一郎の脳裏に残っていた。ケルネ村でベルを連れ出したときに、一度だけあいまみえている。金髪のイケメンだ。
「そうか。あいつか――」
と、龍一郎はつぶやいた。
あの男がここにいるということは、ベルもここにいるのではないか。ベルのことを誘拐したのは、その男だという確信があった。
「知り合いか?」
と、フィルリア姫が尋ねてきた。
「ええ。ベルのもとの主人の息子です」
女奴隷の話では、スクラトアは上の階で立てこもっているとのことだ。奴隷の入った布袋を持っていたとも言った。
きっと、そこにベルが入れられているのだと予感した。ここにベルがいるなら、来た甲斐があった。
「こうして屋敷中の明かりをつけて、朝を待というという魂胆でしょうか?」
「であろうな。しかし、侯爵もその息子もすでにクロエイになっているというのは厄介だな」
フィルリア姫はもともと、侯爵を助けるために来たのだ。クロエイになっているということは、これ以上この問題に介入する理由がないのかもしれない。
「オレは行きます」
ここまでは龍一郎は、フィルリア姫の援護で来ていた。しかしここにて、逆に龍一郎にこそ戦う理由が出来た。
ベルを、返してもらわなくてはならない。
フィルリア姫の頬がゆるんだ。
「その問題に関しては私も、君の肩を持つつもりだ。それに、セッカクここまで来たのだ。最後まで手伝わせてくれ」
「ありがとうございます」
スクラトアとベルのことに関しては、龍一郎の個人的な問題でもある。フィルリア姫を巻き込むことに、申し訳なさを覚えた。とはいえ、頼もしいのは事実だ。
スクラトアは2階の執務室にいるとのことだった。具体的な場所を聞いて、そこに向かうことにした。
地下から水をくみ上げる形式らしく、チューブに血を通すとかわりに水を出してくれるのだった。
以前都市で見た、給水泉と同じ仕組みだろう。
「明かりがついているとはいっても、油断はするな。クロエイがいないとも限らないからな」
「はい」
厨房の明かりを維持するために、血を供給させられていた奴隷がいた。手足に枷をつけられていて、逃げられないようになっている。
はじめてベルと会ったときのことを思い出した。助けてやりたいのはヤマヤマだが、今ここでチューブを抜いたら、厨房も暗闇になってしまう。
「悪いが、このまま事情を聞かせてもらうぞ」
と、フィルリア姫が女奴隷から事情を聞きだしていた。
女奴隷のほうも今、明かりを絶やすのが愚策であることはわかっているようだ。チューブを抜いてくれとは言わなかった。女奴隷の話によると、クロエイはこの屋敷から出たそうだ。
「最初にクロエイになった者は、誰だ?」
「おそらく、侯爵さまの御子息かと」
女奴隷がそう言ったので、龍一郎は雷に打たれたような衝撃を受けた。
クラウスのことだ。短い付き合いとはいっても、悪い人物ではなさそうだった。クロエイになったのかと思うと、ショックを覚えた。
「マチス侯爵は?」
「侯爵さまもすでにクロエイに」
ちッ――とフィルリア姫は舌打ちした。
「では、この屋敷の明かりを維持しているのは誰だ?」
「侯爵さまの御客人で、ソトロフ男爵さまの御子息さまです。たしか――スクラトア・クェルエイさまとか」
その名前は薄っすらと、龍一郎の脳裏に残っていた。ケルネ村でベルを連れ出したときに、一度だけあいまみえている。金髪のイケメンだ。
「そうか。あいつか――」
と、龍一郎はつぶやいた。
あの男がここにいるということは、ベルもここにいるのではないか。ベルのことを誘拐したのは、その男だという確信があった。
「知り合いか?」
と、フィルリア姫が尋ねてきた。
「ええ。ベルのもとの主人の息子です」
女奴隷の話では、スクラトアは上の階で立てこもっているとのことだ。奴隷の入った布袋を持っていたとも言った。
きっと、そこにベルが入れられているのだと予感した。ここにベルがいるなら、来た甲斐があった。
「こうして屋敷中の明かりをつけて、朝を待というという魂胆でしょうか?」
「であろうな。しかし、侯爵もその息子もすでにクロエイになっているというのは厄介だな」
フィルリア姫はもともと、侯爵を助けるために来たのだ。クロエイになっているということは、これ以上この問題に介入する理由がないのかもしれない。
「オレは行きます」
ここまでは龍一郎は、フィルリア姫の援護で来ていた。しかしここにて、逆に龍一郎にこそ戦う理由が出来た。
ベルを、返してもらわなくてはならない。
フィルリア姫の頬がゆるんだ。
「その問題に関しては私も、君の肩を持つつもりだ。それに、セッカクここまで来たのだ。最後まで手伝わせてくれ」
「ありがとうございます」
スクラトアとベルのことに関しては、龍一郎の個人的な問題でもある。フィルリア姫を巻き込むことに、申し訳なさを覚えた。とはいえ、頼もしいのは事実だ。
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