《完結》虐待されてる奴隷少女を救った、異世界最強の龍騎士

執筆用bot E-021番 

第39話「領主館の中へ」

 さきほどクロエイが、「キェェェ」と怪鳥のように鳴いたことで、背後から濁流のようにクロエイが押し寄せてきていた。



 振り返りざまに何度か発砲した。血の弾丸が当たった数匹を倒すことは出来たが、きりがない。ムラクモのごとく押し寄せてくるのだ。



 裏路地を駆け抜ける。
 ストリートに跳びだした。



 領主館の裏門が見えていた。領主館は鉄柵で囲まれている。その柵の一部がトビラになっているのだった。



 幸い錠は簡単に開けられるものだったようだ。
 フィルリア姫がそれを開けて、手招きしていた。



 急いで駆け込む。
 フィルリア姫がトビラを閉めた。



 クロエイの濁流が鉄柵に衝突していた。クロエイはモウロウとけぶった闇の姿をしているが、いちおう実体はあるようだ。



「こっちへ」
 土砂崩れのようになったクロエイを放置して、領主館の中に入った。



 裏庭から館の中に入ることが出来た。



 幸いなことに領主館の中は明かりが灯っていた。潜り込んだのはどうやら厨房になっているようだ。冷蔵庫やコンロのような装置が確認できた。どれもチューブがついていたけれど。



「はぁ……はぁ……」



 こんなに全力で走ったのは、冬場の持久走以来かもしれない。いや、持久走だってここまで本腰を入れて走っていない。さすがにフィルリア姫も呼気を荒げていた。



「リュウイチロウくん。なかなかやるじゃないか。助かった」



「いえ。たいしたことでは」
「血質値はかなりのものと見た。度胸もある」



「はぁ」



 度胸なんてない。
 怖いから全力で逃げてきたのだ。



 ベルを見つけ出さなくてはならないという気持が、龍一郎をここまで運んできたのだ。



 そう言えば、龍一郎の血質値が200を越えているということを、まだフィルリア姫には話していなかった。



 それでも、かなり見込まれたようだ。



「良ければ私の騎士にならないか?」
 と、真剣なまなざしで、フィルリア姫は龍一郎のことを見つめてきた。



 フィルリア姫の瞳は、琥珀色の輝きをやどしていた。その瞳には強い輝きがあった。ベルのような清らかな透明感とは、違った魅力があった。



「騎士?」



「私、専属の騎士ということだ。王女という身分だから、ふつうは肝いりの騎士が1人はいてもオカシクはない。私は今のところそういうのがなくてな」



「考えさせてもらいます」



 今はベルのことで頭がイッパイだ。
 それ以外のことは考えられない。



「考えておいてくれ。まぁ、無事にここを脱出できればの話だがな」



「シャレに聞こえませんよ」



 冗談のつもりで言ったのかもしれないが、フラグに思えて仕方がない。



 悪い――とフィルリア姫は不敵に笑った。



「少し休憩したら屋敷の中を探索しよう。明かりが灯っているということは、マチス侯爵がいるはずだ」

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