《完結》虐待されてる奴隷少女を救った、異世界最強の龍騎士

執筆用bot E-021番 

第34話「クラウス・ヒューリーⅡ」

 カンノン開きのトビラを開けて、部屋の中に足を踏み入れた。執務室として使っているだけの部屋なので、それほど大きくはない。



 真っ赤なソファが置かれている。正面には父の机が置かれている。机の上には、これ見よがしに爵位証明書が置かれている。



 ガラス張りのケースがあり、そこに女奴隷が入れられていた。チューブにつなげられている。この部屋の明かりを保っているのだろう。



 部屋にいたのは、父だけではなかった。



 金髪の、いかにも気位の高そうな青年がソファに座っていた。一見してあまり良い印象を抱かなかった。足元に布袋を置いていたからだ。人が1人は入れる程度の大きさだ。おどらく奴隷が入っているのだろう。それを足に敷いていた。



「こちらはソトロフ男爵の御子息だ。クラウス。挨拶しておきなさい」



「はい」



 クラウスが名乗ると、彼も名乗り返してきた。



 スクラトア・クェルエイというそうだ。血質値が60だとのことだ。クラウスは68だからすこし下だ。



 ソトロフ男爵はケルネ村に派遣されていたそうだ。だが、先日、クロエイに襲われて村が潰滅。スクラトアだけ助かったとのことだ。



「男爵の御子息だ。血質値も低くはない。将来、良い関係を築けるかもしれん」
 と、父は言った。



 別に貴族と慣れ合うつもりはない。だが、客人である以上は、無為にケンカを吹っかけることもない。


 クラウスは、さっさと本来の用件を切り出すことにした。



「父上」
「ん?」


 父はでっぷりと太っていて、脂肪の中に目が隠れてしまっている。贅沢はどうして人を醜くしてしまうのだろうか。



「さきほど、貧民街のほうで、外灯が切断される事件がありました」



「おおっ。私もその話をしようと思っていたところだ」



「父上も?」



 腐ってもさすがは領主だと思って少し見直した。見直したのがバカだった。



「あれは私の手の者にやらせたことだ」
「は?」



「こちらのソトロフ男爵の御子息と、ある芝居を打つことにしてな」



「し、芝居?」
 理解が追い付かない。



「そうだ。今このグランドリオンには、血質値200を越えるという、とんでもない男が来ておる。たしかシラカミ……」
 


 と、父は眉をしかめた。



「シラカミリュウイチロウのことですか?」
 友の名前だ。



 今までクラウスの平等論に同調してくれる貴族など、ほとんどいなかった。だから、クラウスの中では好印象とともに記憶に刻まれていた。



 シラカミリュウイチロウは貴族ではない。だが、貴族になろうと思えば、すぐにでもなれる血質値の持ち主だ。



「そうだ。その人物に首輪をはめたい。我がヒューリー家に迎え入れたいのだ。出来れば明日のフィルリア姫の来訪までにな」



「それはどういう?」



 話の筋がマッタク読めない。
 それが、外灯のチューブを切ることと、どういう関係があるのか。



「シラカミリュウイチロウは、どうやらベルという女奴隷にご執心らしい。まぁ、奴隷に恋慕れんぼするという感覚は私にはわからんが」



 と、父は太い首をかしげた。
 首をかしげると、アゴの肉が何重にもなった。



「ええ。それで?」



 クラウスも一度、ベルとは顔を合わせている。



 たしかにシラカミリュウイチロウは、ベルのことを大切に扱っていた。



「その女奴隷をこちらに用意してある。まぁ、この女奴隷を誘拐する隙をつくるのに、チューブを切って騒ぎを起こさせたというわけだ」



 父がそう言うと、スクラトアは足に敷いていた布袋を開けた。中にはベルが入っていた。かなり酷く殴られたようだ。顔がデコボコになっている。



「い、生きているんですか?」



「ちゃんと死なない程度にしてありますよ。ただ、うちから逃げた奴隷なんで、それ相応の罰は受けてもらいますけどね」



 スクラトアは残酷な笑みを浮かべて、釘を取りだした。釘を手元で遊ばせている。



「父上! 話がまったく見えません。彼が保護している奴隷をなぶり殺しにして、どうして我が家に来てくれるという話になるのですかッ」



 憤怒にかられた。



 しかし、冷静さはまだ失わなかった。とりあえず、話がまだ見えない。最後まで聞こうという理性はあった。

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