《完結》虐待されてる奴隷少女を救った、異世界最強の龍騎士

執筆用bot E-021番 

第32話「誘拐」

「しかし、どうして第三王女さまが、こんなところに?」



 質問を投げたのは、クラウスだ。



「ふむ。君の御父上から招待を受けているのだ。明日の朝、お会いしようと思っている。それまではこの貧民街で過ごすつもりだ。爵位を持つ者すべてが、庶民を見下しているわけではないということだよ」



 フィルリア姫というのは、さすが第三王女というだけあって、かなり人気者らしい。



 貧民街のあちこちから歓声があがっていた。こんな美女なのだ。龍一郎もみんなと一緒に歓声をあげたくなってくる。



「数人だが配下の物も連れてきている。セッカクだ。君たちと同じ宿に泊まらせてもらおうか」



 クラウスは用事があるとのことだった。



 それで、龍一郎がフィルリア姫を案内することになった。フィルリア姫に傘を差しだす人がいた。



「構わん。今は濡れたい気分だ」
 と、追い払っていた。



 王女というからもっとお淑やかなのかと思ったのだが、その振る舞いはまるで騎士のようだ。



「シラカミリュウイチロウとか言ったか。どこかの貴族の者か?」



 龍一郎で良いですと訂正しておいた。



「ただの庶民です」



 爵位をもらった覚えはないし、庶民ということで良いのだろう。



「しかし、なかなかの奮闘ぶりだった。《血影銃》を使うのは、かなり血質値が高い人間の証拠だ。血質値はいくらほどなのだ? 場合によっては、私のほうから爵位授与の口添えをしてやっても良い」



「いや、別にそんなたいしたものじゃないですよ」



 自慢するようなことでもない。



 200とか言って、大騒ぎされるのも困る。爵位もそこまで魅力的には感じない。



「君のような人間が貴族になれば、もっと貴族たちの間に、庶民を守るべきだという意識を持たせることが出来ると思うのだがな。今の貴族どもは――いや、王族もロクな者がいない」



 もちろん、貴族の前で堂々とそんなことは言えないがな――とフィルリア姫は肩をすくめて見せた。



 顔立ちが整っているうえに、かなり好感の持てる相手だった。



 宿屋に戻った。



「案内ご苦労。もし、困ったことがあればいつでもチカラを貸そう。それから爵位の件も覚えておいてくれ」



「ありがとうございます」



 フィルリア姫がカウンターテーブルのほうに行ったので、龍一郎はあわてて3階の自分の部屋に行くことにした。



 妙な胸騒ぎがした。



 3階。


 細い廊下の左右に大部屋が4つある。イチバン奥が龍一郎がとっていた部屋だ。トビラは開いていた。



「ベル?」
 部屋の中。いない。



 それどころかベッドが傾いて、クローゼットが倒れている。



 いったい何が起こったのか。暴漢にでも襲われたのだろうか。部屋が荒れているし、1人でどこかに行くとも思えない。



 連れ去られたのだろうか。しかし、誰が何のために――。



「どうした、リュウイチロウ」
 フィルリア姫が上がってくるところだった。



「連れが、さらわれたみたいです」
 龍一郎は愕然がくぜんとした気持ちで、そう言った。



 なぜ世界は、ベルに不幸の手を伸ばそうとするのだろうか。どこかで乱暴されているんじゃないかと思うと、胸をかきむしりたい気分になった。

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