《完結》虐待されてる奴隷少女を救った、異世界最強の龍騎士
第25話「宿探し」
耳をすます。
マチス侯爵のメイドたちの声は聞こえなくなっていた。
「とりあえず、どこか宿でもとろうか」
幸い血質値の高い血を保持しているため、宿泊費には困らない。
「うん」
立ち上がる。
ストリートに出る。
宿屋と思われる場所をいくつか当たってみた。どこにも宿泊する気にはなれなかった。
どこの宿屋も、血質値が10以下の物は、別の小屋で宿泊させる決まりになっていた。
ベルを宿屋に入れられないのだ。その小屋というのが酷いところで、糞の処理すらしていない家畜小屋みたいな場所なのだ。
「私に気を遣う必要はない」
と、ベルは言うのだが、そんなわけにはいかない。
別に、ベルに気をつかっているわけではない。自分だけ部屋に宿泊して、ベルを小屋にぶち込んでおいて、翌日どんな顔をして会えば良いのか。それを許してしまったら、この世界の貴族と同じになってしまう。
「ちゃんと2人とも宿泊できるような宿はないのか?」
「貧困街のほうなら」
「宿泊できるのか?」
「貧困街のほうはそもそも庶民が多いから、逆に貴族のための部屋は用意されてない」
「なんだ。じゃあ、さっさと貧困街のほうに行こう」
足を進めようとした。
「待って」
と、ベルが龍一郎の服のスソをつまんできた。
「なんだ?」
「都市の外になるから。夜になったら危険」
「危険って言っても、外に住んでる人もいるんだろ? だったら大丈夫だろう」
「でも、都市のなかのほうが安全」
「ベルは、都市の中にいるほうが良いのか?」
あの糞まみれの小屋でも、都市の中にいるほうが良いというなら、ベルの意見を尊重しようと思った。
「私は、外のほうが良い。……けど」
「じゃあ、外に行こう」
「私に、同情なんて、必要ない」
ベルの目は吊りあがっていた。その瞳には怒気がふくまれているように感じた。
「勘違いするな。同情なんかじゃない。これはオレの気持の問題だ」
都市の中のほうが安全とはいえ、ベルを小屋に閉じ込めてそれで安眠できるわけがない。
それなら、外で部屋をとったほうがまだ、気分が落ち着くというものだ。だいたい都市の外がそんなに危険なら、今暮らしている人たちはどうなるのか。
「……ごめんなさい」
と、ベルはうつむいた。
すこし強く言い過ぎたかもしれない。
気まずい。
2人のあいだに、細かい砂粒がまじりこんだようだった。
城門棟から都市の外に出た。グランドリオンに入ってきたときとは、別の城門棟から出た。衛兵に顔を覚えられていたら厭だったからだ。また、平身低頭コメツキバッタになられても困る。
都市の外の景観は、あきらかに内側より劣る。
都市の内側には、鉄筋コンクリートの建造物もあったし、はなやかな飲食店も多く建ち並んでいた。
都市の外は、たいはんが木造家屋だった。行き交う人たちも、どことなく活気がなく、貧相に見える。
貧困街というから、血質値の低い人たちが住んでいるのだろう。
龍一郎の実家も、それほど贅沢な家ではない。どちらかというと、この貧民街のほうに慣れ親しんだ空気を感じた。
マチス侯爵のメイドたちの声は聞こえなくなっていた。
「とりあえず、どこか宿でもとろうか」
幸い血質値の高い血を保持しているため、宿泊費には困らない。
「うん」
立ち上がる。
ストリートに出る。
宿屋と思われる場所をいくつか当たってみた。どこにも宿泊する気にはなれなかった。
どこの宿屋も、血質値が10以下の物は、別の小屋で宿泊させる決まりになっていた。
ベルを宿屋に入れられないのだ。その小屋というのが酷いところで、糞の処理すらしていない家畜小屋みたいな場所なのだ。
「私に気を遣う必要はない」
と、ベルは言うのだが、そんなわけにはいかない。
別に、ベルに気をつかっているわけではない。自分だけ部屋に宿泊して、ベルを小屋にぶち込んでおいて、翌日どんな顔をして会えば良いのか。それを許してしまったら、この世界の貴族と同じになってしまう。
「ちゃんと2人とも宿泊できるような宿はないのか?」
「貧困街のほうなら」
「宿泊できるのか?」
「貧困街のほうはそもそも庶民が多いから、逆に貴族のための部屋は用意されてない」
「なんだ。じゃあ、さっさと貧困街のほうに行こう」
足を進めようとした。
「待って」
と、ベルが龍一郎の服のスソをつまんできた。
「なんだ?」
「都市の外になるから。夜になったら危険」
「危険って言っても、外に住んでる人もいるんだろ? だったら大丈夫だろう」
「でも、都市のなかのほうが安全」
「ベルは、都市の中にいるほうが良いのか?」
あの糞まみれの小屋でも、都市の中にいるほうが良いというなら、ベルの意見を尊重しようと思った。
「私は、外のほうが良い。……けど」
「じゃあ、外に行こう」
「私に、同情なんて、必要ない」
ベルの目は吊りあがっていた。その瞳には怒気がふくまれているように感じた。
「勘違いするな。同情なんかじゃない。これはオレの気持の問題だ」
都市の中のほうが安全とはいえ、ベルを小屋に閉じ込めてそれで安眠できるわけがない。
それなら、外で部屋をとったほうがまだ、気分が落ち着くというものだ。だいたい都市の外がそんなに危険なら、今暮らしている人たちはどうなるのか。
「……ごめんなさい」
と、ベルはうつむいた。
すこし強く言い過ぎたかもしれない。
気まずい。
2人のあいだに、細かい砂粒がまじりこんだようだった。
城門棟から都市の外に出た。グランドリオンに入ってきたときとは、別の城門棟から出た。衛兵に顔を覚えられていたら厭だったからだ。また、平身低頭コメツキバッタになられても困る。
都市の外の景観は、あきらかに内側より劣る。
都市の内側には、鉄筋コンクリートの建造物もあったし、はなやかな飲食店も多く建ち並んでいた。
都市の外は、たいはんが木造家屋だった。行き交う人たちも、どことなく活気がなく、貧相に見える。
貧困街というから、血質値の低い人たちが住んでいるのだろう。
龍一郎の実家も、それほど贅沢な家ではない。どちらかというと、この貧民街のほうに慣れ親しんだ空気を感じた。
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