《完結》虐待されてる奴隷少女を救った、異世界最強の龍騎士

執筆用bot E-021番 

第23話「マチス・ヒューリー侯爵Ⅲ」

 血質値200を越える者がいてくれれば、我がヒューリー家は安泰だ。このゼルン王国でもっとも権威の強い有力貴族となる。



 王を傀儡にすることだって出来る。そして、フィルリア姫を振り向かせることも出来る。



 いやいや。



 振り向かせるどころではない。最強の有力貴族にもなると、第三王女を貰い受ける権利ぐらいいただけるはずだ。



 ヨダレが出そうになる。



 あの高貴なお姫さまを権力をもってして、我がものにすることが出来るなら、どんなに良いことか。



 本来フィルリア姫に献上する予定だった、《血影銃―タイプ0》を、こっちに献上するのも悪くない。咄嗟にマチスの脳裏で、そういう計算が働いた。



「おい、あれを持って来い」



 メイドにそう命じて、《血影銃―タイプ0》を用意させた。テーブルの上にガラスケースに入った《血影銃》が置かれた。



 いつ見ても美しい。従来の《血影銃》とはまず大きさが違う。



「これは?」



 シラカミリュウイチロウも興味を寄せられているようだ。よしよし、食いついているなという手ごたえを感じた。



「これは私のもとで開発させた。最新式の《血影銃》でしてな。《血影銃―タイプ0》と言います」



「《血影銃》ですか」



 シラカミリュウイチロウは、ガラスケースを覗きこんでいた。



「一度の発射で、複数の血を射出することが出来るようになっております。血の消費量が激しいのがネックですが、なかなかの破壊力ですよ」



「ショットガンですか」
「ショットガン?」



「ああ、いえ――」
 と、シラカミリュウイチロウは口ごもった。



「どうですか。良ければ差し上げますよ。ただ、我がヒューリー家に仕えていただきたいのですが」



「いや。こんなのいただけませんよ」
 と、拒否された。



 これだけではダメだ。



 もう一押し何かあれば、懐柔できそうな気がする。血質値200。ノドから手が出るほど欲しい。



「じ、実はうちには息子が1人と、娘が1人おりましてな。娘のほうはまだ12歳なんですが、貴族の女ですから、いずれはなかなか気品のある女になりましょう。婚約相手としていかがですかな?」



「え、こ、婚約?」



 シラカミリュウイチロウはあからさまに、あわてた様子だった。



 ここが押しどころだと、マチスは気づいた。



 シラカミリュウイチロウという男。たしかに壮絶な血液の持ち主だ。ただ、やはり男だ。女には弱いようだ。



「婚約ですよ。そちらの奴隷ももう使い古しのようですから、こっちで処分しておきましょう。新しく良い奴隷を用意しますよ」



「それはお断りします」
 と、シラカミリュウイチロウの声が、急にこわばった。



「なになに。遠慮する必要はありません。うちの奴隷にはなかなか、良いのがそろっておりますから」



 マチスが、指をパチンと鳴らした。



 メイドたちがやって来た。シラカミリュウイチロウから女奴隷を引き離そうとした。だが、次の瞬間にはシラカミリュウイチロウは、女奴隷を連れて応接室を跳びだしてしまった。



「あ、こら。どちらへ行かれるかッ」
 しくじった。



 もしかして、お手付きの奴隷だったのかもしれない。奴隷を慰み者にする貴族もいると聞く。



 マチスはそういう類の人間ではない。奴隷と交わったら、自分の血の質が落ちるような気がするからだ。



「あの少年を追いかけろ。逃がすんじゃない」
 マチスは声を張り上げた。



 テーブルの上には、自慢の《血影銃―タイプ0》が残されていた。

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