《完結》虐待されてる奴隷少女を救った、異世界最強の龍騎士

執筆用bot E-021番 

第18話「ベルとのお食事・前編」

 ぐぅ。
 龍一郎のお腹が鳴った。



 夜明け前に転移させられてから、クロエイを倒したり、歩き回ったりしていた。そろそろ朝食の時間だ。



「通貨は使われてないって言ってたな」
「すべて、血で払える」
「だったら、飯でも食おうぜ」



 ベルはしばらく硬直していた。表情をひとつも動かさない。そうかと思うと、ベルのお腹からも「ぐぅ」。



 ベルは青白い頬を、ほんのりバラ色に染めた。死んだような顔色に、うら若き乙女の色艶いろつやが灯ると、見ているほうも安心できた。



「そっちもお腹すいてるんじゃないか」
「ごめん……なさい」



 ますます顔を赤くしてしまった。



「別に謝らなくても良い。どこかご飯でも食べれるお店でも探そう」



 ストリートに木造の飲食店があった。ナイフとフォークの看板が出ていたから、飲食店だとすぐにわかった。



 木造の3階建ての建物だった。2階部分は大きなテラスがついていて、外で食べている人も多く見受けられた。




 テラスの上には、巨木の幹が通っていた。そこから大量の外灯がぶらさがっている。



 箸でつまみあげられたウドンのごとく、大量のチューブも木の枝からぶら下がっていた。龍の血管と言われる、血を吸うためのチューブだ。



「すげぇ大きな樹だな。この都市全体にはびこってるんじゃないか?」



「あの樹は、龍の尻尾と言われている。大量の龍の血管が通っていて、血を流すと明かりをともしてくれる」



「ベルはこの都市に来たことがあるのか?」



「ソトロフ男爵に飼われる前は、他の貴族に飼われていたから、そのときはグランドリオンにいた」



「そうか」



 深いセンサクはやめておこう。ベルの青い瞳から生気が失われていた。良い過去ではないのだろう。



 ただ、ひとつ知れたのは、ソトロフ男爵という名前だ。それがケルネ村でベルを飼っていた貴族の名前なのだろう。



「2階のテラスで食べようぜ」
「うん」



 2階のテラス席をとった。木造の丸テーブルと、イスが置かれていた。すぐ下に通るストリートを見下ろすことが出来た。周囲の都市を眺望とまではいかなくとも、見下ろすことは出来る。



「これが献立表か」



 ちゃんとした紙に献立が書かれていた。紙が流通しているということは、木材加工の技術はあるのだろう。



 血を使っているとはいえ、電気は通っているし、車も通っている。文明的にそれほど遅れてはいないようだ。



 食べ物に関しても地球と大差ないようだ。食文化に変わりないということは、生息している動植物も似ているのだろう。



 少しずつ、レオーネという世界の形が見えてきた気がした。



「オレはバターたっぷりのフレンチトーストにしようかな。ベルはどうする?」



「へ?」
「だから、朝ごはん」



 献立表を渡すと、不思議そうな顔をしていた。



「私も?」
「え? お腹減ってるんじゃなかったのか?」



「減ってる。けど、私も食べて、良いの?」
「当たり前だろう。食べないつもりだったのか?」



「食べたこと、なかったから」



 話がどことなく食い違っていたようだが、ようやく合点がいった。つまり、ベルはこういった食事をとったことがない、と言いたいのだろう。



「普段どんなもの食べてるんだ?」



「奴隷はだいたい専用のフードがあるから。鉄分を多く摂取するためにタニシとか、貝とか小松菜とかをミキサーにかけて固形状にしたカタマリ」



「……そうか」
 聞かなきゃ良かった。



 鉄分をつくるのは血が必要だからなのだろうが、もっと健康的な食事をとったほうが良いと思う。

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