《完結》虐待されてる奴隷少女を救った、異世界最強の龍騎士
第15話「龍神族」
都市――グランドリオンが近づいてきた。
コンクリートのようなもので固められた城壁が、都市のグルリを囲んでいた。
しかもその城壁には、無数の外灯が伸びている。考えなくともわかる。クロエイ対策だろう。
城壁は背が高くて、都市の中の様子がよく見えなかった。
コンクリートは存在してるのか――と思った。
ただ、何もない平原にグランドリオンがあるわけではなかった。城壁の外にも木造の家屋がいくつも建てられていた。
「到着しましたよ」
御者が言った。
《血動車》が止まった。
「ありがとうございます」
「グランドリオンにいることもありますので、またのご利用をお待ちしています」
御者は戻って行った。
都市の近くにも、木造の車庫があった。そこに、《血動車》を停めていた。貸馬屋のように全国各地に車庫があって、車庫から車庫を走り回っているのだろう。
《血動車》が停まったときに、ベルも起きていた。何かに怯えるような、弾かれたような起き上がり方だった。
「歩けるか? 背負ったほうが良いか?」
「大丈夫」
「そうか。ムリはするなよ」
都市の出入り口は、周囲の城壁よりもさらに背の高い城門棟になっている。長蛇の列が出来ていた。城門棟にいる兵士が、1人ひとりの積荷を改めているようだった。
「エルフとか、獣人族みたいなのはいないのか」
並んでいる人を見ても、人間以外は見受けられない。
「エルフ? 獣人族?」
と、ベルが首をかしげる。
知らないなら良いんだ――と軽く流しておいた。
異世界小説を読んでいると人間ではない種族が登場することも、珍しくない。だが、レオーネにはいないのだろう。
都市に入るために龍一郎も、列の最後尾に並んだ。
「城壁の外も、都市になってるんだな」
周囲の木造の建造物を見渡した。どこの建造物も都市とは似つかわしくないボロ屋だった。
「外は都市とは言えない」
と、ベルは首を左右に振った。
「都市じゃないのか?」
「都市はあくまで城壁の内側。外にいる連中は、都市に入れないような庶民の町」
「でも、壁の外ってことはクロエイに襲われるんじゃないか?」
いちおう外灯はたくさん設置されているが、城壁の内側のほうが安全に決まっている。
「襲われる。でも、仕方がない」
それは龍一郎の知識にあるファンタジーとだいたい同じだ。都市というのは、城壁で囲っているだけあって、範囲がかぎられている。そこに住める人も限られているというわけだ。
何かしらの特技を持っている者とか、レオーネだと血の品質の良い人間が優先されるのかもしれない。
要するに外は、貧民街のようなものだろう。
「それにしても、積荷をあらためてるだけじゃないみたいだな」
「血も調べられる。暗黒病にかかってないか、調べる必要がある」
「暗黒病?」
聞くだけで、怖気たちのぼる単語だ。
ブルッと龍一郎はカラダを震わせた。
クロエイに影を食われると、食われた人間もクロエイになる。それを暗黒病に感染するというそうだ。
「クロエイになった人間は、殺すしかない」
ベルはしわがれた声で、たんたんとそう述べる。舌をケガしているからか、ノドを傷つけているからかはわからないが、発音しにくい言葉もあるようだ。ときおり、ノドをおさえて言葉を発している。
「一度感染したら、治らないのか?」
「フィルリア姫の血の生血を飲まないかぎりは」
「フィルリア姫の生血?」
「ゼルン王国。第三王女・フィルリア・フィルデルン。彼女は龍神族と言われていて、その血を飲むことで、暗黒病を治せるとされている」
「龍神族?」
また新しい単語だ。
どういう理屈かはわからないが、この世界の言語を理解できていて良かった。言語も理解できないうえに、専門用語なんか出されたらもはやついて行けなくなる。
「龍の血を色濃く受け継いだ者――とされている。龍神族の血液にはなんらかの特別なチカラがある」
「じゃあ、そのフィルリア姫とやらの血を、配りまくれば暗黒病に感染した人も治るんじゃないのか?」
「生血でなければダメ。直接飲まないと」
あらかじめ配って保存するようなことは、出来ないというわけか。なら、世界中に配るというのはムリな話だ。
コンクリートのようなもので固められた城壁が、都市のグルリを囲んでいた。
しかもその城壁には、無数の外灯が伸びている。考えなくともわかる。クロエイ対策だろう。
城壁は背が高くて、都市の中の様子がよく見えなかった。
コンクリートは存在してるのか――と思った。
ただ、何もない平原にグランドリオンがあるわけではなかった。城壁の外にも木造の家屋がいくつも建てられていた。
「到着しましたよ」
御者が言った。
《血動車》が止まった。
「ありがとうございます」
「グランドリオンにいることもありますので、またのご利用をお待ちしています」
御者は戻って行った。
都市の近くにも、木造の車庫があった。そこに、《血動車》を停めていた。貸馬屋のように全国各地に車庫があって、車庫から車庫を走り回っているのだろう。
《血動車》が停まったときに、ベルも起きていた。何かに怯えるような、弾かれたような起き上がり方だった。
「歩けるか? 背負ったほうが良いか?」
「大丈夫」
「そうか。ムリはするなよ」
都市の出入り口は、周囲の城壁よりもさらに背の高い城門棟になっている。長蛇の列が出来ていた。城門棟にいる兵士が、1人ひとりの積荷を改めているようだった。
「エルフとか、獣人族みたいなのはいないのか」
並んでいる人を見ても、人間以外は見受けられない。
「エルフ? 獣人族?」
と、ベルが首をかしげる。
知らないなら良いんだ――と軽く流しておいた。
異世界小説を読んでいると人間ではない種族が登場することも、珍しくない。だが、レオーネにはいないのだろう。
都市に入るために龍一郎も、列の最後尾に並んだ。
「城壁の外も、都市になってるんだな」
周囲の木造の建造物を見渡した。どこの建造物も都市とは似つかわしくないボロ屋だった。
「外は都市とは言えない」
と、ベルは首を左右に振った。
「都市じゃないのか?」
「都市はあくまで城壁の内側。外にいる連中は、都市に入れないような庶民の町」
「でも、壁の外ってことはクロエイに襲われるんじゃないか?」
いちおう外灯はたくさん設置されているが、城壁の内側のほうが安全に決まっている。
「襲われる。でも、仕方がない」
それは龍一郎の知識にあるファンタジーとだいたい同じだ。都市というのは、城壁で囲っているだけあって、範囲がかぎられている。そこに住める人も限られているというわけだ。
何かしらの特技を持っている者とか、レオーネだと血の品質の良い人間が優先されるのかもしれない。
要するに外は、貧民街のようなものだろう。
「それにしても、積荷をあらためてるだけじゃないみたいだな」
「血も調べられる。暗黒病にかかってないか、調べる必要がある」
「暗黒病?」
聞くだけで、怖気たちのぼる単語だ。
ブルッと龍一郎はカラダを震わせた。
クロエイに影を食われると、食われた人間もクロエイになる。それを暗黒病に感染するというそうだ。
「クロエイになった人間は、殺すしかない」
ベルはしわがれた声で、たんたんとそう述べる。舌をケガしているからか、ノドを傷つけているからかはわからないが、発音しにくい言葉もあるようだ。ときおり、ノドをおさえて言葉を発している。
「一度感染したら、治らないのか?」
「フィルリア姫の血の生血を飲まないかぎりは」
「フィルリア姫の生血?」
「ゼルン王国。第三王女・フィルリア・フィルデルン。彼女は龍神族と言われていて、その血を飲むことで、暗黒病を治せるとされている」
「龍神族?」
また新しい単語だ。
どういう理屈かはわからないが、この世界の言語を理解できていて良かった。言語も理解できないうえに、専門用語なんか出されたらもはやついて行けなくなる。
「龍の血を色濃く受け継いだ者――とされている。龍神族の血液にはなんらかの特別なチカラがある」
「じゃあ、そのフィルリア姫とやらの血を、配りまくれば暗黒病に感染した人も治るんじゃないのか?」
「生血でなければダメ。直接飲まないと」
あらかじめ配って保存するようなことは、出来ないというわけか。なら、世界中に配るというのはムリな話だ。
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