その少女は求む~私はしたいことしかしません~

sekiyasya

解放の王女様


あれから6日ほどたった頃私はいまだに彼女エルミアのことを主に考えていた(ちなみにディルレントの領地での用事は終わったようで今は帰っている途中だ)

(私がちゃんとしていればこんなことにはならなかったのに…)

馬車の中ではあり得ない高さにある鉄格子の向こうを見ながらシイナはため息を1つ吐く
そうしていると時間になったのだろうドアがコンコンと鳴らされる

「ほれ持ってきたぞ今度はヤマエビの赤肉じゃ。パンもあるから一緒に食べるといいぞ」

まるで旧くからの友人のように気楽に話しかけながら返事を待たずにづかづかと部屋に入る

「なんじゃ、外に出たいのか?」

手に持っていた食事の乗ったトレイを床に置きながら聞く
それを聞き外に向いていた顔をエルミアに向け「なんともないよ」とぶっきらぼうに言う
そんな関わりたくないと言っているようなシイナに問答無用でエルミアは迫る

「そうは言うとるがお主が自分のことを隠しとるのは分かるのじゃぞ?話さんか?」

シイナの顎の部分に触れ顔を近づけさせて言うが今までと同じように無言になり話そうとしない諦めてエルミアはスプーンと赤いお肉が入ったお椀を手渡す
実はこれまでの6日間ほどほぼ毎日、毎食に同じようなやり取りをしておりシイナの食事中、更には食事が終わってもずっと話をしようとする
そんなエルミアに今日もまた「ねぇ」と聞く

「そんなに私に話しかけてどうするの」

「…いいじゃろ、わしが話したいんじゃから」

人に言っておきながら自分も話さないこれもいつものことだ

(…イリス。わしはまだ助けられんかの……)


◇◆◇

「おら、出ろ次の仕事だ」
「けけけ、あの解放の選択者・・・・・・の子孫が今はこのざまとはな」

壁も床も石でできている薄暗い部屋
いや牢屋で鉄格子を挟み2人と1人が剣呑とした空気で向かい合う
どこかの組織の服装なのだろう黒い服を纏った男2人は鉄格子の向こう側にいる少女イリスに話しかけ嘲笑う

「…お母様たちとは関係ない私のことは私がする。私を嗤うのはいい、でも他の人たちを嗤わないで」

悲しそうで泣きそうで今にも泣き崩れるのではないかと思える声色だがその声にはとても強い意志があるのだと思える圧がある

「それはこいつに言ってくれ俺はどうでもいい、仕事さえできればな」
「けっ」

ずっと喧嘩腰の男もおとなしくなり牢屋を開けイリスを出す

「どうだ解放された気分は」

「手足に枷がついているのだからまだよ」

「チッ」

嫌味として放った言葉だったが軽く受け流され思わず舌打ちをする

「さあ行きますよ王女様人類を解放するために」

牢屋を出ると城のように美しい部屋へと出る

「目指すはアージンの遺跡です」

イリスはその言葉を聞き体を震わせた

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