フェンリル

ノベルバユーザー239614

レイ

ベルナルド「どうして基地にいたんだ?」

???「……」

ベルナルドは部屋に引きこもって一人の高校生くらいの女性に質問していた。
どうやら基地に潜り込んでいたようだ。

しかし盗撮用カメラのようなものはひとつも持ち合わせておらず、何故厳重な警備の中で基地に侵入できたのかも謎だった。

ベルナルド「まぁ、侵入を許す警備も警備だが、勝手に入ってきたらダメじゃないか。」

怒鳴ることもせず、ベルナルドは優しい口調で説得を続けた。

ベルナルド「ここには何もないから早く帰りなさい。」

???「………なきゃ。」

その女は何か喋った。
ハッキリとは聞こえなかったが、なにか喋った。

ベルナルド「今、なんて?」

???「目的を果たさなきゃ、帰れないの。」

ベルナルド「目的って何?」

???「火虎忠影、桜木剣、大和宏、倉須弥生、黒崎白夜、御手洗志乃亜、雪風志礼を早急に暗殺し、基地の機能を停止させること。」

ベルナルド「暗殺!?(こいつは刺客か、なるほど、見つからずに潜入できるわけだ。)」

ベルナルドはゆっくりと腰のホルスターに手を伸ばし、FiveseveNピストルのグリップに触れた。

ベルナルド「君の名前は?」

???「分からない。御主人様からは『クライシス』と呼ばれていた。」

ベルナルド「『危機クライシス』?コードネームか。ご主人様の名前は?」

???「分からない、しかし誰かに『主者様』と呼ばれていた。」

ここまで来てベルナルドはようやく気がついた、この一人の女性が利用されていることに。
どうせ要人を暗殺してもこの部隊の他の隊員に射殺される予定でここに送り込まれたのだと。

ベルナルド「君に名前をあげよう。」

???「名前?」

ベルナルド「君は今から『レイ』だ。」

レイ「レイ?」

ベルナルド「0って事さ、ここからは君が0を1に変えるんだ。」

ベルナルドはそう言うとレイの肩に手を当て、続けた。

ベルナルド「君はその主者に利用されていたんだ。これからは君の人生だ。だからもう人は殺さなくていい、殺しちゃダメなんだ。」

レイ「命令を無視……する?」

ベルナルド「そうだ、奴らなんかに利用されちゃダメだ。」

レイは黙り込んでしまった。
きっと葛藤しているに違いないとベルナルドは少し罪悪感を感じた。

ベルナルド「奴らの命令はもう聞かなくていい。」

レイ「……わかった。命令を無視する…。」

ベルナルド「よかった。これで敵の侵攻を一時阻止できた。」

ベルナルドが胸を撫で下ろしていると部屋の扉が強めにノックされた。

黒崎「ベルナルドさん?大丈夫ですか?」

ベルナルド「げっ、黒崎。」

黒崎「開けますよ?」

黒崎はなんの躊躇もなく扉を開けてきた。
もちろん中にはベルナルドとレイが居た。
しかしその光景は黒崎からすればラブラブ中に見えたのだ。

黒崎「あっ、ふ〜ん(察し)」

ベルナルド「お前が何を言いたいかわかるが『違う』とだけ言っておこう。」

レイ「目標確認。」

ベルナルド「なに!?」

レイが突然黒崎に向かって殺気をむき出しにした。
この異変にすぐに黒崎も気が付いた。

黒崎「いや、これは事故なんですよ、何も見てませんから本当に!!」

ベルナルド「何言ってる!!早く逃げろ!!」

レイ「殺す!!」

激しく動こうとしたレイの頭部になにかがついているのが見えた。
何かの機械のようだった。

ベルナルド(あれを撃ち落とすか、そうすれば止まるか?賭けろ!!俺!!)

ベルナルドはホルスターからFiveseveNを引き抜いて即座にレイの頭部の装置めがけて発砲した。

パァァァァン!!

その銃声はもちろん響き渡り、弾丸は装置を撃ち落としていた。

ベルナルド「………」

黒崎「………」

黒崎は無事だった。
しかし、レイは横たわって動かなくなっていた。

ベルナルド「殺しちまったのか?」

レイ「………ぅぅ…」

何とかレイは生きていた。
ベルナルドはレイの頭に着いていた装置を拾い上げ、解析班に回すように黒崎に伝えた後、レイを病室のベットに寝かせに行った。






【病室】

志礼「なんだかんだで身体の調子は戻ってきました。」

大和「そうか、それにしてもビックリしたで、基地内でお前と知らん女が倒れとるんやからな。遊びに行ってた帰りで良かった。」

志礼と大和は雑談をしていた。

大和「そう言えば、ホワールウィンドのことをCIAが嗅ぎつけたって火虎が言うてたぞ。」

志礼「CIA?なんであんな所が?」

大和「アメリカンAAの極秘試作システムやからCIAがモサドから金で情報を買ったんやろ。」

志礼たちの会話はいつの間にか重大な内容に変わっていた。

志礼「CIAが嗅ぎつけたってことはSADが動く可能性も?」

大和「可能性も何も連中既に動き出してるぞ?POOのアリアなんちゃらって奴も動いてるらしい。イラクで活動してた連中を今回の件でこっちに向けてるみたいや。」

倉須「本当ですか?」

たまたま志礼のお見舞いに病室に入ってきた倉須がショックを受けたような顔をしていた。

大和「ああ、九十九が喚いとったわ。」

志礼「そいつ知り合いか?」

倉須「いえ、なんでも…」

倉須は病室の扉を強く閉めて出て行った。
その様子は明らかにおかしかった。

志礼「………変なの。」

大和「あいつがああなるのも珍しいな。」

火虎『あー、あー、諸君、聞こえるか?』

スピーカーから火虎の声が聞こえてきた。この声がスピーカーから聞こえたということは、近々作戦があるということだった。

火虎『今回の奇襲の件でCIAの実働部隊SADが我々に向けて攻撃を行うという情報を枝吉参謀長官から受けた。』

この放送に基地中の隊員がザワついた。

火虎『最近の諜報組織はどうなっている?我々に情報が筒抜けだ。連中は明明後日に成田空港に民間機に偽装したCIA専用機で着陸する。連中は前の奇襲の情報は掴んでいると思われる。だからこの基地の座標も丸わかりってことだ。』

火虎『今回、我々フェンリルフォースが特殊部隊経験者の多いSADを撃退するための案として、空港で連中を迎え撃つ作戦を提示する。少し遠出になるが守備隊だけでこっちは事足りるだろうし、何よりも死人を処分する手間が省ける。』

隊長たちはすぐにその作戦に賛成した。
いつも雑木林で敵と交戦すると死体を片付けるのはフェンリルフォースの隊員達だった。

火虎『決まりだな。明後日に出発、その日の内に射撃ポイントを陣取って終いにしようぜ。』

隊員「おぉーーーーー!!!」

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