異世界転移者はお尋ね者
始まりのドラゴン
やべぇ…。
身体がバラバラになるかと思った…。
さっき、メーティスが解析が終わったって言ってたな。
だから立ち上がらないと。
あの化け物を倒す手段が、ようやく…。
思考に背き、身体は動かない。
火属性は無効化されるにも関わらず、そのスキルすら上回る魔力と純粋な炎の威力により、皮膚は炭のように焼け焦げていた。
身体の内部も焼かれ、目も見えない。
呼吸も出来ない。
しかし、魔力が俺の生命が消え落ちる事を支え、少しづつ破壊され尽くされた身体を治していく。
『マスター…っ。
酷い状態です…。これでは…っ』
頭の中でメーティスの声が響く。
意識だけは、まだ失わずに済んでいる事が不思議に思える。
『すでに度重なる魔法の使用によってマナも枯渇しています。
マナの回復と自然治癒を両立していますが、治癒が終わるまで時間が…っ』
まだ近くであの気配だけは感じる。
炎龍。
災厄と呼ぶに相応しい存在だ。
正直、俺達なら勝てる、と思っていたし、優勢だとも思っていた。
しかし形勢は一瞬で逆転され、こちらの状況は最悪だ。
あの炎龍は俺達にトドメをさすだろうか…?
そうボンヤリ考えていると、その耳に斬撃音が届く。
この気配は…アーシェか?
あいつはまだ無事なのか。
戦っているんだな…。
やっぱすげぇよ、アーシェは。
「アキト様っ!
そ、そんな…酷い…。
生きて…生きておりますか!?」
声が響く。
あぁ、シェリーか。
お前も無事だったんだな。
「息は…ある。
すぐに治癒させますっ!死んではいけません!」
身体に何か冷たいモノが流れ出すのを感じる。
こりゃ…なんだ?すげぇ心地良いな…。
『水魔法による治癒術です。
シェリー様の力もあれば治しきれます。
意識をしっかり持って、マスターっ』
どうやらシェリーとメーティスが回復してくれてるようだ。
だが、炎龍は…アーシェ一人で…?
ようやく闇に包まれた視界が開かれる。
ボンヤリとした視界が徐々にクッキリと形を成していく。
周りは火の海。
俺は仰向けになっており、シェリーの顔が見えた。
「アキト様っ!!良かった…。
もう少しジッとしていて下さい。
身体はまだボロボロです…」
シェリーは泣きそうになりながらそう言う。
目線を走らせると、空を飛んでいる炎龍が見える。
そこに光輝く影が空中を駆けまわり、魔法と斬撃を繰り出しているのが見える。
アーシェか…。
しかし、その魔法も斬撃も致命傷には程遠い。
今、俺の中にある解析の結果。
‟フェニックスの加護”を無効化する力をぶつけなければ、勝機は無い。
そしてあの存在に一人で立ち向かうのはいくらアーシェと言えど無謀過ぎる…。
アーシェの攻撃による傷はすぐに癒え、逆にアーシェは炎龍の近くにいるだけで炎の攻撃を受け続けている。
立たなくては…。
アーシェが倒れては、たとえ俺の一撃を加えても、トドメにはならない。
俺のマナも治癒と繰り返す召喚魔法によって付きかけている。
もう一度スレイプニルの召喚と、魔弾を作ればそれで終わりだろう。
それも絶対に当てなければいけない。
「シェリー…まだ潰眼は使えるか…?」
問いかけるが、シェリーは首を振る。
「もはや魔眼に使う魔力を残せません。
今はアキト様の治癒に全力を注がなくては…」
動きも止めれない。
まずい…。
あと一歩なのに、手詰まりか?
そう思った時、空を飛びぬけていくいくつもの影が見えた。
それは…巨大な鳥…。
グリフォンだ。
「あれは…グリフォン騎兵団っ」
シェリーも空を見上げて驚きの声を上げる。
クリステリアから、聖騎士が来たのだ。
これで俺達を捕まえにきた、とかだったら、最悪だが…どうやら相手はわかっているらしい。
グリフォン達は炎龍の周りと飛び、騎乗している聖騎士達が魔法を飛ばす。
それはほとんど効果をもたないが、それでも炎龍の意識を散らす事は出来た。
飛び回るハエを振り払うように翼を広げ、炎龍は咆哮を上げる。
それだけでグリフォン達は怖気付き、大きく炎龍と距離をとる。
しかし、一匹のグリフォンから紫電が走ると、炎龍の瞳に剣を突き刺す影が一つ。
さっきまでボロボロだったキリエスだ。
雷速で動くキリエスと、光速で動くアーシェ。
二つの光が縦横無尽に炎龍を切り刻む。
炎龍の身体からは血の代わりに炎が噴き出し、全身が燃え上がっている。
そして二人は炎龍から一気に距離をとり、それぞれ地面に降り立つと魔方陣を作り上げる。
「‟光の竜をここに”っ!」
アーシェが片手を天に翳し、叫ぶように詠唱する。
「‟火の意思をここに、水の流動をここに、風の趨勢をここに、雷の鉄槌をここに”っ!」
キリエスは両手を掲げ、四属性の魔法が交じり合う。
アーシェの掌が眩く光り、その手を握りしめると大きな光の翼が出来上がる。
その拳を振りかぶる。
キリエスの両手には交じり合った魔力の塊が出来上がり、それを両手で抑え込む。
一度光りが消えるが、その手を開くと赤、青、緑、黄の色がグルグルと回転する球体が輝きだす。
腕を突き出し、その球体を炎龍へと向ける。
炎龍はその二人から噴き出る魔力を察知し、炎弾を吐き出そうとするが、周りの聖騎士が一斉に顔にむけて魔法を放ちそれを阻止する。
「幻具召喚、‟スレイプニル”」
俺は小さく呟き、両手にスレイプニルを握る。
「アキト様っ!その身体ではっ!」
「大丈夫だ…この一発で…終わらせる…」
俺を止めようとするシェリーを手で制し、銃を手にする。
そう言ったのと同時に、アーシェとキリエスの詠唱が響き渡る。
「‟ラディウス・ドラゴニア”ッ!!!」
「‟クアッド・ミセント・クラスタ”ッ!!!」
アーシェが拳を突き出すとその拳から十字の光が飛び出す。
それは鋭い翼をもち、尖った頭をした一匹の光の竜。
光速で飛びぬけ、炎龍の胴体を真っ二つに切り裂いた。
キリエスが放ったのは魔力の砲弾。
雷速を超える速度で飛んでいくその球体の魔力の塊は炎龍の胸に当たると大きく爆発し、爆発に巻き込まれた部位を根こそぎ消し去った。
その状態でありながら、切断された部位も、消し飛んだ部位にも炎が満たされていく。
俺はその事を知っている。
だから、もう終わりにする。
最後の魔力を込め、魔弾を作り、装填する。
まだ炎の治癒が完全に行われず滞空している炎龍の頭に狙いを定める。
「それじゃあな。始まりのドラゴンさんよ」
俺はそう言って引き金を引く。
蒼い閃光が炎龍の頭蓋を突き抜ける。
そして、炎龍の全身から炎が消し飛ぶ。
その身体はボロボロと崩れていき、灰へと変わっていく。
それを見届けると、俺の意識は闇に落ちる。
シェリーが叫んでる。
…もう眠いわ…。
ここんところ、しっかり眠ってなかったからな…。
少しだけ…ゆっくり…休ませて…くれ…。
身体がバラバラになるかと思った…。
さっき、メーティスが解析が終わったって言ってたな。
だから立ち上がらないと。
あの化け物を倒す手段が、ようやく…。
思考に背き、身体は動かない。
火属性は無効化されるにも関わらず、そのスキルすら上回る魔力と純粋な炎の威力により、皮膚は炭のように焼け焦げていた。
身体の内部も焼かれ、目も見えない。
呼吸も出来ない。
しかし、魔力が俺の生命が消え落ちる事を支え、少しづつ破壊され尽くされた身体を治していく。
『マスター…っ。
酷い状態です…。これでは…っ』
頭の中でメーティスの声が響く。
意識だけは、まだ失わずに済んでいる事が不思議に思える。
『すでに度重なる魔法の使用によってマナも枯渇しています。
マナの回復と自然治癒を両立していますが、治癒が終わるまで時間が…っ』
まだ近くであの気配だけは感じる。
炎龍。
災厄と呼ぶに相応しい存在だ。
正直、俺達なら勝てる、と思っていたし、優勢だとも思っていた。
しかし形勢は一瞬で逆転され、こちらの状況は最悪だ。
あの炎龍は俺達にトドメをさすだろうか…?
そうボンヤリ考えていると、その耳に斬撃音が届く。
この気配は…アーシェか?
あいつはまだ無事なのか。
戦っているんだな…。
やっぱすげぇよ、アーシェは。
「アキト様っ!
そ、そんな…酷い…。
生きて…生きておりますか!?」
声が響く。
あぁ、シェリーか。
お前も無事だったんだな。
「息は…ある。
すぐに治癒させますっ!死んではいけません!」
身体に何か冷たいモノが流れ出すのを感じる。
こりゃ…なんだ?すげぇ心地良いな…。
『水魔法による治癒術です。
シェリー様の力もあれば治しきれます。
意識をしっかり持って、マスターっ』
どうやらシェリーとメーティスが回復してくれてるようだ。
だが、炎龍は…アーシェ一人で…?
ようやく闇に包まれた視界が開かれる。
ボンヤリとした視界が徐々にクッキリと形を成していく。
周りは火の海。
俺は仰向けになっており、シェリーの顔が見えた。
「アキト様っ!!良かった…。
もう少しジッとしていて下さい。
身体はまだボロボロです…」
シェリーは泣きそうになりながらそう言う。
目線を走らせると、空を飛んでいる炎龍が見える。
そこに光輝く影が空中を駆けまわり、魔法と斬撃を繰り出しているのが見える。
アーシェか…。
しかし、その魔法も斬撃も致命傷には程遠い。
今、俺の中にある解析の結果。
‟フェニックスの加護”を無効化する力をぶつけなければ、勝機は無い。
そしてあの存在に一人で立ち向かうのはいくらアーシェと言えど無謀過ぎる…。
アーシェの攻撃による傷はすぐに癒え、逆にアーシェは炎龍の近くにいるだけで炎の攻撃を受け続けている。
立たなくては…。
アーシェが倒れては、たとえ俺の一撃を加えても、トドメにはならない。
俺のマナも治癒と繰り返す召喚魔法によって付きかけている。
もう一度スレイプニルの召喚と、魔弾を作ればそれで終わりだろう。
それも絶対に当てなければいけない。
「シェリー…まだ潰眼は使えるか…?」
問いかけるが、シェリーは首を振る。
「もはや魔眼に使う魔力を残せません。
今はアキト様の治癒に全力を注がなくては…」
動きも止めれない。
まずい…。
あと一歩なのに、手詰まりか?
そう思った時、空を飛びぬけていくいくつもの影が見えた。
それは…巨大な鳥…。
グリフォンだ。
「あれは…グリフォン騎兵団っ」
シェリーも空を見上げて驚きの声を上げる。
クリステリアから、聖騎士が来たのだ。
これで俺達を捕まえにきた、とかだったら、最悪だが…どうやら相手はわかっているらしい。
グリフォン達は炎龍の周りと飛び、騎乗している聖騎士達が魔法を飛ばす。
それはほとんど効果をもたないが、それでも炎龍の意識を散らす事は出来た。
飛び回るハエを振り払うように翼を広げ、炎龍は咆哮を上げる。
それだけでグリフォン達は怖気付き、大きく炎龍と距離をとる。
しかし、一匹のグリフォンから紫電が走ると、炎龍の瞳に剣を突き刺す影が一つ。
さっきまでボロボロだったキリエスだ。
雷速で動くキリエスと、光速で動くアーシェ。
二つの光が縦横無尽に炎龍を切り刻む。
炎龍の身体からは血の代わりに炎が噴き出し、全身が燃え上がっている。
そして二人は炎龍から一気に距離をとり、それぞれ地面に降り立つと魔方陣を作り上げる。
「‟光の竜をここに”っ!」
アーシェが片手を天に翳し、叫ぶように詠唱する。
「‟火の意思をここに、水の流動をここに、風の趨勢をここに、雷の鉄槌をここに”っ!」
キリエスは両手を掲げ、四属性の魔法が交じり合う。
アーシェの掌が眩く光り、その手を握りしめると大きな光の翼が出来上がる。
その拳を振りかぶる。
キリエスの両手には交じり合った魔力の塊が出来上がり、それを両手で抑え込む。
一度光りが消えるが、その手を開くと赤、青、緑、黄の色がグルグルと回転する球体が輝きだす。
腕を突き出し、その球体を炎龍へと向ける。
炎龍はその二人から噴き出る魔力を察知し、炎弾を吐き出そうとするが、周りの聖騎士が一斉に顔にむけて魔法を放ちそれを阻止する。
「幻具召喚、‟スレイプニル”」
俺は小さく呟き、両手にスレイプニルを握る。
「アキト様っ!その身体ではっ!」
「大丈夫だ…この一発で…終わらせる…」
俺を止めようとするシェリーを手で制し、銃を手にする。
そう言ったのと同時に、アーシェとキリエスの詠唱が響き渡る。
「‟ラディウス・ドラゴニア”ッ!!!」
「‟クアッド・ミセント・クラスタ”ッ!!!」
アーシェが拳を突き出すとその拳から十字の光が飛び出す。
それは鋭い翼をもち、尖った頭をした一匹の光の竜。
光速で飛びぬけ、炎龍の胴体を真っ二つに切り裂いた。
キリエスが放ったのは魔力の砲弾。
雷速を超える速度で飛んでいくその球体の魔力の塊は炎龍の胸に当たると大きく爆発し、爆発に巻き込まれた部位を根こそぎ消し去った。
その状態でありながら、切断された部位も、消し飛んだ部位にも炎が満たされていく。
俺はその事を知っている。
だから、もう終わりにする。
最後の魔力を込め、魔弾を作り、装填する。
まだ炎の治癒が完全に行われず滞空している炎龍の頭に狙いを定める。
「それじゃあな。始まりのドラゴンさんよ」
俺はそう言って引き金を引く。
蒼い閃光が炎龍の頭蓋を突き抜ける。
そして、炎龍の全身から炎が消し飛ぶ。
その身体はボロボロと崩れていき、灰へと変わっていく。
それを見届けると、俺の意識は闇に落ちる。
シェリーが叫んでる。
…もう眠いわ…。
ここんところ、しっかり眠ってなかったからな…。
少しだけ…ゆっくり…休ませて…くれ…。
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