神々居酒屋~霊道通りの小さなお店~

朧夜«オボロ»

一品目❁⃘羊足のロースト

人が一生を終えあの世に行く際通る道。一般的には「霊道」と呼ばれ様々な所から死人の魂、様々な霊魂がそこを通るが、この世には知られていないことがある。その道は魂だけでなく八百万の神や様々な国の神が通るとして沢山の出店や屋台、店舗がある。

その中にほかの店とは比べ物にならないくらいに地味な居酒屋がある。
その店は外見は地味だが、店主が腕利きの料理人で言われた料理はほぼ完璧に作る、まさに神の食事に相応しいと噂になっている。

彼の名前はMr.クロム。世界各国をまわり歩き様々な国の料理を研究していた。そしてこの神々の世界で店を始めたのである。


❁⃘


「いらっしゃいませ。…ああ、貴方はエジプト神の…」

一際目立つ犬の頭、つり上がった目
そしてあの飾り

「ああ、冥界神アヌビスである。ほう…始めてきたがいい店ではないか。」

「他の方の勧めで?」

「我が友トトの話でな、腕利きの料理人がいると」

アヌビス神はカウンターに座り
"とりあえず店の食材で私に似合う物を作れ"
"そうだな…肉料理はあるか"
と、クロムに伝える。

「こちらの店ではお酒を楽しみ料理はツマミのようなものになりますがアヌビス様はよろしいでしょうか。」

「ああ、構わぬ。」

「では、アヌビス様には料理を待つ間こちらを。」

クロムが取り出したのはワインとそら豆を煮たもの。昔エジプトではワインは貴重なものとされ庶民の口には滅多に入らず、神々の捧げものとして使われてきた。
そら豆はエジプトで健康食品とされ昔から今現在まで愛される豆である。

「おお…葡萄酒出ないか。そら豆も私の好物である…」

クロムは肉を調理しながら答える

「エジプトではビールでも良いと思ったのですがやはり神々の捧げものをアヌビス様に。」

「気が利くではないか。はて、その肉は羊か?」

「ええ、エジプトでは一般的に家畜としてそだてられていますよね?今回こちらはローストにしようと。焼き加減はどうされますか?」

「こんがり頼む。私はいつも人の死体を見ているものでたまにはな。」


オーブンから漂う香辛料、バターの香り

付け合せのクレソンやじゃが芋

油がはね、パチパチと音を立てる


「さあ、出来ました。"羊足のロースト"。豪快に食いついて構いませんのでどうぞ味をお楽しみください。」


「油の質が良いな、やはり職人だな。」


アヌビスはがぶりと噛みつき口から垂れる油を舐める。香辛料が効いており、バターのまろやかな味が肉の旨味を引き立てる。

付け合せのクレソンは苦味が特徴的だが肉との相性が良い。じゃが芋は特製ソースをかけ肉と一緒に。


「うむ、神大の時代にもこの肉料理は捧げられたが…これは違う…別の次元の料理であるな…」

「昔は香辛料が貴重でしたよね。香辛料の他にハーブなんかもいいかと。」

「凄く美味だな…これは太陽神も創造神も喜ぶだろう。」



「あぁ……美味であったぞ。酒も美味い。なんと言っても昔を思い出す。」

「お褒めいただき光栄です。」

「今日は世話になったな。今度はトトと来る。」


「またのご来店お待ちしております。」


❁⃘


「店長遅れてすみません…あれ?お客さん来たんですか?」

「うん、冥界神アヌビス様だったよ。カンナちゃんは確か見たことあるよね?」



❁⃘


ちょこっと!マメ知識★

古代エジプトで欠かせない食べ物はパンとビール!
身近な食べ物であり、死者や神の供物として捧げられていました!今のビールよりもアルコール度数は低いけど酔っ払い、二日酔いになる人もいたんだって!

「そう言えばクロムさんはお酒強かったですよね!」

「うん、めちゃめちゃ強いよー、飲み比べじゃ負けたことないしね。」

……To be continued?



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