二番目(セカンド)の刹那

Lot

4月14日③《元の世界には戻れるわけ?》

「事後報告になってしまって申し訳ないけど、私は莉奈を殺す事にしたわ。私が、元の世界に戻る為に」


 部屋に戻っていつものテーブルを囲んで話を始めた。まだ凛が来ていないけど。


「皐月さー。本当にこっちで死んだら元の世界には戻れるわけ?」
「……前回はそうだったわ。今回もそうだとは思うけれど」
「元の世界に戻るって言うなら何で死体が残るのよ」
「前回もそうだったわよ。……私が嘘をついてると思うの?」
「それは……」


 日菜は思っていないとは言わなかった。真央を疑っているということだろうか。


「私は元の世界に戻ってくれていると信じているわ。そうじゃなきゃ人を殺す何てできない」
「そう……よね。悪かったわ。それより今後の方針よ。皐月は莉奈以外も含めて殺すつもり?」
「ええ、そうね。それしかないもの」


 それしかないよな。僕もそう思う。


「皐月さん、これ何?」


 月菜が立って歩き始めたと思うと、部屋の隅の化粧台のような小さい机の上を指さした。


「何かあるの?」


 真央が月菜が指さした物を見に行く。僕と日菜もそれに着いて行った。


「これは……」


 そこには『メンバー一覧』と書かれたの5~6枚の小さい紙を重ねたメモらしき物があった。


「これ、莉奈の字よ」


 表紙の右下に書かれた『りな』の文字が示す通りこれは莉奈が書いた物のようだ。


「あー皆さん、お待たせしました!」


 凛が来た。


「ん? それは?」
「莉奈が遺してくれた物よ」
「遺して……」


 その一言で凛は状況を把握したようだった。そのメモを真央が手に取り、ページをめくった。


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 名前:月島つきしま莉奈りな
 能力:『幻覚イリュージョン


 この情報はもう必要ないよね。
 他のメンバーの情報も教えるから
 先のページも読んでね。


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 莉奈が死ぬ直前にこんな物を残していたのか。これがあればかなり有利に、というか不利な状況を解消できる。真央は次のページをめくった。


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 名前:九条くじょう在葉あるは
 能力:『封印シールド


 こいつは能力の内容、嘘ついてないよ。
 本当に『封印シールド』。
 能力を封じられるのももちろんだけど、
 呼吸とか封じられても厄介だから注意!
 バカだけど良い奴だと思うからさ
 日菜ちゃんと月菜ちゃんは、
 元の世界に戻っても仲良くしてあげてね


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「仲良く何て馬鹿じゃないの? あたし達を騙したんだから元の世界で会ったら文句を言ってやるわよ」


 日菜のその発言は在葉を殺すつもりだということか?更に次のページに進む


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 名前:清水しみず麗羅れいら
 能力:『念話テレパシー


 大金持ちのお嬢様。羨ましい。
 能力の『念話テレパシー』で
 私達は離れていても常に会話ができる。
 電話がない環境だとすごく便利だった。


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 名前:千歳ちとせ亜蓮あれん
 能力:『超越エクシード


 絶対に相手を上回る能力。
 細かい事はあたしも知らない。
 刹那と知り合いらしいね。
 不良っぽくてちょっと怖い。


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 残りの2人の分からなかった能力の内容も分かった。『念話テレパシー』か。それで僕らの情報が莉奈から向こうに伝わったみたいだな。『超越エクシード』は相手を上回るって、強力そうだけどよく分からないな。


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 名前:六浦むつうらくろ
 能力:『創造クリエイト


 通称ムクロ。たぶんリーダー。
 能力で何でも好きな物を
 好きなだけ作れる。
 剣とか炎の玉とか武器になる物を
 いっぱい作って飛ばすのが強い。
 空腹で困らない便利な能力でもある。


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「ムクロ?」
「小波、知ってるの?」
「知ってるよ。同級生だ」
「へぇ」


 そうか。ムクロはこの世界にいたのか。それなら始業式の日に会えないのは当然か。莉奈からのメモはそのページで終わっていた。


「さて、話を戻しましょう。私達がどうして行くかだけど」
「話すも何も、選択肢ないだろ?」
「そうよね」
「ですね!」
「決まりですね」
「じゃあ……」
「あぁ。僕達はアイツらを殺して元の世界に戻る」

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