二番目(セカンド)の刹那
4月8日④《大声で呼ぶしかないでしょ》
「……この家、インターホンないの?」
日菜と月菜と一緒に在葉を連れて真央の家に来たが、インターホンがない。
「それなら外から大声で呼ぶしかないでしょ」
「そうだな……日菜、頼んだ」
「嫌よ。刹那がやりなさい」
「僕だって嫌だよ」
嫌だとは言っても、やるしかないんだろうな。
「そうね……じゃあ在葉、やりなさい」
「は、俺?」
「皐月真央って人がこの家の中にいるから呼んでよ」
「マジですか」
「マジよ」
「マジか……」
もう在葉は可哀想にしか見えない。
「何か声がすると思ったら来てたのね」
「あ、真央」
ドアが内側から開かれて、真央が出てきた。外で騒いでたから中に聞こえたのか。まぁ聞こえるよな。
「これであとは凛ちゃんを待つだけね。ところで、その人は?」
「うーん、凛も来てからまとめて話すよ」
「そうね。それでいいわ」
真央に案内されて昨日と同じ部屋に行った。
「やっほー、君が刹那くん? 後ろにいるのが日菜ちゃんと月菜ちゃんかな?」
「ええと、誰ですか?」
「アタシは莉奈。詳細はあとでね」
真央の家に知らない奴がいるんだけど。誰だお前。
────────────
「真央さーん! こんばんはー!」
少し待っていると外から凛の声がした。
「凛ちゃんを連れてくるから少し待っていてね」
真央がそういって席を離れて、すぐに凛を連れてきた。
「すみません、遅くなっちゃいました。ところで……昨日より2人くらい多いんですが……?」
「さて! 全員揃ったね!まずはアタシが自己紹介をしよう。アタシの名前は月島莉奈。莉奈ちゃんって呼んでねー♪……それと、アタシの能力は『発火』。手から火を出したりできる。ほらね♪」
莉奈はそういうと自身の指先に炎を出して見せた。
「真央~、自己紹介ってこんな感じ?」
「それでいいわよ。次はそっちの彼も頼むわ」
次は在葉が自己紹介か。
「名前は九条在葉。能力は『封印』。相手の何かを封じたりできる。こんなもんか?」
「ええ、ありがとう。それで──」
「真央は無理に仕切らないでいいよ」
在葉の自己紹介を終えたところで昨日のように真央が仕切ろうとした所を莉奈が止めた。
「真央、リーダーとか向かないタイプっしょ?アタシに任せなって」
「うん……そうね。任せたわ」
「よーし! 任された。さて、早速本題に入るよ。この世界に来た人は合計で5人のはず。でもここには7人いる。つまり2人は偽物よね?」
偽物か。偽物ってどういうことだ?
「偽物ってのは、要するに実は元からこの世界にいた人ってことになるでしょ? この世界に来た人は5人なんだから。目的とかは後で考えるとして、誰が元からこの世界にいた奴かが分かれば誰が偽物かは分かる。ここまではおっけー?」
適当そうな雰囲気のくせに冷静に状況を判断出来てるな。在葉がいた時点で僕も同じように思っていた。
「偽物は2人。2人が偽物ならその2人は元から知り合っている可能性が高いわよね。例えば……双子とか?」
莉奈が日菜と月菜の方に視線を向ける。日菜と月菜を疑ってるのか?
「はぁ!?アタシ達が偽物だって言いたいわけ?」
「可能性の話をしただけよ」
「アタシ達も在葉の事を元の世界で知っているわ。だから偽物じゃない」
そうだ。日菜と月菜は在葉と知り合いだ。……あれ、そうすると僕と凛が残るのか?
「在葉、そこの双子ちゃんと元の世界で知り合いなの?」
「……知らねぇよ。俺は」
「はぁ!? あんたねぇ!」
「日菜ちゃん。残念でしたー。適当な証言をするのは良くないよ。それに、そんな嘘をつくって事はやっぱり偽物でしょ?」
「ちが……あたしは……」
日菜と在葉は元々知り合いじゃないのか? それが本当だとするとどうやって在葉を見つけたのだろうか。
「お姉ちゃんも私も、偽物じゃないよ」 
「月菜……」
「ふーん、根拠は?」
月菜は席を立って花瓶から花を取り出した。
「『縮小』。これがわたしの能力。はい、お姉ちゃん」
月菜は手に持った花を小さく縮めて見せた。そして日菜に手渡す。
「『拡大』! どうよ!」
今度は日菜が自身の能力で元の大きさに戻す。
「能力が使えれば、異世界から来たって証明になるでしょう! あんたの推理は外れたわね莉奈。」
「なるほど! 能力を使って見せれば証明できるとは考えたわね!」
「そうでしょ?」
「考えたのは日菜ちゃんじゃなくて月菜ちゃんだったみたいだけど。」
「う……」
これで日菜と月菜の疑いは晴れたか。
「でもじゃあ、残ってるのって2人しかいないわね。能力使える?」
莉奈は今度は僕と凛を疑い始めたみたいだ。やっぱりそうなるよね。
「僕の能力は『消去』って言って」
「能力の内容は昼間に真央から聞いたわ。要するに能力は使えないってことよね?」
「まぁ、そうなる」
「ふーん、それは非常に怪しいね。で、凛ちゃんは?」
「『雷撃』も気軽に使えるような物ではないですが……昨日、刹那さんが使った所を見ています」
「アタシは刹那くんも含めて疑ってるのよ。他に証人がいないと」
「えっと……真央さん、確か昨日、わたしの能力を遠くから見てますよね?」
「そうね。それは私も確かに見たわ」
「真央が見たって言うなら……でも雷って自然現象でしょ?」
「そう……ですけど」
「それに凛ちゃん昨日、能力が分からないとか言ってたらしいじゃない?悪いけど怪しすぎるわけよ」
「そう……ですね。仕方ないです。今ここで能力を使います!えい!」
凛が立ち上がって手を振りかざす。
「あ、あれ? 加減しすぎかな。えーい!!」
……何も起きない。
「そんな、何で……。全力でやったのに」
「やっぱ、凛ちゃん偽物よね」
凛に全力でここに雷を落とされても困るんだが……。だが、凛が現状で怪しいのはその通りか。でも……
「ちょっといいか?」
「何よ」
1つ気になることがある。
「日菜と月菜は偽物じゃないってことでいいんだよな?」
「ええ、そうよ」
「じゃあ何で、在葉と知り合いだって言ったんだ?」
「刹那あんた、あたし達を疑ってるの?」
「違うよ。僕が疑ってるのは在葉だ」
「え、俺?」
「日菜と月菜は偽物じゃないんだから、嘘をつく必要はない。だから日菜の在葉と知り合いだっていうのは嘘じゃないはずだ。でも在葉は日菜達を知らないと言った。おかしくないか?」
「ちっ……おかしいとしても、お前は日菜と俺が元々知り合いだって言いたいわけだろ。だとしたら俺も偽物じゃねぇって事になるぞ」
「でも不自然なのは事実だ。偽物の定義から考え直すべきだ。例えばだけど、同じように元の世界からこの世界に来てこの世界を滅ぼそうとしてて、そいつらを倒すために僕らがこの世界に来たとかどうだ? 偽物ってのは先にこの世界に来た奴らだ。適当に言っただけだが矛盾はないだろ」
「そ、そんなデタラメ……」
「それにさっき凛が能力を使えなかったのって、お前が凛の能力を封印してたからじゃないか?」
「ち、違う。確かにやろうと思えば俺の能力で他の人の能力を封印することはできる。でも今はやってない」
「へぇ。『他の人の能力を封印できる』って言ったな? さっき初めて異世界から来た人と会ったはずなのにどうやって試したんだよ」
「それは……ええと」
在葉が黙り込む。やっぱり在葉は怪しいか。
「もういいよ在葉。偽物は在葉とアタシだよ」
莉奈が言った。
「刹那くん、アンタなかなか頭いいわね。それとも勘が鋭いと言うべきかな?」
「莉奈?何で貴女が……」
「ごめんね、真央」
このタイミングで嘘をつく理由は流石にないだろうし、偽物は判明したか。
「どうして自分から言ったんだ? 在葉はともかく、僕は莉奈の事は疑ってなかった」
「元々、真央から5人の能力を聞けただけで十分な情報だったんだよね。あとは面白そうだから残ってみただけなのよ」
「そうか」
「ってか。在葉、何でアンタまでここに来てんのよ。ここに来るの私だけのはずだったでしょ?」
「見つかっちゃって……」
「在葉のせいでバレたみたいなもんだし後で覚悟しときなさい」
「はい……」
在葉、さっきまで日菜に文句言われてたのに今度は莉奈に怒られて、可哀想だなあいつ。
「真央、今日はとりあえずこの辺で解散したら?アタシ達の正体はまだバラせないしさ。落ち着いて考えてみなさい」
「そう……ね。とりあえず今日は解散にするわ」
日菜と月菜と一緒に在葉を連れて真央の家に来たが、インターホンがない。
「それなら外から大声で呼ぶしかないでしょ」
「そうだな……日菜、頼んだ」
「嫌よ。刹那がやりなさい」
「僕だって嫌だよ」
嫌だとは言っても、やるしかないんだろうな。
「そうね……じゃあ在葉、やりなさい」
「は、俺?」
「皐月真央って人がこの家の中にいるから呼んでよ」
「マジですか」
「マジよ」
「マジか……」
もう在葉は可哀想にしか見えない。
「何か声がすると思ったら来てたのね」
「あ、真央」
ドアが内側から開かれて、真央が出てきた。外で騒いでたから中に聞こえたのか。まぁ聞こえるよな。
「これであとは凛ちゃんを待つだけね。ところで、その人は?」
「うーん、凛も来てからまとめて話すよ」
「そうね。それでいいわ」
真央に案内されて昨日と同じ部屋に行った。
「やっほー、君が刹那くん? 後ろにいるのが日菜ちゃんと月菜ちゃんかな?」
「ええと、誰ですか?」
「アタシは莉奈。詳細はあとでね」
真央の家に知らない奴がいるんだけど。誰だお前。
────────────
「真央さーん! こんばんはー!」
少し待っていると外から凛の声がした。
「凛ちゃんを連れてくるから少し待っていてね」
真央がそういって席を離れて、すぐに凛を連れてきた。
「すみません、遅くなっちゃいました。ところで……昨日より2人くらい多いんですが……?」
「さて! 全員揃ったね!まずはアタシが自己紹介をしよう。アタシの名前は月島莉奈。莉奈ちゃんって呼んでねー♪……それと、アタシの能力は『発火』。手から火を出したりできる。ほらね♪」
莉奈はそういうと自身の指先に炎を出して見せた。
「真央~、自己紹介ってこんな感じ?」
「それでいいわよ。次はそっちの彼も頼むわ」
次は在葉が自己紹介か。
「名前は九条在葉。能力は『封印』。相手の何かを封じたりできる。こんなもんか?」
「ええ、ありがとう。それで──」
「真央は無理に仕切らないでいいよ」
在葉の自己紹介を終えたところで昨日のように真央が仕切ろうとした所を莉奈が止めた。
「真央、リーダーとか向かないタイプっしょ?アタシに任せなって」
「うん……そうね。任せたわ」
「よーし! 任された。さて、早速本題に入るよ。この世界に来た人は合計で5人のはず。でもここには7人いる。つまり2人は偽物よね?」
偽物か。偽物ってどういうことだ?
「偽物ってのは、要するに実は元からこの世界にいた人ってことになるでしょ? この世界に来た人は5人なんだから。目的とかは後で考えるとして、誰が元からこの世界にいた奴かが分かれば誰が偽物かは分かる。ここまではおっけー?」
適当そうな雰囲気のくせに冷静に状況を判断出来てるな。在葉がいた時点で僕も同じように思っていた。
「偽物は2人。2人が偽物ならその2人は元から知り合っている可能性が高いわよね。例えば……双子とか?」
莉奈が日菜と月菜の方に視線を向ける。日菜と月菜を疑ってるのか?
「はぁ!?アタシ達が偽物だって言いたいわけ?」
「可能性の話をしただけよ」
「アタシ達も在葉の事を元の世界で知っているわ。だから偽物じゃない」
そうだ。日菜と月菜は在葉と知り合いだ。……あれ、そうすると僕と凛が残るのか?
「在葉、そこの双子ちゃんと元の世界で知り合いなの?」
「……知らねぇよ。俺は」
「はぁ!? あんたねぇ!」
「日菜ちゃん。残念でしたー。適当な証言をするのは良くないよ。それに、そんな嘘をつくって事はやっぱり偽物でしょ?」
「ちが……あたしは……」
日菜と在葉は元々知り合いじゃないのか? それが本当だとするとどうやって在葉を見つけたのだろうか。
「お姉ちゃんも私も、偽物じゃないよ」 
「月菜……」
「ふーん、根拠は?」
月菜は席を立って花瓶から花を取り出した。
「『縮小』。これがわたしの能力。はい、お姉ちゃん」
月菜は手に持った花を小さく縮めて見せた。そして日菜に手渡す。
「『拡大』! どうよ!」
今度は日菜が自身の能力で元の大きさに戻す。
「能力が使えれば、異世界から来たって証明になるでしょう! あんたの推理は外れたわね莉奈。」
「なるほど! 能力を使って見せれば証明できるとは考えたわね!」
「そうでしょ?」
「考えたのは日菜ちゃんじゃなくて月菜ちゃんだったみたいだけど。」
「う……」
これで日菜と月菜の疑いは晴れたか。
「でもじゃあ、残ってるのって2人しかいないわね。能力使える?」
莉奈は今度は僕と凛を疑い始めたみたいだ。やっぱりそうなるよね。
「僕の能力は『消去』って言って」
「能力の内容は昼間に真央から聞いたわ。要するに能力は使えないってことよね?」
「まぁ、そうなる」
「ふーん、それは非常に怪しいね。で、凛ちゃんは?」
「『雷撃』も気軽に使えるような物ではないですが……昨日、刹那さんが使った所を見ています」
「アタシは刹那くんも含めて疑ってるのよ。他に証人がいないと」
「えっと……真央さん、確か昨日、わたしの能力を遠くから見てますよね?」
「そうね。それは私も確かに見たわ」
「真央が見たって言うなら……でも雷って自然現象でしょ?」
「そう……ですけど」
「それに凛ちゃん昨日、能力が分からないとか言ってたらしいじゃない?悪いけど怪しすぎるわけよ」
「そう……ですね。仕方ないです。今ここで能力を使います!えい!」
凛が立ち上がって手を振りかざす。
「あ、あれ? 加減しすぎかな。えーい!!」
……何も起きない。
「そんな、何で……。全力でやったのに」
「やっぱ、凛ちゃん偽物よね」
凛に全力でここに雷を落とされても困るんだが……。だが、凛が現状で怪しいのはその通りか。でも……
「ちょっといいか?」
「何よ」
1つ気になることがある。
「日菜と月菜は偽物じゃないってことでいいんだよな?」
「ええ、そうよ」
「じゃあ何で、在葉と知り合いだって言ったんだ?」
「刹那あんた、あたし達を疑ってるの?」
「違うよ。僕が疑ってるのは在葉だ」
「え、俺?」
「日菜と月菜は偽物じゃないんだから、嘘をつく必要はない。だから日菜の在葉と知り合いだっていうのは嘘じゃないはずだ。でも在葉は日菜達を知らないと言った。おかしくないか?」
「ちっ……おかしいとしても、お前は日菜と俺が元々知り合いだって言いたいわけだろ。だとしたら俺も偽物じゃねぇって事になるぞ」
「でも不自然なのは事実だ。偽物の定義から考え直すべきだ。例えばだけど、同じように元の世界からこの世界に来てこの世界を滅ぼそうとしてて、そいつらを倒すために僕らがこの世界に来たとかどうだ? 偽物ってのは先にこの世界に来た奴らだ。適当に言っただけだが矛盾はないだろ」
「そ、そんなデタラメ……」
「それにさっき凛が能力を使えなかったのって、お前が凛の能力を封印してたからじゃないか?」
「ち、違う。確かにやろうと思えば俺の能力で他の人の能力を封印することはできる。でも今はやってない」
「へぇ。『他の人の能力を封印できる』って言ったな? さっき初めて異世界から来た人と会ったはずなのにどうやって試したんだよ」
「それは……ええと」
在葉が黙り込む。やっぱり在葉は怪しいか。
「もういいよ在葉。偽物は在葉とアタシだよ」
莉奈が言った。
「刹那くん、アンタなかなか頭いいわね。それとも勘が鋭いと言うべきかな?」
「莉奈?何で貴女が……」
「ごめんね、真央」
このタイミングで嘘をつく理由は流石にないだろうし、偽物は判明したか。
「どうして自分から言ったんだ? 在葉はともかく、僕は莉奈の事は疑ってなかった」
「元々、真央から5人の能力を聞けただけで十分な情報だったんだよね。あとは面白そうだから残ってみただけなのよ」
「そうか」
「ってか。在葉、何でアンタまでここに来てんのよ。ここに来るの私だけのはずだったでしょ?」
「見つかっちゃって……」
「在葉のせいでバレたみたいなもんだし後で覚悟しときなさい」
「はい……」
在葉、さっきまで日菜に文句言われてたのに今度は莉奈に怒られて、可哀想だなあいつ。
「真央、今日はとりあえずこの辺で解散したら?アタシ達の正体はまだバラせないしさ。落ち着いて考えてみなさい」
「そう……ね。とりあえず今日は解散にするわ」
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