二番目(セカンド)の刹那

Lot

4月7日②《私が把握していることを》

「私以外は、全員初めてか。それじゃあ全員が軽く自己紹介を済ませた所で、この世界について私が把握していることを教えるわね」


「それじゃあ、最初に行っておくと私は数日前に異世界に行ったことがあるから、いろいろ推測できるというだけで、異世界に送り込んだ誰かとは何の面識もないし、何か特別な事を知っているわけでもないわ。ええと何から話そうかしらね…ええと…」


 僕と会った時もそうだったが、話の間に何を話すか考える事が多いなこの人。リーダーシップをとっているが、実は話すの苦手なのか?


「そうね。まず、この世界の中での私達の存在について、って言えばいいのかしら。それから話すけど、この世界の人達は私達を私達の名前とは別の名前で呼ぶわ。元々親しかったかのようにね。場合によっては『この前はありがとう』とか突然言われることもあるわね。これは推測だけど、私達がこの世界にくる際に私達が元々存在していたものとして、この世界に組み込まれていると思うの。だから、この家は私の家だし、貴方達が目覚めたのは貴方達の家よ。そこにいて本来の家の主とばったり会う。なんてことはないから、その家は自由にしていいと思うわ。普段はそこで過ごすようにしましょう」


 なるほど、凛に絡んでた奴がセンチとかアトとか言ってたのはこの世界に組み込まれた僕達の名前だったってことなのかな。センチってすごい名前だな。100分の1? あ、凛だから厘なのか。


「あと、能力については凛ちゃんは既に使ったみたいだけど普通に使おうと思えば使えるわよ。あぁ……あと、自己紹介の時に聞くべきだったけど司令が『世界を救え』以外だった人はいないわよね?」


 全員が周りの人を見回しながら軽く頷く。


「この能力は個人差はあるけど、どれもかなり強力で、物理法則を無視して結果を引き出すようなもの。だから、世界を変えるのは案外難しくないと思うわよ。問題はこの能力をどう使えば世界を救えるかという点だけど」


 そうだよな。いろいろ強そうな能力はあったけど、強いだけじゃ意味無いだろうし……世界を救うのは世界を支配するより難しいんだろうな。たぶん。僕の能力なんて1回使っただけで世界中を滅ぼせそうだし。


「それから、この世界で私たちが……死んだ場合について」


 死ぬ……か。何をするかによるが、世界をどうこうしようとしてるのだから命の危険くらいあるってことなのかな。場の空気が重くなるのを感じる。


「この世界の私達は死ぬことになるけど、元の世界では生きてるわ。ただし、こっちで死んだ場合元の世界に戻ってもこっちの記憶はない。って感じかしらね」


 真央は前に異世界に言った経験からこう言っている。つまりそれは真央が前に異世界に行った時、少なくとも1人は死んだってことになる。僕達これから何をすることになるんだろうか。


「さて、これくらいかしら。『世界を救う』という条件さえクリアすれば元の世界には無事に帰れるけど、この世界で経過した分の時間が元の世界でも経過してるから、出来るだけ早くクリアしていきましょう。何か質問は?」


 さらっと凄い事言わなかったか? 元の世界でも時間が進んでるって事は今ごろ普通なら学校に行ってるってことか。少なくとも既に1日は無断で欠席してるし、1日じゃ済まないんだろうな。


「現状、特に何をしたらいいか分からないから。明日は個々でどうやったら世界を救えるか、条件収集ね。明日の夕方にまたこの家に来てちょうだい。それじゃあ今日は解散」


 真央が締めくくると、全員席を立って家を出た。

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