二番目(セカンド)の刹那
4月6日③《まだこの世界に来たばっかりで》
皐月さんが僕の進行方向に行ったので逆方向。つまり来た道を戻る方向に進んでいる。大声で呼ぶ以外に何か方法はないものか。通行人は多くはないけどいる。人目があると変に目立ちたくはない。この世界の人と二度と合わないから目立っても問題ない気もするが、だとしても突然「異世界から来た人いませんか?」などと大声で叫ぶ自分は嫌だ。
目が覚めた家を通り過ぎて歩き続ける。さっき二階から眺めた感じからすると、確かしばらくすると森のようになっていたはずだし、この先に人はいないような気がする。
だがその不安はすぐに解消された。僕の望まない形で。
「私、お金なんて持ってないです」
「そう言ってセンチちゃんいつも貸してくれてるだろ?早く出せよ」
カツアゲでもされているのか。人を探してはいたが、聞きたくはない会話が聞こえてきた。気付かれないように少し近づくと2人を直接見ることが出来た。パジャマみたいな服を着たショートヘアーの女の子と、学ランを着崩したいかにも不良という感じの男。助けてあげたい気持ちがないわけではないが、自分自身もこの世界に来たばかりで分からない事だらけという状況で、何の関係もない人を助けるほど僕は優しい人間ではない。面倒事には関わるべきじゃない。
「本当に持ってないんです。それにセンチって何…」
「はぁ?そう言って逃げようってのか?」
そもそも助けに入って助けられるとは限らない。この子は可愛そうだが、引き返そう。そう思って後ろを向いたとき──
「まだこの世界に来たばっかりで何も分からないんです!」
少女がそう言った。『この世界に来た』と言った。……こうなると、関わる理由ができてしまう。
「この世界に来たばっかりだぁ?何を言ってるんだお前は」
……男の方は今にもキレそうだし。関わりたくないけど、行くしかないよな。
「なぁちょっと、僕もその子に用があるんだ。邪魔だからどいてくれないかな」
「なんだ?アトじゃねぇか。喧嘩売ってんのか」
アト?何の後?そんなことより喧嘩売ってるわけじゃありませんけど、まぁそうなりますよね。
「そうじゃなくてさ。その子に用があるんだって言ってるだろ」
「こっちだって用があんだよ」
「じゃあさっさと済ませろよ」
「お前あんま調子に乗ってると……」
男がこっちに近づいてくる。やべーこれ殴られるかなぁ。などと考えている矢先──
「やめてーー!!!」
少女が叫ぶと同時に辺りに閃光が走る。眩しい。前がよく見えない。
その光はすぐに消えたが、まだ目がチカチカする。目の前の木々が若干焼けていることからも分かる。目の前に雷が落ちてきたと。そう、か。本当にこの子も僕と同じようにこの世界に来たのならば、能力が使えると考えるのが妥当だ。今のがこの子の能力か。
「2人ともあっち行ってよ。次は命中させるよ」
僕より先に能力を発動した少女に、助けるはずが助けられてしまった。僕に対しても「あっち行って」と言われているのが問題だが。
「分かったよ。俺が悪かったって……」
男は舌打ちして、逃げるようにこの場を去った。
「きみは?」
少女は僕も同じように逃げろと言わんばかりの視線で僕を睨んでくる。
「言っただろ僕は君に用があって…」
「私は用はないよ」
最初は弱々しい子に見えていたが睨まれると怖い。話を聞いてくれそうにないが、
「僕も異世界から来たんだが」
こう切り込めば……
「え……本当に?」
少女の視線が急に和らぐ。警戒が解けたようだ。
「本当だよ。だから君に話が……」
言いかけたところで──
「怖かった…」
少女が僕に抱きついてきた。何だ? 何でこうなった? 少女が泣きそうな瞳で僕を見る。『最初は弱々しい子に見えた』と思っていたが実際、強くはないのだろう。僕がこの子やさっきの男に対して怖がっていたのと同様、この子自身も怖かったはずだ。
少女は1歩、僕から離れて深呼吸する。
「私は凛。それで、用って何?」
彼女は笑顔でそう言った。
目が覚めた家を通り過ぎて歩き続ける。さっき二階から眺めた感じからすると、確かしばらくすると森のようになっていたはずだし、この先に人はいないような気がする。
だがその不安はすぐに解消された。僕の望まない形で。
「私、お金なんて持ってないです」
「そう言ってセンチちゃんいつも貸してくれてるだろ?早く出せよ」
カツアゲでもされているのか。人を探してはいたが、聞きたくはない会話が聞こえてきた。気付かれないように少し近づくと2人を直接見ることが出来た。パジャマみたいな服を着たショートヘアーの女の子と、学ランを着崩したいかにも不良という感じの男。助けてあげたい気持ちがないわけではないが、自分自身もこの世界に来たばかりで分からない事だらけという状況で、何の関係もない人を助けるほど僕は優しい人間ではない。面倒事には関わるべきじゃない。
「本当に持ってないんです。それにセンチって何…」
「はぁ?そう言って逃げようってのか?」
そもそも助けに入って助けられるとは限らない。この子は可愛そうだが、引き返そう。そう思って後ろを向いたとき──
「まだこの世界に来たばっかりで何も分からないんです!」
少女がそう言った。『この世界に来た』と言った。……こうなると、関わる理由ができてしまう。
「この世界に来たばっかりだぁ?何を言ってるんだお前は」
……男の方は今にもキレそうだし。関わりたくないけど、行くしかないよな。
「なぁちょっと、僕もその子に用があるんだ。邪魔だからどいてくれないかな」
「なんだ?アトじゃねぇか。喧嘩売ってんのか」
アト?何の後?そんなことより喧嘩売ってるわけじゃありませんけど、まぁそうなりますよね。
「そうじゃなくてさ。その子に用があるんだって言ってるだろ」
「こっちだって用があんだよ」
「じゃあさっさと済ませろよ」
「お前あんま調子に乗ってると……」
男がこっちに近づいてくる。やべーこれ殴られるかなぁ。などと考えている矢先──
「やめてーー!!!」
少女が叫ぶと同時に辺りに閃光が走る。眩しい。前がよく見えない。
その光はすぐに消えたが、まだ目がチカチカする。目の前の木々が若干焼けていることからも分かる。目の前に雷が落ちてきたと。そう、か。本当にこの子も僕と同じようにこの世界に来たのならば、能力が使えると考えるのが妥当だ。今のがこの子の能力か。
「2人ともあっち行ってよ。次は命中させるよ」
僕より先に能力を発動した少女に、助けるはずが助けられてしまった。僕に対しても「あっち行って」と言われているのが問題だが。
「分かったよ。俺が悪かったって……」
男は舌打ちして、逃げるようにこの場を去った。
「きみは?」
少女は僕も同じように逃げろと言わんばかりの視線で僕を睨んでくる。
「言っただろ僕は君に用があって…」
「私は用はないよ」
最初は弱々しい子に見えていたが睨まれると怖い。話を聞いてくれそうにないが、
「僕も異世界から来たんだが」
こう切り込めば……
「え……本当に?」
少女の視線が急に和らぐ。警戒が解けたようだ。
「本当だよ。だから君に話が……」
言いかけたところで──
「怖かった…」
少女が僕に抱きついてきた。何だ? 何でこうなった? 少女が泣きそうな瞳で僕を見る。『最初は弱々しい子に見えた』と思っていたが実際、強くはないのだろう。僕がこの子やさっきの男に対して怖がっていたのと同様、この子自身も怖かったはずだ。
少女は1歩、僕から離れて深呼吸する。
「私は凛。それで、用って何?」
彼女は笑顔でそう言った。
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