二番目(セカンド)の刹那

Lot

4月6日①《今朝は突然、失礼しました》

「……な……つ…さ…」


 何か聞こえる。


「さざ…みせつ…さ…」


 僕はさっき寝たはずだ。


「小波刹那様」


 ならばこれは僕の見ている夢か? 周りに何も見えないから夢を“見ている”という表現が正しいかは分からないが。


「小波刹那様、聞こえていますね?」


 うっすら人影が見える。白い髪に白い服に白い肌。真っ白な少女が。


「聞こえてるよ」


「返事をされてもこちらには聞こえませんが」


 聞こえないのかよ。お前は誰なんだ。と聞いても聞こえないようだし、ここは大人しくしているしかないか。


「私は神凪かんなぎれい。今朝は突然、失礼しました」


 今朝? 朝の子は茶髪だったはずだが、目の前にいるの少女は明らかに白髪なので気付かなかったが、そう言われると同じ顔をしている気はする。ぼんやりしていた人影がハッキリ見えてくる。……やっぱりこの顔、見覚えがあるような気がするんだがな。


 それに、『神凪』か。母の旧姓と同じだが、何か関係があるのか?親戚の人だったりするのだろうか。


「さて……朝に言った通り、これから別の世界に言ってもらいます」


 これが単に夢なら僕が今朝の事を意識しているから見た夢ということになる。それなら別に何も考える必要は無い。目が覚めるまでただ、退屈だからこいつの話を聞いているくらいに思えばいいだろう。


「他の人であれば信じてもらうのに時間がかかりますが、貴方であればも、別の世界で過ごしていたと言えば信じてもらえるのではないでしょうか?」


 3年前……? 何の事だ?


「さて……もうあまり時間がないので簡潔にまとめます。1つ目。貴方にはその世界を救ってもらいます。2つ目。別の世界に送った人は貴方を含めて5人です。3つ目。貴方の能力は消去デリートです。以上です」


 …………もう1回言ってほしい。とんでもないことを連続で言われたような気がして思考が追いついてない。ええと、僕の他にも別の世界に送り込まれた人、要するに仲間がいるというのは比較的分かりやすいが、残りの2つが問題だ。『世界を救え』と『能力は消去デリート』この2つ。世界を救えっていうのは、たぶんそれ以上の意味はないんだろうな。異世界転移して勇者にでもなれと言うのかこいつは。だが能力は消去デリートってのは急に言われても意味が分からない。


「最後にこの能力についての説明です」


 あ、良かった。説明があった。


「ある程度近くにある視認できる物を消すことができる。ただしこの時、消した物と同名の物が世界全体から消える」


 異世界物によくあるチート能力よりも影響力は強力そうだが、強すぎて使いにくい。どう使うんだこれ。


「説明はこれで全てです。それでは……」


 目の前の少女の影が消えていくと、意識が朦朧としてきた。


 ちょっと待ってくれ、まだ意味が分からな……

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