生産職を極めた勇者が帰還してイージーモードで楽しみます

ヨナ

ネットニュース



契約から1週間、俺はホテルの部屋でスマホの使い方を覚えていた。俺がこの世界にいた20年前はスマホなんてものはなかった。当時は10代半ばだったし、時代的にもガラケー?とか呼ばれる携帯すら発売されてなかった。それが今では画面を触れて操作できるものまで出来ているとは人類の進歩とはすごいものだ。

向こうの世界とこっちの世界、どっちが優れているかは一概には言えない。そもそも科学と魔法では発展の仕方が違うのだ。
一例を挙げるならば移動手段。こっちの世界では自動車、電車、飛行機など誰でも使うことができる便利なものがある。向こうの世界での移動手段といえば馬車だ。便利とは言い難い。だがそれは一般人の話だ。上流階級の奴は魔法を使って一瞬で転移したりする。

世界の違いを言い表すと、万人に使えるように発展した科学の世界と才能依存の魔法の世界といったところだろう。
文明レベルは 向こうの世界の上流階級>こっちの世界>向こうの世界の一般人 となる。

でも情報伝達技術はこっちの世界の方が格段に上だ。向こうにはテレビもラジオもなかったし、携帯もなかったから遠距離の人と連絡を取るのは時間がかかった。魔導通信もあったけどそれはこっちで言う固定電話みたいなものだ。たった20年でよくもまあこんなに進歩したものだと感心する。



そんなことを考えながら俺はやっと使いこなせるようになってきたインターネットを使ってニュースを見ていた。

『歌姫復帰!!』

どのニュースでもトップの内容はこれだ。瀬戸愛佳の人気の高さが伺えるというものだ。ニュースにはこう書いてあった。

『先月、同事務所のアイドルに襲われ入院。後から来たマネージャーが現場に遭遇し体を張って庇った。直ちに病院に搬送されるも左眼の視力を失ってしまった』

まぁ、誤魔化すのならこんなところだろうな。ブログとか掲示板とかで襲撃犯と事務所への非難轟々で凄いことになってる。
瀬戸愛佳自身は既にテレビに復帰して毎日のようにテレビに出ている。まだ隻眼にはなれないみたいでちょっとフラついていて共演者に心配されていた。しかも最近ちょくちょく来るようになった愛佳本人からのメールによると心配している共演者の7割が演技らしい。本心ではザマーミロと思っているのが殆どなんだそうだ。
芸能界は真っ黒だ。


他のニュースといえば政治家の不正疑惑だとかスポーツ業界の八百長だとかそんな記事もあった。

そういえば俺がこっちの世界に帰って来る半年ほど前に震災なんてのもあったらしい。万を超える死者行方不明者が出て現在も復興活動が続いているとか。俺が手を出せば2、3日で片付くけどそういうことはやらない。こういうのは大変でも自分たちでやらなければならないのだ。


「うん?あー」
震災についての記事を読み進めていくと震災の支援金の横領があったと書いてあった。
「全く、これだから権力者は」
俺はウンザリとした声を出す。

「相変わらずマスターは権力者が嫌いですね。国そのものが嫌いなのですか?」
「ん?権力者がみんな嫌いってわけじゃねえよ。ちゃんとしたやつもいるしな。
ってか国が嫌いってなんだよ」
「マスターは向こうの世界での国を3つも滅ぼしたではないですか」
「俺が滅ぼしたのは2つだ。そのうち1つはしょうがないことだったし」

俺は向こうの世界で2つ国を滅ぼした。

1つは魔国、サタステア。
魔王が統治する魔族の国だ。国王である魔王とその幹部たちを殺したので魔族自体は滅んでいないが国は滅んだ。

もう1つは大ハーバルト帝国。
人間の国の中でも最大の軍事国家だ。これは滅ぼそうと思って滅ぼした。悔いはない。

ミシェが言っていたもう1つはサンチェロ王国のことだろう。その国の王が暴君で貴族も腐敗しきっていて秘密裏にできた反乱軍が反乱を起こそうとしていた時に俺が偶然その国に行った。なんやかんやあって巻き込まれて少し反乱を手伝ったのだ。


魔国は魔王を倒したかっただけだし、サンチェロ王国は手伝っただけなので俺のせいではない。
実際に滅ぼしたのは帝国だけなのだ。

それにどれだけ腐敗した国でも正義のためなんて理由で俺が戦うことはない。勇者として20年過ごして自分の生き方は既に決めてある。力を振るうならば個人的な理由で振るう。誰かにお願いされたからなんて力を振るう理由を他人に求めない。
強い力を持っているとこれは意外と重要なことなのだ。



それにしても帝国か懐かしいなぁ。ある意味では帝国のおかげで愛するルシアと会えたとも言えるもんなぁ。



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