100回目の勇者人生〜俺の頭の中ではこんなにも《ゆるい転生物語》が繰り広げられている。

しみずん

再会話 101回目の勇者人生

 優しい風が身体を撫で、彩られた紅葉が森を染め上げ、この地方独特の草の甘い香りが心を落ち着かせる。

「帰って来たんだな」

 101回目となる、この世界は今までと何一つ変わる事なく、だが全てがまるで変わって見えた。

 山が、森が、草木が、大地が、虫のさざめきが、それら全てが、俺の知らない側面を、物語を持っている。

「さて。今回はどういう旅にしようかな?」

《プラン1》お嬢ちゃんと二人っきりで濃厚でラブラブな旅にする。(俺はこんなにも好きなんだけれど、お嬢ちゃんは俺の事を好きになってくれるかな? 無理か……)

《プラン2》今回は村長も武器に魅了させて3対1で責められて楽しむ。ゾクゾクして面白そうだ。(なんだろう? 友達が……『お気に入り』が減った気がした……)

 んー。どれも楽しそうだけれど……全部やってちゃキリがないな。じゃあやっぱり……。

 俺はタイージュの村を目指して走り出した。



《モンスターが現れた! まだこちらに気付いて――》

――蹴った!

 顔面を蹴られたスライムは『ぜよ』という断末魔の叫びをあげた。

「ぜよ?」
        
「……じゃから、おんしゃぁぁぁ、何でいつもワシを蹴るんじゃあぁぁぁぁぁ…………」

 奇妙な声と同時にスライムの身体が青空に吸い込まれるように消えていく……。

「?」

 喋った? スライムが? 

 まさかっ!? さっきの奴が噂に名高い《仲間になりたがるスライム!?》と、思ったけど。漫画じゃあるまいし……馬鹿な妄想は止めた。



 暫く歩いて。


「さてと……」

 入念に準備体操をしてイメージトレーニングを数回済ませ、呼吸を整えてから俺はスタートダッシュの姿勢をとる。

 俺の勇者人生、最大最高の勝負の時。今回こそは……勝つ!

 最大級の緊張感に興奮しつつカウントダウンを始める。

「3……」

(村長……早く会いたい。会って腹一杯笑わせて欲しい)

「2……」

(少年……早く会いたい。会って色んな事を教えてあげたい)

「1……」

(お嬢ちゃん……早く会いたい。会って俺達をまとめて欲しい)

「0!」

 俺は大地を力いっぱい蹴って土煙を巻き上げながら全力疾走で村の中に入った!




「勝負だぁぁぁ! 村長ぉぉぉ!」


「おぉぉぉ待ちくださぁぁぁい、勇者どのぉぉぉ!」





 俺の記念すべき101回目の勇者人生はこうして始まった!


 勇者は今日も全力疾走する。






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