100回目の勇者人生〜俺の頭の中ではこんなにも《ゆるい転生物語》が繰り広げられている。

しみずん

最終話 村長のいる世界(前編)

 婆さんに別れを告げて、目を開けると勇者殿とお嬢さんと少年が泣いておった。みんな目が真っ赤になってしまって……どれほど泣かせてしまったんじゃろう、すまん事をしたなあ。早く笑わせてやらんといかんなと思ったが、うまく喋れんし、動けんかったのでワシは婆さんと同じ笑顔でみんなに応える。

「村長! 良かった……本当に良かった……村長……俺、村長の事守るって言ったのに……守れなくてごめんなさい……」

「お……おやおや。勇者殿程の男が泣くだなんて、おかしいぞいしっかりしなされ。冒険に出た時から命の危険は常にある、当たり前じゃ。それにあれはワシの判断で行動したまでじゃ。勇者殿に責任はないよ、だからもう泣かないでおくれ」

「村長様! よくぞご無事で……」

「お嬢さん……すまなかったね……一番辛い役目をさせてしまって。仲間を死なせる為に魔王のもとに送り込むなんて……辛かったじゃろう? ごめんな」

「そんなっ! 村長様に比べたら私なんか……」

「おじいちゃん! 良かった、良かった、良かった、良かった、良かった、良かった、良かった、良かったあああ!」

「心配かけたな、少年よ……」

 随分と身体が動くようになったので、起き上がってみんなに御礼を済ませた。四人で手を繋ぎ円になって語る。

 自爆後の話を聞いてみると、三人で大泣きしながら叫んどったら天井の穴からワシが光の球体に包まれてゆっくりと降りてきたらしい。その際によく見ると婆さんの形見の守りのクリスタルが眩い青の光を放っていたと。そこで勇者殿が『おい! 見ろ! そ……村長だ! 村長だ!』と大騒ぎしておったとか。

 そしてみんなで、ワシを受け止めて床に寝せた、その瞬間クリスタルが粉々に砕け散ったと。それからみんなでワシを大声で呼んどったら、ワシの目から涙が零れ落ち目を覚ましたと。

「そうじゃったのか……婆さんが守ってくれたのかのう」

「奇跡が起きたんだ……」

「まさに奇跡ですね……」

「おじいちゃんは、あの後どうなったの?」

 少年がのぞき込むようにワシに問う。

「ワシは……音のない真っ白な世界にいる夢を見ていた。そこで、死んだ婆さんに逢ったんじゃ」

「村長、奥さんに逢ったのか!?」

「村長様の奥様に?」

「どんな話をしたの!? 教えてよ!」

 んん。本当は秘密にしておきたいんじゃが……家族に隠し事は出来んしの、仕方ない。

 じゃあちょっとだけ。

「――叱られた」

 照れながら婆さんと同じ笑顔で笑うワシにつられて、みんなも笑い出した。うんうん、やっと皆を笑顔にする事が出来た、やはりワシ等はこうでなくてはのう。

 

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