100回目の勇者人生〜俺の頭の中ではこんなにも《ゆるい転生物語》が繰り広げられている。

しみずん

40話 どうしても色が知りたければ……

 9日間に及ぶ少年の自爆ロック大爆発12連鎖、記録更新チャレンジを終えて今日は10日目の朝である。

 目を覚ますとベッド(フレームだけの粗末な木材)にはお嬢ちゃんが腰掛けていて髪を結っている最中だった。朝日がお嬢ちゃんの横顔を照らし眩しくて目を細める、まるで生まれたてのお嬢ちゃんを見ているようで心が洗われた。

 最高の朝を迎える事が出来た。

「おはよう、お嬢ちゃん」

「おはようございます、勇者様」

 挨拶を交わして視線を左に向けると少年はまだ寝ていた。でも、やっぱり様子が変だった。御自慢の愛刀スターダストなんとかが左手の袖から入って、反対側の右手の袖から剣先が少し見えているという、まるで洗濯したシャツを干している時のような、何とも不思議な寝相になっていた。当然、寝返りがうてずに足だけが右へ左へ行ったり来たりしていた。

 それを見て二人で笑っていたが、俺は村長がいない事に気が付く。笑いながら外に出ると村長は朝の体操をやってる最中で大きく息を吸い込んでから吐き出し、ゆっくりとした動作で身体の状態を一つ一つ丁寧に確認しているようだった。

「おはよう村長!」

 俺の声に反応し体操の動きのままゆっくりと振り返り、

「はて? お主は誰じゃ?」

「何でだよ、朝から記憶喪失? だとしたら寝てる間に何があったんだよ……」

「ホッホッホッ! ワシは今日も絶好調のようじゃ! おはよう勇者殿」

 うちのパーティーは定期的にボケないとダメなんだろうか? まあ楽しいからいいけどさ。

 などと言っていると、支度を終えたお嬢ちゃんとまだ9割寝ている少年が小屋から出てきて四人が揃った。

「今日でチャレンジも10日目だ、いつまでもやってちゃキリがない。だから今日で終わりにしよう、記録更新が出来ても、出来なくても恨みっこなしだ」

「そうですね。私達の目的はチャレンジを成功させる事ではない」

「じゃのう。いつまでもチャレンジしとる場合でもないしの」

「ZZZZZ……」

 君は早く起きなさい。

 俺達は今日をチャレンジ最終日と決めて、朝食をそこそこに済ませた。

 夕陽に照らされ死の荒野一面が朱一色に染まる。

「だああ! くそっ! ダメだ、時間切れか!」
 
「悔しいのう」

「残念ですが……」

「ZZZZ……」

 まだ寝てたの!?

 気持ち悪い操り人形状態の少年が石を持ち上げたその瞬間――

「っ! 僕! それは違う! それは石じゃない!」

 突如、大声で叫んだお嬢ちゃんの指摘したもの。つまり少年が手にしていたものは――小さな自爆ロックだった。

 一瞬で身体が凍りつき、時間までもが凍りつく。スローモーションで進み出した世界の中で俺は必死に叫ぶ『あっちに投げろ!』と。おそらく皆もスローモーションになってる筈だから『あぁぁっちいぃぃにぃぃなぁぁげぇぇろぉぉ!』と聞こえていたと思うが、ありえない事が起こった。

――――少年が自爆ロックを俺にパスしてきた!

 だから俺は言った『こぉぉっちぃぃじゃゃなぁぁいぃぃ! あぁぁっちぃぃ!』

 こちらに投げられた事に驚いて目を見開き、自爆ロックを見る事しか出来なかった。自爆ロックは足元へと落ちていって、その衝撃で自爆ロックは言う『ボカーナ』と。

 俺の足元で爆発した自爆ロックは爆風を起こし、土煙を巻き上げた、自爆ロックの起こした熱風に、衝撃波に吹き飛びそうになる瞬間、土煙の切れ間から見えたものは『ああ、爆弾投げられて良かった!』と思える光景だった。荒れ狂う爆風がなんと、奇跡的にもお嬢ちゃんのスカートをめくり上げていたのだ。

――――っ!

 俺はお嬢ちゃんのパンツをしっかりと目に、網膜に、脳髄に、この際DNAに、しっかりと焼き付けた。

「お嬢ちゃんのパンツの色はぁぁぁ!」

 言いながら、俺は遥か遠くの岩山へ吹き飛ばされた。

 











































 眩しいくらいの、純白だった。
 

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