100回目の勇者人生〜俺の頭の中ではこんなにも《ゆるい転生物語》が繰り広げられている。

しみずん

38話 目指せ! 大記録!

 お嬢ちゃんが先導してくれたお陰で、迷う事なく森を抜ける事が出来た。

 森を抜けた先に広がる光景は、ゴツゴツした岩がたくさん転がった平原だった。平原の所々に小高い山があって、やはり山にも無数の岩が転がっている。草木もあまり生えておらず、上空にはカラスが多く飛び回り、空腹を抱えて獲物がいないか目をギラつかせていた。

 ここは死の荒野と呼ばれる、誰も近寄らない危険な場所。

「勇者様、やはり回り道をした方が……」

「いいの、いいの。ここでやる事あるから」

「やる事? 何をやる気なの? 兄貴」

「また新しいお遊びかのう?」

「はいっ! 皆、集合ー!」

 四人で円を作って、作戦会議を開始する。

「えー。皆さんももう分かってると思いますが、今から新しい修行に入ります! 皆さんのLvもかなり上がって来たので、今までの修行よりも大変危険な修行に取り組みます。油断すると死にますので、各自で十分注意するように」

「それで、今回は何をホッホッホッ! 叩くのホッホッホッ! かな?」

「村長! 笑うタイミングがおかしすぎる! 気を引き締めたまえ! そして、今回は叩かない」

「ああ、すまんすまん。つい、ワクワクしてのう……笑いが込み上げてしまうんホッホッホッ! じゃ」

「なになに? 早く教えてよ!」

「今回は……」

「「「今回は?」」」

「投げる!」

「「「投げる!?」」」

「そう。とあるモンスターに対して、そこらへんの石を投げ付ける。よく狙わないと当たらないからな? 難しいぞ?」

「ん? 何でそれが死ぬほど危険なの?」

「離れた所から投げるんじゃろ? じゃったら安全ではないのかのう……?」

「逆上したモンスターが凄い勢いで襲ってきたりして……」

「違う、違う。そのモンスターはな、石を当てるとかの強めの衝撃を与えると《ボカーナ》という魔法を使って自爆するんだ、だから普通に倒そうとすると一撃で倒さないと危険だから、皆は嫌がって戦わないんだけど。俺みたいな性格悪い勇者になると、モンスターの特性を逆手に取るんだよ……」

「なるほどのう! 爆発の被害が届かない所からの遠距離攻撃で倒して、というか自爆させてしまおうと!」

「よくもそんな卑怯な手を思い付きますね……。いつも何を考えて旅をされてるんですか……」

「えっ? いや……暇だからどうにかして楽しめないかなーっと……」

「暇つぶしでモンスターに石を投げる兄貴かあ……想像すると何か可哀想だな」

「とっ、とにかく! モンスターなんだけど……ああ、あいつだ。あそこに転がってる奴」

「どれどれ? 岩しかないよ?」

「よーく見ろ、見た目は岩そっくりだけど岩肌が若干動くから、あれが今回のターゲット自爆ロックだ」

「わからんのう、何匹おる?」

「三匹だ」

「そんなにか!? 実は嘘じゃろ?」

「じゃあ、お手本。ほいっと」

 俺はモンスターに向けて石を投げた、石は見事に命中しそして、

「ボカーナ」

――大爆発を巻き起こした。

《戦闘に勝利した!》

「こんなに味気ない勝利は初めてだわ」 

「でも本当にモンスターいたんだね、嘘だと思ってたよ僕」

「何で嘘をつく必要があるんだよっ! それより村長を見ろっ!」

「難しいのう……なかなか当たらんわい。ホッ、ホッ、ホッ! あっ――」

「ボカーナ」

――大爆発を巻き起こした。

《戦闘に勝利した!》

「当たった、当たった、当たった! やったぞい!」

「「…………」」

 少年とお嬢ちゃんも村長に触発されたのか、無心で石を投げまくった。

《戦闘に勝利した!》
《戦闘に勝利した!》
《戦闘に勝利した!》
《戦闘に勝利した!》
《戦闘に勝利した!》
《戦闘に勝利した!》
《戦闘に勝利した!》
………………………………………。

 少年が爆発させた自爆ロックの巻き起こした爆風に、別の自爆ロックが巻き込まれて自爆し、また別の自爆ロックが巻き込まれて……なんと12回という大記録を達成した。

 俺と村長はムキになって、石を投げまくったが記録更新はなかなか思い通りにはいかなかった。

「何でだよっ!? 俺が負ける訳にはいかねえだろっ! 続けっ!    連鎖だ、連鎖!」

「何でじゃっ!? 年齢的な奴かっ!? 高齢者は記録が伸びんようになっとるんか!? くそう!」

「2人共、泣くほど悔しいんですね……」




 俺達は少年の記録を塗り替える為、躍起になって石を投げ続けて今日で9日目だが、未だ記録更新は叶っていない。

 もはや修行というより、何かしらのチャレンジに取り組んでいるようで楽しくて仕方なかった。

 9日間目の陽が沈んでいく。

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