100回目の勇者人生〜俺の頭の中ではこんなにも《ゆるい転生物語》が繰り広げられている。

しみずん

35話 パシられ勇者

「兄貴! ゴブリン全然出てこなくなったけど絶滅したんじゃない?」

「バカを言うな。そんな訳ないだろうが」

「でも……お昼休憩してから随分と時間が経つけど、まだ一匹も見かけてませんよ?」

「ふむ。そうじゃのう、確かにワシ一人の時と違って戦闘効率が格段に増しておるじゃろうし、絶滅まではせんでも絶滅危惧種くらいにはなったのかものう」

「やばくない? 絶滅させちゃったら……なんかほら、生態系がどうとかさ、言うじゃん? 僕はそこまで詳しい事はわからないけど……」

「そうね、生態系のバランスが乱れてその結果、美しい草原が砂漠と化した――とかよく聞くわよね。ここの美しい大自然もその内……」

「それは困るぞい! ワシの大切な故郷の大自然じゃぞ! 誰じゃ、ゴブリン退治など始めた奴は!?」

 皆の視線が集まり、俺の返答を待つように沈黙が続く。

「えっ……俺?」

「ワシを唆したのは勇者殿じゃ」

「僕等をここに連れてきたのも兄貴だよ」

「そうね」

「や……だってほらっ! 絶滅とかないじゃん! モンスターは歩いてれば永遠に出てくるもんだろうっ!?」

「でも普通に考えればモンスターだってただの凶暴な生物なんだから、繁殖出来なければそれは絶滅するでしょうね……」

「ええ!? 何で皆して睨むの? 卑怯じゃんそれ……皆でやったじゃん……連帯責任じゃん……」

「魔王ほど凶暴で凶悪ではないけれど、やってる事は地味に魔王と同じよね」

「世界を壊そうとしてるっ!」

「とんでもない勇者じゃ!」

「ちょっと、ちょっと! 今から皆で買い物行こうって言ってたのに、雰囲気悪いじゃん……仲良くやろうよ……」

 皆が、村長が冷たい……。

「買い物はお願いするわ」

「勇者殿だけで行きなされ」

「ついでにエロ本も買ってきて!」

「ようし、分かったぞ。皆して面倒くさいんだな!? 面倒だから買い出しを俺に押し付けるつもりだな!? ようは、パシリだな!? いいよ。行ってやるよ! そこでゆっくり待ってればいいさ! 俺の帰りを待ってくれてればいいさ! 俺が熟読した後のエロ本を読めばいいさ!」

「「「行ってらっしゃーい!」」」

 俺は最初に訪れた村、ドーグさんのいる《サイショ》の村へ向かい走り出した。

 すぐ隣の村なので一時間も掛からずに到着し、すぐさまドーグさんの家に向かったが残念ながらドーグさんは不在だった。定期購入を約束していたので、この機会に薬草類を大量に購入したいと考えていたけど、どこに行ってるんだろう?
 
 久し振りに会いたいのに。

 ドーグさんの家の周りをうろついていると、隣の家のお婆さんが話し掛けてきた。

「旅の御方かね? そんな空き家に何のようじゃ?」

「あの……ドーグさんに会いに来たんですけれど、ご不在のようで……」

「あん? ドーグ? 誰じゃそれは?」

「あの……ここに住んでて、俺と同じ歳ぐらいで、この村の道具屋で、天然な人の……」

「……? ここはもう20年くらい空き家じゃよ? この村に道具屋もないわい」

「えっ……」

 俺はお婆さんの言葉を聞き急いで辺りを見渡す。懐かしい平凡な村の風景が広がっている。だが、やはりここはドーグさんに助けられた村に違いない。もう一度家の中を見ると俺が横たわったベッドがありそこだけ埃の量が少ない所を見ると、やはり誰かがこのベッドを使ったのだろう。それはやはり俺の筈なんだが……。

 記憶が混同しているのだろうか? 毒状態になって、意識が朦朧としていたから? 運んでくれた村人を頭の中で勝手に作り替えた? ドーグさんは俺が作り出した架空の人物? 

 やべ……訳わかんねえ。

「あっ、そうじゃ! お主の事かの?」

「えっ?」

「いかん、いかん。すっかり忘れておったわい……ちょっと待っとれ」

 お婆さんはスタスタと自分の家に入って、そして。

「ほれ! これじゃ! これを預かっておったんじゃ!」

「これは!?」

 それはかなり大きめな袋に入れられた大量の薬草と毒消し草だった。

「暫くしたら、自分と同じ歳ぐらいの若者がこの村に訪れるから、その時これを渡してくれと言われておったのじゃ! はて? その若者の名前がドーグとか言ったような……。いや、この道具を……。私はドーグです……? 道具はどこですか……? 私は道具ですか……? いや、あなたがドーグですか……? 道具って何ですか……? 土偶ですか……? ドールですか……?」

「待てっ! お婆さん! ドーグ&道具ループに入るな! 帰ってこい!」

「爺さんや、晩御飯は道具で炊いたドーグですよ」

「なに食べさせる気だあああ!?」

「ドームで……。ああいかん、いかん。また飛んでしもうた……ええっと……とにかく、お主にと預かっておったのじゃ。それじゃあの!」

「どこ行ったんだろう。こんなにたくさんいいのかな……」

 ついに土偶……ドーグさんには会えなかったけれど、大量の薬草類を手に入れる事が出来た。

「また今度、時間があったら探しに来てみよう」

 そして、俺は大量の薬草類を持って足早に皆の所へと帰った。

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