100回目の勇者人生〜俺の頭の中ではこんなにも《ゆるい転生物語》が繰り広げられている。

しみずん

33話 ルビは振ったもの勝ち……らしい。

「大変お待たせしました、おおかた理解が出来ました」

「ふむ。考えがまとまったようじゃのう、勇者殿?」

「ええ。まだ細かい謎はありますが、そこは別に謎のままでも構いません。全く謎ではない事は、俺が村長様大好きって事です」

「ホッホッホッ! 照れるのう、しかし勇者殿よ。いつまでその喋り方なのじゃ? どうもいつもの調子がでんわい」

「え? ああ、かしこまったままでしたね……。余りに村長様がぶっ飛んでたんで、俺の頭もぶっ飛んでました」

「ぶっ飛んだり、全力疾走したり、本当にエネルギッシュな勇者殿じゃなあ!」

「あははは……。じゃあ改めまして、勇猛ただいま戻りました! お待たせしてすいません村長様……村長!」

「ホッホッホッ! 改めて見ると勇者殿も立派になったのう。熟練の勇者って感じじゃのう」

「あっ! これ、これを買う為に今回、別行動してたんだ。忘れてた、はい。村長の新しい装備品!」

「おー! 何かキラキラとして、ヒラヒラとして、ビッカビッカでありながら、所々スケスケで、チカチカもしとるし、ギラギラでバラバラな感じが何かドキドキする代物じゃのう!」

 村長のそういう所、好き。

「上級者用の装備品だね、守りはガッチガチに固めてあるけど、油断はしないでね村長。あっちの二人にも同等の装備品を持たせてあるけど、俺達でフォローしながら戦闘を進めよう。命大事に! だ」

「ホッホッホッ! そうじゃな。ならば、まずは、お二人のレベル上げからじゃな?」

「うんっ」

 ここで少年とお嬢ちゃんが近寄ってきて村長の上級者用の装備品を見て。

「なんか僕のよりかっこいい!」

「私のより細部の作りが精巧ね。それにデザインも村長様のローブの方が私好みだわ」

「ホッホッホッ! あんまりまじまじとみられると照れるのう。どうじゃ勇者殿、似合っとるか?」

 村長は二人から視線を外し、照れくさそうに俺を見る。

「「このお! くそお!」」

 またも二人が村長の後頭部めがけて武器を振り下ろす。

「「うわっ!? きゃっ!?」」

 当たり前だが光のヴェールに弾かれて尻餅を付く。背後をとったら攻撃するクセ直せよ……絵面的にかなり悪どいぞ?

「ふふふ……ワシ賢者っぽい?」

「ああ、かなり。見た事ないけれどガウス様って、たぶんこんな感じなんだろうなって思っちゃう」

「ホッホッホッ! 大賢者、村長!?」

「うん」

 よほど気に入ってくれたんだろうか、嬉しそうだ。

「これで二度目のプレゼントじゃが、やはり何度貰っても嬉しいもんじゃなあ。なんか若返った気分じゃわい。本当にありがとうよ、勇者殿」

「プレゼントだなんてそんな……ただ今後の為に装備品を買ってきただけだよっ」

「……ワシの為に……」

 そう言った村長の視線がやけに恥ずかしくって、俺の視線は地面に釘付けになる。だから無理矢理に話を逸らす。

「……そっ、そうだ。ステータスの能力値の方を見てみようか?」

「ふむ? 能力値とは?」

「あっ! 僕、知ってる! 力とか守りの値の事だよね?」

「そうそう。いつも見てるステータスの続きみたいなもんだ、個人の強さが分かりやすい特徴がある」

「個人の能力の何が秀でていて、何の職業に向いているか分かりやすい値という訳ね?」

 さすがお嬢ちゃん、目の付け所が良い。

「そうだね、ちなみに俺の場合は……ステータス!」

――――――――――

 勇猛

 Lv99

 力 999 (499・500)

 守 258 (255・3)

 早 235 (233・2)

 魔 111 (111・0)

 ファイヤー Lv2
 キュア   Lv2
 スパーク  Lv2

――――――――――

「最初の《力999》が合計の戦闘能力値で、カッコ内にある499が個人の能力値で、500が装備品による補正値だね。最後の方は魔法の一覧で、Lvは強度っていうのかな……? Lvが高くなるほど高威力の上級魔法って事。俺は勇者だから初歩的な魔法しか使えないけどね」

「ふうん……さすが勇者だけあって、かなりの力馬鹿力以外能無しね」

「う……事実だから言い返せない。だが、そのルビに対しては反論するぞ! とんでもないルビの振り方を止めろ!」

「おお? なんじゃ? なんじゃ?」

 村長は訳が分からずオロオロとしている。

「次! 次、僕! ステータス!」

――――――――――
 
 少年

    Lv3

 力 462 (12・450)

 守 409 (9・400)

 早 606 (201・405)
  
 魔 9   (1・8)

 特技 ――

――――――――――

「うわ……個人の能力値低っ! 普通にショックだよ、早さの能力は高いみたいだけど買って貰った装備品がないと僕ダメダメだね」

「仕方ないだろう、この間まで普通に街の少年だったんだから……今日からは村長もいてくれるし、今からが本当の修行の始まりだよ」

「そうね。私達も夢を叶える村長様のバリヤを破る為にも早く強くならなきゃね、一緒に頑張りましょうね? 素早さ馬鹿?」

「なに企んでんだあああ!? 村長暗殺!? 自分の夢を思い出せ! お父さんの為に酒場作るんだろっ!? 少年も酷い言われようだぞ!?」

「なによ。ルビなんて振ったもの勝ちでしょう? どう読ませるかは、こちらしだい。でも……そうね確かに……気を付けないとね」

 そう言って意味深に笑うお嬢ちゃん、何かの伏線だろうか。

 仮説を立ててみる。

 実は武器に封じられていた魔王が、お嬢ちゃんの精神を乗っ取り……俺達のパーティーを全滅させようと狙っている的な話だろうか? だとしたらお嬢ちゃんには最大級の警戒しておかないといけないな……。状況も状況だし。

「それはないわね、あくまでも私は私で私のままよ」

――っ! 心を読まれた!?

 怖い、怖い、怖い、怖いって!

 まったく……最近お嬢ちゃんのキャラが崩壊している気がするんだが……。

「違うわね。私は私を取り戻しつつあるだけ、元に戻っているだけよ」

「…………」

 お嬢ちゃんが実は魔王でした説は、本人によって否定されたので(俺も流石にそれは無いかなと思っていた)別の可能性を探ってみたが他の仮説が立たないので――

「はい終了……」

 俺は糸口さえも掴めないまま、お嬢ちゃんに強制終了された。

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