100回目の勇者人生〜俺の頭の中ではこんなにも《ゆるい転生物語》が繰り広げられている。
23話 いやいやいやっ! 供え方っ!
「ご注文は以上でよろしいでしょうか?」
「ええ。お願いします」
「楽しみだな! 早く食べたい!」
どうやら主人公の死亡中にも関わらず、彼等は本当にカフェに来たらしい。そしてティータイムと洒落込むらしい。
かなりお洒落な感じのテラス席で若い男女が憩いの一時を過ごしている、男女は店の雰囲気にも溶け込んでいてなんの違和感も無いのだが、彼等の足下に転がる棺桶だけが異質で生々しいほどの存在感を放ち、辺りの空気を凍り付かせ和やかな雰囲気をぶち壊していた。
(え……ちょっ……これ、勘弁して貰えません? なんの罰ゲームですかこれ……皆見てるんだけど……白い目通り越して青い目になってるんだけど。ほらっ! 店員さんこっち指さしてるって! お願い、教会行こう!? ねっ? お願い!)
俺の魂の叫びも虚しくスルーされ、彼等は優雅にティータイムを過ごしていた。
「美味しい! 噂通りの味ね、これは流行る筈だわ。貴方はどう? ヒステリックロッド、美味しい? そう。よかったわね」
「ほらなっ!? フルーツパフェにして正解だったろ? おいおい! 僕の分も残しておいてくれよ!? スターダストジャスティス!」
(うわあうわあ……お前ら武器がベッタベタじゃねえか! 何でクリーム塗り付けてんの!? 食べさせてるつもり!? 武器はスイーツとか食べないからね……)
おいおい。それ伝説の武器クラスの凄い代物なんだぜ? 大事にしてくれよ……。
いい感じに武器がデコレーションされた所でお腹一杯になったのか二人の手が止まり、まったりと話し出す。
「いやあ! 食べた食べた! 本当に美味しかった。しかし注文しすぎて余ってしまったな、兄貴がいてくれたら全部食べてくれただろうに……一緒に来たかったなあ……フルーツパフェ食べて欲しかったなあ……」
(一緒に来てるよ。君達の足元見てみ? 可哀想な事になってるから。兄貴可哀想だから)
「本当ね……。勇者様が居てくれたらもっと楽しかったでしょうね、あの人は本当に面白い人だから。なんで……なんで死んでしまったの……」
(半分は君のせいだからね? ちゃんと自覚してね?)
「そうだ! 残り物で悪いけど、このケーキとかカフェオレを兄貴にお供えしようよ!」
「いい考えね、僕は本当に優しい子なのね。それじゃあ早速、お供えしましょう」
(お前ら……)
二人の会話に目頭が熱くなるのを感じる。今の俺に目頭があるのかは知らないが。
そこで彼等の奇行は始まった。彼等は食べ残しのケーキを皿の上からフォークでスライドさせて、あろう事か俺の棺桶の上に落としたのだ。飲み物に関してはカップを傾け棺桶に撒き散らしてしまう始末で、俺の棺桶は見るも無惨な有り様となった。
(いやいやいや! 供え方っ! 罰当てるよ!? 何してんの!?)
そして、少年は最後に紙ナプキンをそっと棺桶の上に乗せ、二人は信心深く手を合わせた。
終わりよければ全てよし的な考えだろうか?
だがしかし、最後にとった彼等の行動は俺の怒りや不満を見事に打ち消し俺の心は穏やかなものとなった。大切だよね、慈しむ心。
ふと気が付くと身体の透明度が明らかに薄く、更に薄れていっているのに気が付いた。
(お? お? お?)
身体が薄く、存在が薄れ、意識が飛びそうになる。理解は早かった、俺は今。
――成仏しようとしている。
二人の行動はどうあれ、慈しみの心を見せられ、受け取ってしまった事で二人への怒りや煩悩といったものが俺の魂から浄化したようだ。その結果――この世に縛られる理由がなくなり、天に還ろうとしている。二度と転生する事のない天へ。
(ちょっ……やだ。なんかすーっとする!……待って!……あのバカ二人何してくれてんの!?……み、未練だ! 未練を残せ俺! あの二人に仕返しするまでは死ねん。この怨み晴らさでおくべきか!)
急場をしのぐような、見え見えの嘘だったが事態が安静化した、透け具合が最初の段階に戻ったのだ。
(ふう……あぶねえ。成仏するとこだった)
「さあ、そろそろ行きましょうか?」
「うんっ! 次はどこにいこうか!?」
二人は歩き出す――ベッタベタの武器を持って。
俺は引きずられる――ベッタベタの棺桶に乗って。
「ええ。お願いします」
「楽しみだな! 早く食べたい!」
どうやら主人公の死亡中にも関わらず、彼等は本当にカフェに来たらしい。そしてティータイムと洒落込むらしい。
かなりお洒落な感じのテラス席で若い男女が憩いの一時を過ごしている、男女は店の雰囲気にも溶け込んでいてなんの違和感も無いのだが、彼等の足下に転がる棺桶だけが異質で生々しいほどの存在感を放ち、辺りの空気を凍り付かせ和やかな雰囲気をぶち壊していた。
(え……ちょっ……これ、勘弁して貰えません? なんの罰ゲームですかこれ……皆見てるんだけど……白い目通り越して青い目になってるんだけど。ほらっ! 店員さんこっち指さしてるって! お願い、教会行こう!? ねっ? お願い!)
俺の魂の叫びも虚しくスルーされ、彼等は優雅にティータイムを過ごしていた。
「美味しい! 噂通りの味ね、これは流行る筈だわ。貴方はどう? ヒステリックロッド、美味しい? そう。よかったわね」
「ほらなっ!? フルーツパフェにして正解だったろ? おいおい! 僕の分も残しておいてくれよ!? スターダストジャスティス!」
(うわあうわあ……お前ら武器がベッタベタじゃねえか! 何でクリーム塗り付けてんの!? 食べさせてるつもり!? 武器はスイーツとか食べないからね……)
おいおい。それ伝説の武器クラスの凄い代物なんだぜ? 大事にしてくれよ……。
いい感じに武器がデコレーションされた所でお腹一杯になったのか二人の手が止まり、まったりと話し出す。
「いやあ! 食べた食べた! 本当に美味しかった。しかし注文しすぎて余ってしまったな、兄貴がいてくれたら全部食べてくれただろうに……一緒に来たかったなあ……フルーツパフェ食べて欲しかったなあ……」
(一緒に来てるよ。君達の足元見てみ? 可哀想な事になってるから。兄貴可哀想だから)
「本当ね……。勇者様が居てくれたらもっと楽しかったでしょうね、あの人は本当に面白い人だから。なんで……なんで死んでしまったの……」
(半分は君のせいだからね? ちゃんと自覚してね?)
「そうだ! 残り物で悪いけど、このケーキとかカフェオレを兄貴にお供えしようよ!」
「いい考えね、僕は本当に優しい子なのね。それじゃあ早速、お供えしましょう」
(お前ら……)
二人の会話に目頭が熱くなるのを感じる。今の俺に目頭があるのかは知らないが。
そこで彼等の奇行は始まった。彼等は食べ残しのケーキを皿の上からフォークでスライドさせて、あろう事か俺の棺桶の上に落としたのだ。飲み物に関してはカップを傾け棺桶に撒き散らしてしまう始末で、俺の棺桶は見るも無惨な有り様となった。
(いやいやいや! 供え方っ! 罰当てるよ!? 何してんの!?)
そして、少年は最後に紙ナプキンをそっと棺桶の上に乗せ、二人は信心深く手を合わせた。
終わりよければ全てよし的な考えだろうか?
だがしかし、最後にとった彼等の行動は俺の怒りや不満を見事に打ち消し俺の心は穏やかなものとなった。大切だよね、慈しむ心。
ふと気が付くと身体の透明度が明らかに薄く、更に薄れていっているのに気が付いた。
(お? お? お?)
身体が薄く、存在が薄れ、意識が飛びそうになる。理解は早かった、俺は今。
――成仏しようとしている。
二人の行動はどうあれ、慈しみの心を見せられ、受け取ってしまった事で二人への怒りや煩悩といったものが俺の魂から浄化したようだ。その結果――この世に縛られる理由がなくなり、天に還ろうとしている。二度と転生する事のない天へ。
(ちょっ……やだ。なんかすーっとする!……待って!……あのバカ二人何してくれてんの!?……み、未練だ! 未練を残せ俺! あの二人に仕返しするまでは死ねん。この怨み晴らさでおくべきか!)
急場をしのぐような、見え見えの嘘だったが事態が安静化した、透け具合が最初の段階に戻ったのだ。
(ふう……あぶねえ。成仏するとこだった)
「さあ、そろそろ行きましょうか?」
「うんっ! 次はどこにいこうか!?」
二人は歩き出す――ベッタベタの武器を持って。
俺は引きずられる――ベッタベタの棺桶に乗って。
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