100回目の勇者人生〜俺の頭の中ではこんなにも《ゆるい転生物語》が繰り広げられている。

しみずん

21話 光の世界、闇の世界

 可愛い子ちゃんとお嬢ちゃんのWビンタを食らい『あっ! Wメテオ食らうと、こんな感じなんだ!』って感動した所までは覚えているんだが、その先が思い出せない……。

 曖昧な記憶を寄せ集め、乱雑に繋ぎ合わせてストーリーを簡易的にでも完成させ、事実として信憑性があるかどうか検証してみる。

『もうひといきじゃ、パワーをメテオに』

『いいですとも!』

 ……村長? いや、これは違うな……違う記憶だ。

 というか。思い出せないのはまあ置いておくとして。(後回しにしていい問題ではないが)何故こんなにも辺りが暗いのだ、Wビンタで気絶している間に夜になった。という仮説が一番有力かもしれないけれど、だとしても暗すぎる。一筋の光さえも見えない、辺り一面。いやこの世界全てが真っ暗だ。瞳孔が500%開いても一縷の光も捉えられないくらい闇に徹している。まるで冥界にでも来たようだ。

 多少なら身体が動く事を把握する。じゃあ、とんでもないダメージを受けて目蓋が開けられないくらいに虫の息となったのだろうか? まさかとは思うがビンタで倒れた後に二人して踏んだり蹴ったりボッコボコにしてくれたんじゃねえだろうな……。あの可愛い子ちゃんお客様になんて事するんだ、可愛い子ちゃんじゃなけりゃ許さねえぜ! などと考えていると、不思議な感覚を体験する。

 大荒れの海を小舟に乗って渡り、ようやく島に降り立った直後のようなフワフワとした感覚。地面は揺れていないのに揺れてるような、違うな。地に足が付いてない、空を飛んでるような……そんな感覚。身体が風船になって宙を彷徨っていると言った方が解りやすいだろうか? しかしそんな感覚にも慣れてきて、コツを掴んだようだ。フワフワ感を操れるようになった。空気を胸一杯に吸い込むと上昇出来るらしい、闇の中をただただ上昇すると闇の世界と対照的な光の世界が待っていた。

 目も開けられないくらいに光に包まれ、光を放つその世界は不思議な事に見覚えがあった。というかなんの変哲もない、ありふれた日常のワンシーンだった、お嬢ちゃんと少年がいて可愛い子ちゃんもいる。やっぱり気を失っていただけか……ならば先ずは可愛い子ちゃんにお礼を――じゃない、謝らないと。

「…………」

 ぬっ? 

「…………」

 なぜ喋れない……声が出ない。――っ! まさか声帯を潰された!? あの二人何してくれてんの!? 俺が何をしたってんだ! ちょっと抱き付いて胸に頬ずりして身体中に行き渡るくらいに香りを楽しんだだけ……だろう。ちくしょう……言ってて良心が痛むぜ。

 こうなったらジェスチャーで謝罪の心を伝えよう。パントマイマーじゃないけれど真心込めて土下座すれば誠意は伝わる筈だ。そう思いふと自分の手に視線を落とす。とんでもない事が起きた、否。起きていた。声帯が無事だったとしても言葉は発せなかっただろう、俺の理解の範疇を余裕で超えてきた。

――俺の手が半透明になっていた。

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