100回目の勇者人生〜俺の頭の中ではこんなにも《ゆるい転生物語》が繰り広げられている。

しみずん

18話 私を出稼ぎに連れてって!

「お姉ちゃん……」

「ズズッ……はあ、ごめん、ごめんね。いきなりビックリしちゃったよね?」

「僕は平気だけどお姉ちゃんが……」

「私は大丈夫! いつもの事だもん、だから気にしないで。ほらっ! もう泣き止んだから。ねっ?」

「お? いたいた」

「兄貴! スケペイさんは?」

「うん、話してきた」

「すみません勇者様、先程はお見苦しいものを見せてしまって……」

「ああ、いいよいいよ。どこの家庭でも同じようなもんだよ、親子関係は特に。俺ん家なんてまだ、激しいくらいだぜ? だから気にしなくていいよ」

「はあ……」

「それはそうと中断してた話の続きなんだけどさ、確か叶えたい夢があるんだっけ?」

「ええ……そうなんです。私は酒場を、自分の店を持ちたいんです。本音を言えば、この森の中に小さくてもいいからお店を作ってお父さんや木こりの仲間達みんなで仕事後にゆっくりくつろげるようなお店を作って明日もまた元気に働こう! って思えるような、そんなお店を作りたいんです!」

「そっか。優しいんだね、お嬢ちゃん」

「お姉ちゃん、それ良い! スケペイさん絶対喜ぶよ!」

「でも、お父さんは木こりの仕事を継いで欲しいって言ってて、でもさっきは『やりたい事やれ! 出てけ!』とか言うし、もう訳分かんない……」

 ふうむ。どうしたものか……互いの気持ちは分かるんだが、どう対応したらいいのか分からない。

「だからもう、私好きにしちゃいます。お父さんの事なんて知らない。だからお願いです、勇者様! 私を出稼ぎに連れてって下さい!」

「…………」

「やっぱり、ダメですか?」

 こんな別れ方でいいのだろうか? 親子で喧嘩別れなんて悲し過ぎるよ、ましてや女の子だし。スケペイさんには最後の背中の一押しを頼まれた身であるが《連れて行く》というのがこの場合の一押しになるのだろうか?

「勇者様……無理ならいいんです。ベネツィで何か仕事でも探しますので……」

「兄貴!」

 正しい判断かは分からないが。

「旅のサポート役として女の子が仲間に入ってくれたら嬉しいなあって、ちょうど思ってたんだ。俺のパーティでよければ、一緒に旅に出てくれる?」

「――はいっ!」

「やったあ! これからよろしくお姉ちゃん」

「うん、よろしくね。でも私なんかでいいんですか? もっと可愛くて女の子らしい人はたくさんいるのに、私なんかで……」

「お嬢ちゃんすっごい可愛いよ? 女の子らしい細い身体つきで、賢そうで、しっかりしてそうで、品が良くって、でもふとした表情に幼さが残ってて、正直俺のタイプだね。あっ……俺のタイプとか関係ないか」

「――っ」

 顔を真っ赤にして俯くお嬢ちゃん。可愛いじゃねえか。

「とにかく! お嬢ちゃんくらい可愛い子がいた方が旅も楽しく出来そうだ、なっ! 少年?」

「うんっ!」

「私……私、頑張りますのでよろしくお願いします! あと、サポート役もちゃんとしますけど私も皆と一緒に戦いたいです。私も仲間……ですよね?」

「そうだね。でもまだ戦闘は危険かな……(あの鞭捌きは凄かったが、あくまで対人間である)少年もそうだけど、もう少しレベルを上げてからでないとね」

「「はいっ!」」

「まずはステータスを見てみようか?」

 思えばこのステータスも久しぶりだ。

――――――――――

 少年

 Lv     3
 HP     29/29
 MP     2/2
 職業 剣士
 装備 棒きれ
 お金 0G
 状態 厨二病


 お嬢ちゃん

 Lv     1
 HP     14/14
 MP     20/20
 職業 僧侶
 装備 革の鞭 
    木こりのお守り
 お金 0G
 状態 ヒステリー

――――――――――

 うん……。うちのステータス画面はどうも何か変だな、なんかこう……クセが強い。でも、分かった事もある。

 少年は厨二病だったのか、だから《勇者》とか《修行》って言葉に興奮していたのか。可愛い奴だ。

「あれ? 木こりのお守りって何ですか? 私の装備に……」

「お姉ちゃん、これじゃない?」

「これは? 私こんなもの持った覚えは……あっ、これお父さんの」

「いつかこんな日が来るって分かってたのかも知れないね。自分の夢に向かって歩き出した愛娘を離れてても守れるように」

「そんな……だってお父さんは、」

「俺も子供いないから分からないけどさ、子供には好きに生きて元気でいて欲しいんじゃないかな? なんだかんだ言っても結局それが一番なんじゃない?」

「……ズズッ……お父さん……」

「そういや、伝言頼まれてた」

「…………」

「いつでも帰って来い。ってさ」

 その日、感情豊かな親子の声は小鳥のさえずりも、虫のさざめきも掻き消して森の外まで響き渡ったという。

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