100回目の勇者人生〜俺の頭の中ではこんなにも《ゆるい転生物語》が繰り広げられている。
12話 天下無双の武者修行
前略、村長様お元気ですか? 僕は相変わらず元気です。あれからもう2日経ちますね、お変わりありませんか? 村長様も結構いい年ですのでお身体には十分、気を付けて下さい。あとモンスターにも。今日もゴブリン退治を頑張る村長様の姿が目に浮かびますが、どうぞ無理をなされぬようお身体をご自愛ください。僕ですか? 僕は今――。
前後左右、上下にいたるまで四方八方、十六方。完全にモンスターに囲まれています。前からドラゴン、後方から悪霊っぽい奴、左からトラっぽい奴、右からクマの奴、下は泥の奴、上には鳥類や虫の奴が空を覆わんばかりに飛んでいます。その中心に僕は立っています。はい、普通に考えて地獄です。
しかし誤解しないで下さい。決してピンチな訳でも、詰んだ訳でもありません。ここ、モンスタースポットで効率良くレベル上げを行いながら同時にお金を稼いでいるんです。村長の為にもの凄い上級装備一式を買って帰るので楽しみにしていてくださいね。
それにしても、ここは歩かなくてもモンスターの方から寄って来てくれるので楽ですね。まあ、モンスターの巣穴、つまり僕等で言う所のマイホームに無許可で、しかも土足で乗り込んでいるんですから、そりゃ誰でも怒って襲いかかって来ますよね……。と言っても先程も言ったように、僕にもここに来た理由がある、戦う理由がある、逆ギレのような事をする理由がある。だからモンスター達にとても悪い事をしている自覚はあるけれど、わがまま通させてもらいます。
――僕のパーティーの血肉になって貰います。
さて。ずいぶん長くなりましたが、そろそろモンスターの群れが僕の間合いに入ってきそうなのでここらで一旦お別れです、次にお会い出来る日を楽しみにしています。
親愛なる村長様へ――勇猛より。
みたいな事を考えていた。
モンスターが怒号をあげ襲い掛かってくる中で俺はそっとまぶたを開き、静から動へと――転じた。
まずは前方のドラゴン。今まさに炎を吐き出そうと頭を下げかけている、その下げかけた下顎をジャンプしつつ力任せに切り上げ、吐き出そうとした炎がドラゴンの頭全体を包む。
地面へと落下する俺を左右のトラとクマが襲い掛かってくる、俺は木刀を地面に突き立てタイミングを遅らせトラとクマを正面衝突させる。トラの背中に着地して背骨目掛けて木刀を振り下ろし粉砕する。
次いでトラの背中からジャンプして、クマの首元に木刀を深く刺し込む。
クマの首元から木刀を抜きながら後方の悪霊に火炎魔法を撃ち込む。
クナイの様に空から直滑降してくる鳥の群れを側転で回避し足元の泥の奴とぶつけ、地面にくちばしから突き刺さった鳥を蹴り上げ上空の虫にぶつける。
視線を後方に移し、目の前にいたゴブリンの角を持ち、またも炎を吐き出そうとするドラゴンの口元めがけて投げつけて盾代わりにする。吐き出された炎がゴブリンの背中に命中し壁状に広がる。炎の壁は周囲のモンスターを巻き込み激しく燃え上がる。
最後に硬い鱗と皮で覆われたドラゴンの身体に存在する唯一無二のウィークポイントである首の吸気口に狙いをすまして木刀を深く差し込む。
恐らく五分も経っていないと思うが、モンスターの群れは一掃され、最後のスライムを蹴った。
インパクトの瞬間『お主こそ天下無双の豪傑よ!』と誰かに言われた。
誰だあれは……。
怒号が止み嘘のように静まり返ったモンスタースポットの中心で、俺は再びまぶたを閉じて静へと転じる。
ある人物の事を思い出していた。
その昔、転生の順番待ちをしている際に近くにいた《宮本武蔵さん》の事だ。武蔵さんから教えて貰った『相手の力を最大限利用した戦闘法』なんでも兵法と言うらしい。この兵法とやらを今回、見よう見まねで戦闘に取り入れてみたのだ。
確かに効率良く戦闘を進められたと思う。
生ぬるい風がモンスターの生臭さ、獣臭さを運んで来た。程なく新たなモンスターの群れが大地を威勢良く踏み鳴らし、うねりを上げて迫ってくる。
まだ――もう少し時間がある。
PS. 僕は今までの勇者人生で1番強くなって帰って来ます、村長様を護りたいから。次、会った時は俺だって気付かないかも知れませんね。
1日も早く会いたいです。
前後左右、上下にいたるまで四方八方、十六方。完全にモンスターに囲まれています。前からドラゴン、後方から悪霊っぽい奴、左からトラっぽい奴、右からクマの奴、下は泥の奴、上には鳥類や虫の奴が空を覆わんばかりに飛んでいます。その中心に僕は立っています。はい、普通に考えて地獄です。
しかし誤解しないで下さい。決してピンチな訳でも、詰んだ訳でもありません。ここ、モンスタースポットで効率良くレベル上げを行いながら同時にお金を稼いでいるんです。村長の為にもの凄い上級装備一式を買って帰るので楽しみにしていてくださいね。
それにしても、ここは歩かなくてもモンスターの方から寄って来てくれるので楽ですね。まあ、モンスターの巣穴、つまり僕等で言う所のマイホームに無許可で、しかも土足で乗り込んでいるんですから、そりゃ誰でも怒って襲いかかって来ますよね……。と言っても先程も言ったように、僕にもここに来た理由がある、戦う理由がある、逆ギレのような事をする理由がある。だからモンスター達にとても悪い事をしている自覚はあるけれど、わがまま通させてもらいます。
――僕のパーティーの血肉になって貰います。
さて。ずいぶん長くなりましたが、そろそろモンスターの群れが僕の間合いに入ってきそうなのでここらで一旦お別れです、次にお会い出来る日を楽しみにしています。
親愛なる村長様へ――勇猛より。
みたいな事を考えていた。
モンスターが怒号をあげ襲い掛かってくる中で俺はそっとまぶたを開き、静から動へと――転じた。
まずは前方のドラゴン。今まさに炎を吐き出そうと頭を下げかけている、その下げかけた下顎をジャンプしつつ力任せに切り上げ、吐き出そうとした炎がドラゴンの頭全体を包む。
地面へと落下する俺を左右のトラとクマが襲い掛かってくる、俺は木刀を地面に突き立てタイミングを遅らせトラとクマを正面衝突させる。トラの背中に着地して背骨目掛けて木刀を振り下ろし粉砕する。
次いでトラの背中からジャンプして、クマの首元に木刀を深く刺し込む。
クマの首元から木刀を抜きながら後方の悪霊に火炎魔法を撃ち込む。
クナイの様に空から直滑降してくる鳥の群れを側転で回避し足元の泥の奴とぶつけ、地面にくちばしから突き刺さった鳥を蹴り上げ上空の虫にぶつける。
視線を後方に移し、目の前にいたゴブリンの角を持ち、またも炎を吐き出そうとするドラゴンの口元めがけて投げつけて盾代わりにする。吐き出された炎がゴブリンの背中に命中し壁状に広がる。炎の壁は周囲のモンスターを巻き込み激しく燃え上がる。
最後に硬い鱗と皮で覆われたドラゴンの身体に存在する唯一無二のウィークポイントである首の吸気口に狙いをすまして木刀を深く差し込む。
恐らく五分も経っていないと思うが、モンスターの群れは一掃され、最後のスライムを蹴った。
インパクトの瞬間『お主こそ天下無双の豪傑よ!』と誰かに言われた。
誰だあれは……。
怒号が止み嘘のように静まり返ったモンスタースポットの中心で、俺は再びまぶたを閉じて静へと転じる。
ある人物の事を思い出していた。
その昔、転生の順番待ちをしている際に近くにいた《宮本武蔵さん》の事だ。武蔵さんから教えて貰った『相手の力を最大限利用した戦闘法』なんでも兵法と言うらしい。この兵法とやらを今回、見よう見まねで戦闘に取り入れてみたのだ。
確かに効率良く戦闘を進められたと思う。
生ぬるい風がモンスターの生臭さ、獣臭さを運んで来た。程なく新たなモンスターの群れが大地を威勢良く踏み鳴らし、うねりを上げて迫ってくる。
まだ――もう少し時間がある。
PS. 僕は今までの勇者人生で1番強くなって帰って来ます、村長様を護りたいから。次、会った時は俺だって気付かないかも知れませんね。
1日も早く会いたいです。
「ファンタジー」の人気作品
書籍化作品
-
-
63
-
-
361
-
-
238
-
-
3087
-
-
59
-
-
4
-
-
93
-
-
159
-
-
107
コメント