100回目の勇者人生〜俺の頭の中ではこんなにも《ゆるい転生物語》が繰り広げられている。

しみずん

6話 スライムサッカー

 ドーグさんの毒消し草が起こしたHP全回復という奇跡をその身に受けて俺はとりあえず次の村に向かう。

 背の低い草原の中を特に警戒する事なく歩いていく、草が靴と地面にすり潰されて青々しい匂いが柔らかい風に乗って俺の辺りを包んでいた。

突如。

《モンスターがあらわ――》

 宙へ舞い上がる小石、吸い込まれるような青空を覆い隠す砂埃、大気の壁をぶち抜くように低姿勢からの猛ダッシュ、そして。

――蹴った。

 たぶんスライムだったと思う、あの見慣れた青色具合は。

 顔の中心を蹴り飛ばされたスライムらしき物体は遥か前方の草むらへと消えていく。

 ダッシュの勢いが落ち着く間もなく次の獲物を発見する。

《モンスターはまだこちらに気づいて――》

――蹴った。

 今度は間違いなくスライムだった。

 まるまるとした案外可愛い系な顔をしたスライムの横っ面に靴の先端が突き刺さる。

 インパクトの瞬間『ぐぇ』という断末魔の叫びは大地を蹴る足音に掻き消された。

 蹴り飛ばされたスライムはまたも遥か前方の草むらへと消えていく。

 全力疾走中の俺の視界正面に突如として牙を向いたスライムが飛びかかる。

《モンスターの先制攻――》

――蹴った。

 急に《モンスターの先制攻撃》と言われても、こちらもすでに先制攻撃中である。攻撃の準備、動作はすでに完了している。後はどちらが速いのか?

――俺だった。

 スライムの可愛い系な見た目のせいで端から見ると、道端でくつろいでいる犬とか猫とかを力任せに無差別に蹴り飛ばしているように見えるかもしれないが、忘れないで欲しい。

 スライムはどこまで行ってもスライムだし。

 勇者はどこまで行っても勇者だし。

 勇者はモンスターを倒すのが定めである。

 だから絵面は酷いだろうが仕方ないのだ。

 どうしても可愛いスライムを蹴る事に納得出来ないのなら、こう考えてはどうだろう。

 世界を平和に、安全に。そんな事が出来る唯一無二の新感覚スポーツ、それが。

《スライムサッカー》なのだ。

 俺は蹴り飛ばしたスライムのものと思しきお金とか薬草を回収しながら、その後もスライムサッカーに精を出した。

 約1時間後、さすがに走り疲れたので一旦立ち止まり休憩がてらステータスを確認してみる。

―――――――――


 勇猛

 Lv    5
 HP    43/43
 MP    21
 職業 100回目の勇者
 装備 旅人の服
 お金 461G
 状態 通常
――――――――――

 うん、強くなった。

 お金も少し貯まったし次の村――は無理だから次の次の村でナイフを買おう。

 スライムサッカーであらかたのスライムを蹴り終えたこの辺一帯は随分とスッキリし平和な雰囲気に満ち満ちていた。

「さて……」

 東の森の方角、巨大な樹に寄り添うように存在する村。この世界で1番危険な村へと向かう事にした。

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