100回目の勇者人生〜俺の頭の中ではこんなにも《ゆるい転生物語》が繰り広げられている。

しみずん

5話 道具に込める想い

 村人のベッドに横たわる俺。

 どうやら《動いた判定》は、されなかったようだ、命拾いした。

 このベッドの所有者である、あの村人は毒消し草を調達しに行ってくれている。

 本当にいい人なんだなと心から思う。

 初対面の名前も知らない俺の事を自分の利益を顧みずに助けてくれるなんて、なかなか出来る事じゃない。

「それにしても遅いな……あの村人」

 一歩でも動いたら即死の俺は、ただただ毒消し草を待つ事しか出来ない。

 その時ふとクソ親父の事を思い出し次、天界に帰ったらあの村人の爪の垢を煎じて飲ませてやろうと思った。いやさこの際大量に食べさせたい! と思う俺だった。

「お待たせしましたっ!」

 あの村人が帰ってきた。手には緑と紫が鮮やかなそして、全体的にギザギザした雰囲気の、定番の毒消し草が握られていた。

 かなり一般的な毒消し草なのに、なぜこうも調達に時間が掛かったんだろう? ただ何となく、ふと気になっただけだ。

「本当にありがとうございます、助かります。しかし……随分と時間が掛かったようですが、何かトラブルでもありましたか?」

「いえいえ! あなたがあまりに多くの血を吐くので普通の猛毒より強い毒なのかもしれないと思い、ちょっと遠征してきました」

「ちょっと遠征?」

「ええ。この村のずっと北の方にあるキター城の道具屋まで行って、この毒消し草を買って来たんです!」

「え……それって。要するにお城の道具屋で売ってた、普通の毒消し草?」

「ええ。しかしお城の道具屋ですよ? 少し特別な感じがしませんか? 良く効くとか、HPも少し回復するとか、そんな気がしてなりません!」

 そう言って、あの一般的な毒消し草を煎じて飲ませてくれた。

 青臭く苦味と酸味のコラボレーションが口いっぱいに広がる。 

 苦手なんだよなあ……この味。

 しかし瀕死の人を1時間程放置してまで、遠くにある普通の毒消し草を買いに行くあたりやっぱりこの村人、天然さんだな。

 毒消し草を飲んだ俺の身体から毒素がみるみる消滅し身体が羽根のように軽くなった。

「どうやら無事に回復出来たようです! ありがとうございました」

「それは良かった! 一時はどうなる事かと」

「そうだ。申し遅れました、私は――勇猛と申します。もう長い事、勇者やらせてもらってます。本当、嫌になるくらいずっと」

「なっ!? 勇者様!?」

「あっ! いえいえ!    そんな大したものじゃあないんですよ、うちは他と違ってチートとか無いんで」

「チート……とは?」

「あ……いや、何でもないです気にしないで、あははは……」

「しかしさすがは勇者様、なんだか取り巻く雰囲気が違いますねえ。っと、そうでした。私も自己紹介を、私はこの町で道具屋を営んでいますドーグといいますよろしくお願いします」

「道具屋の……ドーグさん」

 なんか凄い。たぶんこの人俺と同じ運命だ、この人は絶対毎回道具屋に転生する感じの人だ。

 勝手に芽生えた仲間意識に頬を緩ませながら、俺はドーグさんに改めて御礼をして更に道具の定期購入の約束もして村を出た。

 ようやく100回目の勇者人生が始められる。

「そういや残りHP確か2だったな」

 解毒したとはいえ猛毒の猛威がもたらした結果を思い出した。

 この辺のモンスターにやられる事はないと思うが念の為にステータスを確認してみる。

――――――――――

 勇猛

 Lv     1
 HP     17/17
 MP     9
 職業 勇者
 装備 旅人の服
 お金 0G
 状態 通常
――――――――――

「えっ……」

 HP 17

 状態異常どころかHPが全回復していた。

――あなたが多くの血を吐くので

――特別な感じがしませんか?

 ドーグさんの言葉が脳裏をよぎる。

 優しい思いが込められた道具には奇跡が起こるのだと、俺は100回目の勇者人生にして初めて知ったのであった。

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