青い果実 -Unripe fruit-

*おれんぢ*

-春一番- Part.1 ((佑衣))

「…璃夢置いてきて大丈夫かなぁ…」
芳乃の長い話が始まりそうだったのもあって逃げて来てしまった。
でもそれが心配で、変に汗をかいてしまう。
「璃夢、怒ってるだろうなぁ…」
ポツリと、呟く。
「まぁ、璃夢なら何とかなr…なんとかするでしょ。その間に僕達はいちゃいちゃしましょーねー?」
あっ。すごく申し訳ない気持ちが止まらない。今度なんか奢るから!恨まないで!!
と、心の中で祈りながら、そんなことは忘れて遊ぼう♡と、学校を出て、2人で通学路を並んで歩く。
「佑衣、アイス食べたい…。」
まだ4月の初め…今日の最高気温は13度。
最早まだ冬。そんな中アイスが食べたいなんて、狂っている。
「っえ”…まだ、さむく…なぁい?」
「でもアイス食べたい…雪見だいふく…」
可愛い。一言で、可愛い。
私より高い身長を思わせないような、究極の上目遣い。
「えとえとっ…じゃあ、アイス買って、僕ん家でぬくぬくしながらゲェム!…だめ、?」
それだけに収まらず、最後の一押しとばかりに捨てられた子犬のような目を向けてくる。 ……、おちました。
「そ、それなら…おkですっ!もぉわがままだなぁ〜でも、そゆとこも好き」
「ん。急にどしたの?知ってるよ?」
「ん〜?べっつにぃ?どーもしてないよ♡」
本当は、その照れたような困ったような顔が見たかった!って事は私だけの秘密…。
「佑衣、分かりやすすぎ声ダダ漏れ…」
いつの間にか声が出てしまっていた。
顔が暑くなって行くのが手に取るように分かる。
「っふ、かわいいなぁ、」
佑翔が何かを呟いた。
佑翔の声が小さかったからか周りがうるさかったからか聞こえなかった…。
けど、佑翔の顔がほんのり赤く染まっていて、見てるこっちが恥ずかしくなって…。うっとりしてしまった。
「っ、かっこぃ…」
ぁっ…ヤバ、声出ちゃってた…
いつの間にか漏れていた声に、ハッとして、バレていないかと心配になる。
でも…気づいてないみたいだ。
バレてなくて良かったと喜ぶべきなのか、伝わらなくって残念だと落ち込むべきなのか…
んー、複雑。
「佑衣、かわいい。好きだよ」
突然の言葉に心臓が跳ねた。
…心読まれたのかと思っちゃった。
「ぅ、うん。私も好きっ!」
跳ねるような鼓動の勢いに任せて、言葉が勝手に出てきた。

恥ずかしい、という気持ちと共に、
もっと。もう少し近づきたいと思ってしまう。
少し前にいる佑翔の袖を引っ張る。
「…ん、佑衣どったn…」
ぎゅぅっ……
「「え?」」
身体が勝手に動いてしまった。
気づいたら佑翔に、抱きついていた。

私っ、道端で、なにやってんのぉぉぉぉ?!
「えっ、え、大丈夫?なんかあった?佑衣…?」
困ったような、心配したような。そんな声の佑翔。
でもっ、、!
「んっ、ごめん、でも、大好き…なの」
「知ってるよ。僕も」
ぎゅっ…と、壊れそうなくらい力を込めてくれる。
そして優しい手つきでゆっくりと、なだめるように撫でてくれる。
それがとても心地よくて。
眠ってしまいそうなくらいだった。


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