破滅の未来を知ってしまった悪役令嬢は必死に回避しようと奮闘するが、なんか破滅が先制攻撃してくる……
第二八話~とりあえず証拠を探そう~
私はふと思いついた。
そもそもどこであの豚の指紋を手に入れればいいのかと。
私が奴にバレずに指紋を手に入れる方法なんてない。
だってそうでしょう。あいつと一緒にいる機会はいくつもあった
でも私はあいつの使ったものを奪うほどの変質者じゃない。
いやよ、あいつの使ったものを盗むなんて。
そんなの、好きな女の子のリーコーダーを盗んで、先っぽをぺろぺろする男子みたいなものじゃない。
あの豚のをぺろぺろするって考えただけで、吐き気がする。
ということは、別の誰かがあいつの日常品を盗んでぺろぺろ……じゃなくて、日常品を盗んで指紋を採取したのよ。
あとはそうね。ゼラチンフェイク指紋を作成したということは、どこかに型が残っているはず。
でもそんな証拠になりそうなものをずっと手物に置いておくはずがない。
多分ゴミとしてどこかに捨てたはずだ。まずはそれを探そう。
私はとりあえずセルシリア様を探した。
はずだったんだけど、なぜか向こうから現れた。こう……半蔵もびっくりするほどシュパっと現れた感じだ。
「あら、ヘンリーちゃん。大変なことになったわね。このままじゃ処刑よ」
「はい、私、今日で死んじゃいます」
「わぁー、怖くないの」
「正直、足ががくがく震えて……いませんでした」
「あらー。それで、今は証拠を探しているのよね」
「はい、セルシリア様のお話を聞きたかったのと、ゴミ捨て場を探しにきました」
「ごみ捨て場?」
「先ほど、ベルトリオ様が言っていた金庫を見に行きました」
「それで?」
「指紋認証式ということがわかりました」
「すごいわ。あれを一目見ただけでそれがわかるなんて。あれが指紋認証式だということは、一部の人間にしか分からないのに……」
うぐ、なんか私が疑われるようなことを言っちゃった気がする。
「まぁ、私はて・ん・さ・い、ですからっ! 一目見ただけでわかるのですよっ!」
「まぁ、すごいわね」
あっさりと流される。そういわれると、なんだか残念なような、残念じゃないような?
なんだろう、この複雑な気持ち。
この気持ち、どこにぶつければいいのかしら?
「ところで、セルシリア様。聞きたいことがあるんですけど」
「聞きたいこと? 何かしら、答えられることなら答えるわ」
「最近盗難とかありました。特に息子さん関連で」
「あの豚の? あるわけないじゃない」
母親に豚呼ばわりされる可哀そうな王子様。いや、あれを王子として認めるほうが、世の中に存在する王子様たちへの冒涜といってもいいかもしれない。
まあ、そんな王子だからかな、盗まれているものがなかったようだ。
そりゃ当たり前の話か。
「最近盗まれたものといえば、ケーキぐらいよ」
「あ、はい、すいません」
私がやった奴ね。別に私が盗んだわけじゃないんだけど……。
私はセルシリア様に「ありがとうございました」と言った後、移動を開始した。
目指すはゴミ置き場。そこにきっと証拠が残っているはず。
まだ処刑されない可能性がある限り、私は頑張るっ!
という訳で、ごみ置き場についた。ここのにおいを嗅いでいるだけでやる気がなくなって来るほど臭い。
ここを素手で探すと考えただけで頭が痛くなってくる。
ぱっと見で何か証拠になりそうなやつが見つかればそれで終わりなんだけど……。
そんなにうまくいくわけがないよね。
いやだなーと思いながらゴミ置き場に足を踏み入れる。変なごみを踏んでしまったのか、ぬめりとしたような感触と踏みつけたものから漂う腐臭が、頭をくらくらとさせた。
まるで犬のアレを踏んじまった時みたい。ほんと、気分が悪くなる。
それでも処刑を逃れるため、頑張ろうとしたのに、ごみ置き場によくいるあいつが現れやがった。
クリっとした瞳に大きな黒いくちばし、羽を広げればそれなりにでかい、雑食のあいつ。
ゴミ捨て場を荒らすものという二つ名を持つカラスさんだ。
カラスさんは、餌場を荒らされたくないのか、大きな鳴き声で私に威嚇してくる。
だが、私は負けない。こちとら命かかってんだ。カラスに脅されたぐらいで何だってんだ此畜生っ!
私はごみをあさり、目的のものを探した。
ごみをあさるのは正直つらい。でも、私は自分の命を守るためにやってるんだ、邪魔すんじゃねぇという意味を込めて、作業を続けながらカラスさんを睨みつけた。
カラスさんは私を見て引いていた。
正直、やべー奴を見ている目でカラスさんは私を見ている。
ゴミをあさるお嬢様、はたから見たら本当にやばい奴だな。
でもカラスさん、君がそんな目で見る?
わたしは君と同じことをしているだけなんだよ。
私は同類を見る目でカラスさんを見た。
カラスさんは、同類にされることを心底嫌がっているように、顔をぷいっとそらした。
解せぬ……。
私はカラスさんに見つめられながら、ごみをあさり続ける。視線が気になって仕方がない。時折、私はいったい何をやってるんだろうと頭を傾げたくなった。
だんだん宇宙が見えてきた。はは、何を言っているのだろうか。
ああ、もう私を見つめないで……。
ごみをあさること数十分。私の体に匂いが染みついた。
自分で嗅いでもやばいと感じる。
それでも収穫はあった。
見つけたのは、大量のゼラチンの袋。お菓子に使っているかもしれないと考えることもできる。
でも、そこはロディに確認を取れば、もしかしたら不用意に使われたものがあるかもしれない。というか、二種類のゼラチンの袋があったから、まず間違いない。
これは証拠になるぞ。
あとはどうやってゼラチンフェーク指紋を作ったのか。
私は、見つけたゼラチンと食材に関する記録を比較するために、ロディの元に向かった。
そしてロディにあった瞬間、こんなことを言われる。
「臭いからこっちに来ないでほしい」
「お、おう」
「早くあっちに行け」
「えあ、うん」
「調理室に入ったら、許さないからな」
「はい、ごめんなさい」
こうして私は追い出された。証拠が手に入らない。ここはひとまずきれいにならないと。
という訳で、私はお風呂に向かった。
そういえば、昨日通ったなーと思いながら、お風呂に向かう途中、気になるものを見つけた。
なんか手形が置いてある。昨日は見なかったけど……なんだろうか、これは。
近づいてみると、どうやら誕生日になるたびに手形を取っているようだ。
んで、三週間ほど前に誕生日があったと。
その時に取った手形らしい。
しかし、昨日は置いていなかった。
なんでだろうかと気になり、たまたま近くを通ったメイドさんに声をかけた。
「ねぇ……」
「くっせぇぇぇぇぇっぇぇぇっぇぇ」
たまたま通りかかったメイド、クリスティラが発狂して倒れた。
これ、ひどくねぇ。
私はクリスティラを縛り上げて、すぐさまお風呂に入った。勝手に使っちゃってるけど、別にいいよね。
体を入念に洗い、臭いにおいを落とす。これで少しはマシになっただろう。
お風呂から出ると、ベルトリオに出会った。
「いい身分だな、盗人よ」
「誰が盗人よ、このオーク」
「……いま我がオークと言われた気が……」
「気のせいよ」
「気のせいか、まあ後で死ぬんだがな」
「まあね」
「恐ろしくないのか」
「だって冤罪だし。私は何もしてないしー」
「ふん、せいぜい足掻くがいいさ」
相変わらずのちょろベルトさんだなーと思いながら、私は豚を見送った。
ふう、これで邪魔者はいなくなった。
残りの情報をさっさと探そう。
そういう訳で、わたしはクリスティラを蹴飛ばした。
そもそもどこであの豚の指紋を手に入れればいいのかと。
私が奴にバレずに指紋を手に入れる方法なんてない。
だってそうでしょう。あいつと一緒にいる機会はいくつもあった
でも私はあいつの使ったものを奪うほどの変質者じゃない。
いやよ、あいつの使ったものを盗むなんて。
そんなの、好きな女の子のリーコーダーを盗んで、先っぽをぺろぺろする男子みたいなものじゃない。
あの豚のをぺろぺろするって考えただけで、吐き気がする。
ということは、別の誰かがあいつの日常品を盗んでぺろぺろ……じゃなくて、日常品を盗んで指紋を採取したのよ。
あとはそうね。ゼラチンフェイク指紋を作成したということは、どこかに型が残っているはず。
でもそんな証拠になりそうなものをずっと手物に置いておくはずがない。
多分ゴミとしてどこかに捨てたはずだ。まずはそれを探そう。
私はとりあえずセルシリア様を探した。
はずだったんだけど、なぜか向こうから現れた。こう……半蔵もびっくりするほどシュパっと現れた感じだ。
「あら、ヘンリーちゃん。大変なことになったわね。このままじゃ処刑よ」
「はい、私、今日で死んじゃいます」
「わぁー、怖くないの」
「正直、足ががくがく震えて……いませんでした」
「あらー。それで、今は証拠を探しているのよね」
「はい、セルシリア様のお話を聞きたかったのと、ゴミ捨て場を探しにきました」
「ごみ捨て場?」
「先ほど、ベルトリオ様が言っていた金庫を見に行きました」
「それで?」
「指紋認証式ということがわかりました」
「すごいわ。あれを一目見ただけでそれがわかるなんて。あれが指紋認証式だということは、一部の人間にしか分からないのに……」
うぐ、なんか私が疑われるようなことを言っちゃった気がする。
「まぁ、私はて・ん・さ・い、ですからっ! 一目見ただけでわかるのですよっ!」
「まぁ、すごいわね」
あっさりと流される。そういわれると、なんだか残念なような、残念じゃないような?
なんだろう、この複雑な気持ち。
この気持ち、どこにぶつければいいのかしら?
「ところで、セルシリア様。聞きたいことがあるんですけど」
「聞きたいこと? 何かしら、答えられることなら答えるわ」
「最近盗難とかありました。特に息子さん関連で」
「あの豚の? あるわけないじゃない」
母親に豚呼ばわりされる可哀そうな王子様。いや、あれを王子として認めるほうが、世の中に存在する王子様たちへの冒涜といってもいいかもしれない。
まあ、そんな王子だからかな、盗まれているものがなかったようだ。
そりゃ当たり前の話か。
「最近盗まれたものといえば、ケーキぐらいよ」
「あ、はい、すいません」
私がやった奴ね。別に私が盗んだわけじゃないんだけど……。
私はセルシリア様に「ありがとうございました」と言った後、移動を開始した。
目指すはゴミ置き場。そこにきっと証拠が残っているはず。
まだ処刑されない可能性がある限り、私は頑張るっ!
という訳で、ごみ置き場についた。ここのにおいを嗅いでいるだけでやる気がなくなって来るほど臭い。
ここを素手で探すと考えただけで頭が痛くなってくる。
ぱっと見で何か証拠になりそうなやつが見つかればそれで終わりなんだけど……。
そんなにうまくいくわけがないよね。
いやだなーと思いながらゴミ置き場に足を踏み入れる。変なごみを踏んでしまったのか、ぬめりとしたような感触と踏みつけたものから漂う腐臭が、頭をくらくらとさせた。
まるで犬のアレを踏んじまった時みたい。ほんと、気分が悪くなる。
それでも処刑を逃れるため、頑張ろうとしたのに、ごみ置き場によくいるあいつが現れやがった。
クリっとした瞳に大きな黒いくちばし、羽を広げればそれなりにでかい、雑食のあいつ。
ゴミ捨て場を荒らすものという二つ名を持つカラスさんだ。
カラスさんは、餌場を荒らされたくないのか、大きな鳴き声で私に威嚇してくる。
だが、私は負けない。こちとら命かかってんだ。カラスに脅されたぐらいで何だってんだ此畜生っ!
私はごみをあさり、目的のものを探した。
ごみをあさるのは正直つらい。でも、私は自分の命を守るためにやってるんだ、邪魔すんじゃねぇという意味を込めて、作業を続けながらカラスさんを睨みつけた。
カラスさんは私を見て引いていた。
正直、やべー奴を見ている目でカラスさんは私を見ている。
ゴミをあさるお嬢様、はたから見たら本当にやばい奴だな。
でもカラスさん、君がそんな目で見る?
わたしは君と同じことをしているだけなんだよ。
私は同類を見る目でカラスさんを見た。
カラスさんは、同類にされることを心底嫌がっているように、顔をぷいっとそらした。
解せぬ……。
私はカラスさんに見つめられながら、ごみをあさり続ける。視線が気になって仕方がない。時折、私はいったい何をやってるんだろうと頭を傾げたくなった。
だんだん宇宙が見えてきた。はは、何を言っているのだろうか。
ああ、もう私を見つめないで……。
ごみをあさること数十分。私の体に匂いが染みついた。
自分で嗅いでもやばいと感じる。
それでも収穫はあった。
見つけたのは、大量のゼラチンの袋。お菓子に使っているかもしれないと考えることもできる。
でも、そこはロディに確認を取れば、もしかしたら不用意に使われたものがあるかもしれない。というか、二種類のゼラチンの袋があったから、まず間違いない。
これは証拠になるぞ。
あとはどうやってゼラチンフェーク指紋を作ったのか。
私は、見つけたゼラチンと食材に関する記録を比較するために、ロディの元に向かった。
そしてロディにあった瞬間、こんなことを言われる。
「臭いからこっちに来ないでほしい」
「お、おう」
「早くあっちに行け」
「えあ、うん」
「調理室に入ったら、許さないからな」
「はい、ごめんなさい」
こうして私は追い出された。証拠が手に入らない。ここはひとまずきれいにならないと。
という訳で、私はお風呂に向かった。
そういえば、昨日通ったなーと思いながら、お風呂に向かう途中、気になるものを見つけた。
なんか手形が置いてある。昨日は見なかったけど……なんだろうか、これは。
近づいてみると、どうやら誕生日になるたびに手形を取っているようだ。
んで、三週間ほど前に誕生日があったと。
その時に取った手形らしい。
しかし、昨日は置いていなかった。
なんでだろうかと気になり、たまたま近くを通ったメイドさんに声をかけた。
「ねぇ……」
「くっせぇぇぇぇぇっぇぇぇっぇぇ」
たまたま通りかかったメイド、クリスティラが発狂して倒れた。
これ、ひどくねぇ。
私はクリスティラを縛り上げて、すぐさまお風呂に入った。勝手に使っちゃってるけど、別にいいよね。
体を入念に洗い、臭いにおいを落とす。これで少しはマシになっただろう。
お風呂から出ると、ベルトリオに出会った。
「いい身分だな、盗人よ」
「誰が盗人よ、このオーク」
「……いま我がオークと言われた気が……」
「気のせいよ」
「気のせいか、まあ後で死ぬんだがな」
「まあね」
「恐ろしくないのか」
「だって冤罪だし。私は何もしてないしー」
「ふん、せいぜい足掻くがいいさ」
相変わらずのちょろベルトさんだなーと思いながら、私は豚を見送った。
ふう、これで邪魔者はいなくなった。
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