破滅の未来を知ってしまった悪役令嬢は必死に回避しようと奮闘するが、なんか破滅が先制攻撃してくる……
第二十五話~二重人格なんじゃないだろうか~
鼻血たらたらな私の世話をしてくれた男の名はロディというらしい。なんでも王宮料理人だという。
ということはだよ、この前豚のベルトリオと食べに行ったケーキ屋さんの店主の師匠がこの人ってこと?
マジで、こんななよなよした人がっ! なんて思ってしまうのは私の悪い癖なのかもしれない。なんていうのかな、すごい料理人ってガチムチでマッチョなイメージがあるんだよ。
世の中にはイケメン料理人なんて言われている人もいるけど、そんなのはほんの一部で、大きな鍋などを使っているから、かなり鍛え上げられてムキムキなんだよ。
私のイメージする料理人像はこんな感じなんだけど、目の前にいるロディって人は……なんというか、つくしとでもいえばいいんだろうか、そんなひょろさがある。
そんなロディは、私の鼻血を見て気弱な感じに近づいて、鼻の血をふき取ってくれた。
イメージする料理人像とは違ったけど、心がすごく優しい人だということは伝わってくる。
「ほら、これでもう大丈夫だよ」
「えっと、ありがとう」
「ん、どういたしまして。それでお嬢さんはこんなところでどうしたんだい。ここから先は調理場と牢獄と処刑台しかないんだけど」
なんでその三択なの。もっと他になかったのかな。いやあるでしょう。謁見の間とか、広間とかいろいろと……。
いま思い出したんだけど、『恋愛は破滅の後で』というバカゲーで王城のシーンっていえば処刑か処刑か処刑だった。
もしかして、王城ってろくでもない場所なのかな。なんだかもう帰りたくなってきたよ。
「お嬢ちゃんはあれか、ブスガルト家のお嬢さんか」
「う、うん。そうだけど」
「このお城、子供が見て楽しい場所なんてなーんもないぞ。どうせだったら調理場来るか。お菓子でもごちそうしてあげるよ」
「え、ほんとっ! でも、何かよからぬことを考えているんじゃ……」
「いやいや、考えてないからね。もうちょっと人を信じようよ。大丈夫、変なことはしないから」
「じゃあ何をするの。私を連れ込んで何をする気なのっ!」
「うわぁー」
なんか「うわぁー」って言われちゃったんだけど。私にはこのロディって男が何考えているのか手に取るようにわかる。
今頃、なんだこの子供、幼い癖に勘繰り深くて子供らしくない。逆に引くわーってきなことかんがえているんだぜ。知ってた。
どうせ私は子供らしくないですよー。
ちょっとめんどくさい女のように不貞腐れた態度をとってみた。それがますます気に食わなかったのか、ロディの表情が険しくなる。
ほんとごめんね。私が子供っぽくなくて。前世の記憶を思い出したせいで、思考が普通の子供の考えとズレちゃったんだよ。
「全く、最近の親はどんな教育をしているんだ。こんな、人を信じることすらできない悲しい子にするなんて……。もっとちゃんと接して見てあげないと……」
……あれ、気にしているのそっちなの?
でも別に私はそんなに人を信じていないわけじゃないし、知らない人を警戒するのは普通なんじゃないかな。
だって、怪しいおじさんが息をはぁはぁさせながら近づいて「お嬢ちゃん、一緒に遊ぼ、ぐへへへへ」なんて言われたら信じることなんてできないよね。
ロディって一見優しそうに見えるけど、そこが逆に危なく見える。だって、狙って優しい人を演じていたらさ、ついていったら最後、可愛らしいフリフリの服を着させられ、写真撮影が始まるんだよ。こわいねー。
まあ、そんな存在は二次元にしかおらず、三次元にいるわけないんだけどね。そんなことしたら簡単に警察に捕まる。警察力をなめると簡単に破滅するぞっ! 誰に言っているのか知らないんだけどね。
まあ、私は前世の記憶があるから知らない大人を信じられないだけなんだけど、家族には愛されているよ。
お父様は普通に優しいし、いつもかわいがってくれる。お母様は……優しいといえば優しいんだけど、時々見せるあの殺気が怖いけど……優しいよ。
という訳で、そのことをロディに説明してみる。
「ロディ、あんまりひどいこと言わないで。お父様は優しいよ」
「君のお母さんは? 優しくないの?」
「えっと、時々殺気を出しているように見えるけど、怖くないよっ!」
「それは優しいと違うんじゃないのかな……」
「ん、あれ?」
言っていてなんだけど、よく分からなくなってきた。お母様は確かに殺気がやばい。だけど普段はのほほんとしてほんわかして、まああれだ。天然の代名詞みたいな人。とっても優しいと思うよ。だけどあの殺気ですべてが台無しになっている気が……。私ってお母様に愛されているよね。こんなこと考えている自分に嫌悪感を感じた。
愛されているってことを考えるってメンヘラみたい。心病んでいないのに……。
「ねぇ君。なんだか目が死んだ魚みたいになっているけど大丈夫?」
「だ、大丈夫よ。きっと私はお母様に愛されているわ」
「これは相当だね……」
なんだかロディに可哀そうな目で見られている気がする。きっと気のせいだ。
ロディに「あまり楽しい場所じゃないかもしれないけど、調理場に行こうか」と言われたので、私はおとなしくついていくことにした。こいつがロリコンであってもそうじゃなくてももうどうでもいい。もしこいつが犯罪者だったら、きっとお母様か半蔵が助けてくれるはず、だって私は愛されているのだから。
また自分に対して嫌悪感を感じた。
私がいた場所からほんの少し歩いた場所に調理場はあった。
中に入ると、若い料理人たちが何やら作っていた。調理場の中は甘ったるい匂いが漂っているわけだから、たぶんお菓子を作っているんだと思う。
調理場の人たちはかなりまじめな表情で、一つ一つのお菓子を丁寧に作っている。
だけどよくよく考えると、どうもおかしい。
なんでこんなに大量のお菓子を作っているのか。
王城の調理場って、要は王族の方々の料理を作っている場所だよね。パーティーとかがあるなら大量の料理を作るのはわかるよ。
それなりの人たちが来るからね。でも今日は特に何もないはず。私たちブスガルト家のみんながやってきたぐらいで、ここで作られている料理が必要になるとは……。
そこまで考えて私は察した。
あ、これあれだ。あの豚の分だ。どれだけ食べるんだよ。
あまりにも量が多かったので、かなり呆れてしまうと同時に、あの横に出た腹を思い出した。
こんだけ食べれば太るよ……。
そんなことを考えて、豚に対して呆れていると、隣から怒声が聞こえてきた。
「オラ、おめぇら。何たらたら作ってんだよ。それにそこ、クオリティーが低すぎるぞっ! もっとちゃんとやれよ。もっと熱くなれよっ!」
「ひぃ」
「どうしたんだい、お嬢ちゃん」
ロディは優し気な笑みを浮かべて、私に訊いてきた。
あれ、さっきの怒声は気のせいだったのかな。私は首を傾げて「あれ」と声を漏らした。
でも、気のせいじゃなかった。
「おい、そこのてめぇ」
ロディが一人の若い料理人に近づいた。
「おめぇ、なんだこれ、舐めてんの? 死ぬの?」
「い、いえ、舐めてません。真面目にやっています」
「じゃあなんだこれ、言ってみろ」
ロディに訊かれた男は、すごく言いにくそうにうつむいて、黙ってしまう。
そして、こくこくと二回ほど頷いて、一体何を思ったのかロディを睨み返した。
そして……。
「納豆巻きです」
若い料理人はドヤ顔でそういった。
すごくうざい顔で、あの駄メイドを彷彿とさせる。
そんなことを言われたロディは当然ブチ切れた。
「ふざけんなっ! 今はベルトリオ様のためにお菓子を作っているところだろ、なんでてめぇだけ納豆巻き作ってるんだよ」
こうして怒鳴っているロディを見ると、まるで二重人格のように見えるな。本当にあの優しいときのロディと同一人物なの。
そんなことを思いながら、私はそっと納豆巻きに手を伸ばす。
まさか中世ヨーロッパ風の世界で納豆を食べられるとは……さすがバカゲーの世界だ。
私は納豆巻きを口に含みながら怒られる若い料理人と松〇〇造を彷彿とさせるような怒り方をするロディを眺めた。
そしてふと思う。
どうして納豆巻きなんだろう……。
ということはだよ、この前豚のベルトリオと食べに行ったケーキ屋さんの店主の師匠がこの人ってこと?
マジで、こんななよなよした人がっ! なんて思ってしまうのは私の悪い癖なのかもしれない。なんていうのかな、すごい料理人ってガチムチでマッチョなイメージがあるんだよ。
世の中にはイケメン料理人なんて言われている人もいるけど、そんなのはほんの一部で、大きな鍋などを使っているから、かなり鍛え上げられてムキムキなんだよ。
私のイメージする料理人像はこんな感じなんだけど、目の前にいるロディって人は……なんというか、つくしとでもいえばいいんだろうか、そんなひょろさがある。
そんなロディは、私の鼻血を見て気弱な感じに近づいて、鼻の血をふき取ってくれた。
イメージする料理人像とは違ったけど、心がすごく優しい人だということは伝わってくる。
「ほら、これでもう大丈夫だよ」
「えっと、ありがとう」
「ん、どういたしまして。それでお嬢さんはこんなところでどうしたんだい。ここから先は調理場と牢獄と処刑台しかないんだけど」
なんでその三択なの。もっと他になかったのかな。いやあるでしょう。謁見の間とか、広間とかいろいろと……。
いま思い出したんだけど、『恋愛は破滅の後で』というバカゲーで王城のシーンっていえば処刑か処刑か処刑だった。
もしかして、王城ってろくでもない場所なのかな。なんだかもう帰りたくなってきたよ。
「お嬢ちゃんはあれか、ブスガルト家のお嬢さんか」
「う、うん。そうだけど」
「このお城、子供が見て楽しい場所なんてなーんもないぞ。どうせだったら調理場来るか。お菓子でもごちそうしてあげるよ」
「え、ほんとっ! でも、何かよからぬことを考えているんじゃ……」
「いやいや、考えてないからね。もうちょっと人を信じようよ。大丈夫、変なことはしないから」
「じゃあ何をするの。私を連れ込んで何をする気なのっ!」
「うわぁー」
なんか「うわぁー」って言われちゃったんだけど。私にはこのロディって男が何考えているのか手に取るようにわかる。
今頃、なんだこの子供、幼い癖に勘繰り深くて子供らしくない。逆に引くわーってきなことかんがえているんだぜ。知ってた。
どうせ私は子供らしくないですよー。
ちょっとめんどくさい女のように不貞腐れた態度をとってみた。それがますます気に食わなかったのか、ロディの表情が険しくなる。
ほんとごめんね。私が子供っぽくなくて。前世の記憶を思い出したせいで、思考が普通の子供の考えとズレちゃったんだよ。
「全く、最近の親はどんな教育をしているんだ。こんな、人を信じることすらできない悲しい子にするなんて……。もっとちゃんと接して見てあげないと……」
……あれ、気にしているのそっちなの?
でも別に私はそんなに人を信じていないわけじゃないし、知らない人を警戒するのは普通なんじゃないかな。
だって、怪しいおじさんが息をはぁはぁさせながら近づいて「お嬢ちゃん、一緒に遊ぼ、ぐへへへへ」なんて言われたら信じることなんてできないよね。
ロディって一見優しそうに見えるけど、そこが逆に危なく見える。だって、狙って優しい人を演じていたらさ、ついていったら最後、可愛らしいフリフリの服を着させられ、写真撮影が始まるんだよ。こわいねー。
まあ、そんな存在は二次元にしかおらず、三次元にいるわけないんだけどね。そんなことしたら簡単に警察に捕まる。警察力をなめると簡単に破滅するぞっ! 誰に言っているのか知らないんだけどね。
まあ、私は前世の記憶があるから知らない大人を信じられないだけなんだけど、家族には愛されているよ。
お父様は普通に優しいし、いつもかわいがってくれる。お母様は……優しいといえば優しいんだけど、時々見せるあの殺気が怖いけど……優しいよ。
という訳で、そのことをロディに説明してみる。
「ロディ、あんまりひどいこと言わないで。お父様は優しいよ」
「君のお母さんは? 優しくないの?」
「えっと、時々殺気を出しているように見えるけど、怖くないよっ!」
「それは優しいと違うんじゃないのかな……」
「ん、あれ?」
言っていてなんだけど、よく分からなくなってきた。お母様は確かに殺気がやばい。だけど普段はのほほんとしてほんわかして、まああれだ。天然の代名詞みたいな人。とっても優しいと思うよ。だけどあの殺気ですべてが台無しになっている気が……。私ってお母様に愛されているよね。こんなこと考えている自分に嫌悪感を感じた。
愛されているってことを考えるってメンヘラみたい。心病んでいないのに……。
「ねぇ君。なんだか目が死んだ魚みたいになっているけど大丈夫?」
「だ、大丈夫よ。きっと私はお母様に愛されているわ」
「これは相当だね……」
なんだかロディに可哀そうな目で見られている気がする。きっと気のせいだ。
ロディに「あまり楽しい場所じゃないかもしれないけど、調理場に行こうか」と言われたので、私はおとなしくついていくことにした。こいつがロリコンであってもそうじゃなくてももうどうでもいい。もしこいつが犯罪者だったら、きっとお母様か半蔵が助けてくれるはず、だって私は愛されているのだから。
また自分に対して嫌悪感を感じた。
私がいた場所からほんの少し歩いた場所に調理場はあった。
中に入ると、若い料理人たちが何やら作っていた。調理場の中は甘ったるい匂いが漂っているわけだから、たぶんお菓子を作っているんだと思う。
調理場の人たちはかなりまじめな表情で、一つ一つのお菓子を丁寧に作っている。
だけどよくよく考えると、どうもおかしい。
なんでこんなに大量のお菓子を作っているのか。
王城の調理場って、要は王族の方々の料理を作っている場所だよね。パーティーとかがあるなら大量の料理を作るのはわかるよ。
それなりの人たちが来るからね。でも今日は特に何もないはず。私たちブスガルト家のみんながやってきたぐらいで、ここで作られている料理が必要になるとは……。
そこまで考えて私は察した。
あ、これあれだ。あの豚の分だ。どれだけ食べるんだよ。
あまりにも量が多かったので、かなり呆れてしまうと同時に、あの横に出た腹を思い出した。
こんだけ食べれば太るよ……。
そんなことを考えて、豚に対して呆れていると、隣から怒声が聞こえてきた。
「オラ、おめぇら。何たらたら作ってんだよ。それにそこ、クオリティーが低すぎるぞっ! もっとちゃんとやれよ。もっと熱くなれよっ!」
「ひぃ」
「どうしたんだい、お嬢ちゃん」
ロディは優し気な笑みを浮かべて、私に訊いてきた。
あれ、さっきの怒声は気のせいだったのかな。私は首を傾げて「あれ」と声を漏らした。
でも、気のせいじゃなかった。
「おい、そこのてめぇ」
ロディが一人の若い料理人に近づいた。
「おめぇ、なんだこれ、舐めてんの? 死ぬの?」
「い、いえ、舐めてません。真面目にやっています」
「じゃあなんだこれ、言ってみろ」
ロディに訊かれた男は、すごく言いにくそうにうつむいて、黙ってしまう。
そして、こくこくと二回ほど頷いて、一体何を思ったのかロディを睨み返した。
そして……。
「納豆巻きです」
若い料理人はドヤ顔でそういった。
すごくうざい顔で、あの駄メイドを彷彿とさせる。
そんなことを言われたロディは当然ブチ切れた。
「ふざけんなっ! 今はベルトリオ様のためにお菓子を作っているところだろ、なんでてめぇだけ納豆巻き作ってるんだよ」
こうして怒鳴っているロディを見ると、まるで二重人格のように見えるな。本当にあの優しいときのロディと同一人物なの。
そんなことを思いながら、私はそっと納豆巻きに手を伸ばす。
まさか中世ヨーロッパ風の世界で納豆を食べられるとは……さすがバカゲーの世界だ。
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