虐められていた僕は召喚された世界で奈落に落ちて、力を持った俺は地上に返り咲く

黒鉄やまと

第40話 拍子抜け

「おい、建国なんて聞いてないぞ?」

「そうですぞ!するつもりだったな我らにも相談して下さらないと!」

転移で帰ってきた後俺達はアレクに詰め寄った。

「仕方が無いじゃないか。俺は耐えられなかったしこれから先も耐えられるかわからない」

そう辛そうに言う。
まあ、そりゃそうか。自分の父親のあんな傲慢な姿を見せられれば辛く思うわな。

「この戦争には必ず勝つ。その時父上は死ぬが貴族達は多少残っているはずだ。それが自分に仕えることになると考えると虫酸が走るんだ。それなら新しく自分の国を作った方が落ち着けるし、みんなを信用しているからね。」

そう言って笑顔を見せるアレク。

「はぁ、仕方が無いか。今はとりあえず戦争に勝利することを考えた方がいいだろ」

俺が提案するとアレクは顔を渋らせた。

「そうだね。さて、準備を始めよう。まずはウルティマ砦を落とす」



翌日新興国家オルフェリアス帝国軍5000が隣国ソルニア王国へ進行を開始した。


そして今俺達はウルティマ砦の約2キロほど離れた場所で野営をしている。

会議用のテントの中で俺、ステラ、アレク、キルク子爵の4人で話している。

「砦の様子は?」

「まだわかんないよ。さっき斥候を出したばかりだしな」

「そうだね。しかし、相手は勇者を入れてくるかな?」

「微妙なところだ。アイツらが俺に向かってくるならばいるだろうし、怖くて逃げるんだったら居ないだろうし。そこはあいつらの根性しだいだ」

「そうだね、ついでに神夜はどうなの?」

「どう、とは?」

「勇者君達にいて欲しいのか、いなくていいのか」

「・・・よくわからない。なんかこの前のことでどうでも良くなったというか・・・許してるわけじゃねぇけど、なんかあんな奴らのために俺はここまでやってきたのかと思うとくだらなくなってきてな。」

「ふーん。そういうものかな?」

「さあ?あ、けどクソ騎士団長と国王にはまだ恨みはあるからな?」

「まあ、この前いなかったからね。」

そんなふうに話していると斥候として放っていた人が戻ってきた。

話を聞くとどうやら敵は既に警戒態勢に入っているそうだ。勇者の何人かがいたから中には入れなかったが、戦闘の準備をしていることだけは分かったらしい。

「分かった。今日は十分に休んでくれ。」

「はっ!失礼します!」

そう言って斥候役はテントを出ていく。

「やっぱり勇者はいたね」

「予想以上に情報伝達速度が早いな」

「転移魔法を使ったんだろうね」

アレクはそう言って立ち上がる、

「なるほど、それなら1日もせずに伝わるか」

「そういう事だね。さて、状況が分かったところで明日勧告に行こうか。もし拒否してきたら殲滅と行こう。まあ、ほとんどの確率で拒否だろうけど」


翌日の方針が決まったので俺達も寝ることにした。

翌日ウルティマ砦の前では異様な景色があった。
2頭の竜と2頭の龍が上空をホバリングしその下の地面には鎧を着た軍が整列していた。
軍隊の至る所で黒の下地に銀色の銃と剣が十字に交差して、その後ろに太陽の絵が書いてある旗がなびいている。
これはオフェリアス帝国の国旗で、意味は秩序と平和、そして忠誠だ。

4体の竜には俺、ステラ、アレク、キルク子爵ことガッスルが乗っている。
これは俺からの言わば建国祝いだ。
アレクには白銀の竜を、ガッスルには赤い鉄竜を、そしてアルステッド辺境伯領に居るテュールには炎竜を、リーンには風竜をあげた。
もちろん調教は完璧。それぞれの主の言うことを聞くし、アレクにあげた白銀の竜、白皇竜とテュールにあげた炎竜、灼熱竜は人の言葉を理解し、発することが出来る。
異空間でそれぞれ仲良くなってもらったから意思疎通はお手の物、捕まえたのはもちろん俺。

そして俺とステラが乗っているのはついでだが、せっかくだから龍を捕まえてきた。

ステラが乗っているのは幻想龍オリエルティア。間違いなくこの世界の頂点付近に存在するトップクラスの龍である。スピードだけならば世界最速。実力は神の域に達している。

そして俺が乗っているのは原初の龍王マザードラゴンとも呼ばれ世界最強の龍。
その名もーー開闢龍かいびゃくりゅうファフニール。

彼女は正直に言おう、この世界が産まれる前から存在し、現在は龍という位に収まっているが、その力は龍神を凌ぎ、既に神の域を越えようとしている。

それはつまり俺と同等の力を持ち始めているという事だ。
しかし、彼女は徐々にだが、俺の場合はレベルという概念や存在にハマらなくなってしまったとしても、もちあったらの場合のレベルは1日1レベル上がっている。日に日にさらに強くなっているのだ。
つまり、彼女に何かない限り俺が負けることは無い。

さてと、自慢の竜たちの話はここで終わりにして俺は拡声魔法を使ってアレクに準備が出来たというサインを送る。それを見たアレクは頷き話し始めた。

『ソルニア王国の兵士達よ。私はオルフェリアス帝国初代皇帝!アレクサンドリウス・オルフェリアスである!』

あれ?アレクの名前ってそんなんだっけ?

『我が国が既にソルニアに宣戦布告したことは伝わっているだろう!これより攻撃を開始しようと思う。と言っても我々は無駄に民達が血を流すところを見たくはない!そこで諸君らが賢明であることを願い、10分間の猶予を与えよう。我らに降伏するか、逆らうか決めよ!降伏するというのであれば、住民の安全は保証しよう!しかし!もし、降伏しないのであれば!その時は容赦なく殲滅を開始する!賢明な判断を待っている』

俺はアレクが話し終わるのと同時に拡声魔法を解く。

さすがに10分間も龍たちにホバリングさせるのは可哀想だな。ファフニールやオリエルティアは魔力で飛んでるから大丈夫だが、他の竜は魔力+自力で飛んでるかり疲れるだろう。

俺は全員(4人)に降下の合図を出して地面に降り立った。
巨大な龍が4体も降り立ったことにより、地面は土埃にまみれる。

所が土埃が収まった頃見えた竜の姿は2匹。そして他の2体が降りた場所には和装の漆黒の髪を持ち、扇子を持っている女性と、雪のような白い色の髪を持つ羽衣を纏った150センチ強の女の子がいた。

「神夜よ、降りてしまってもよかったのか?」

「そうですよ、神夜さん。威圧のためだとか言ってたのに降りたらダメじゃないですか」

そう言って俺とステラによってくる。

もうわかっていると思うが、黒い髪の女性が開闢龍ファフニールであり、白い髪の女の子が幻想龍オリエルティアだ。
彼女たちは完璧な人化ができる。


「お前達はずっと待っていられるかもしれないが、あっちはそうでもないからな。」

「確かにそうじゃな」

こんなふうに話してはいるがファフニールはこの世界の最果てと言われる暗黒峡谷と呼ばれる場所に住んでいた。たまに人化して人間達の街に出ていたらしい。
俺は暗黒峡谷に行って捕まえようとした時はめっちゃ暴れてマジでぶつかりあったら世界が滅びそうだったから、小さな異世界アンダーワールドという俺の魔法でやり合って、結果、仲間になった。

オリエルティアは空に浮かんでいる天空宮と言われる場所に住んでいるが、ほとんど人間達の生活に紛れて遊んでいた所を俺達が見つけ、仲間にした。
最初は怒ってきたがステラがボコボコにして、ステラがダメならば俺なら!と言って俺にかかってきたが勝てるはずもなく、諦めて仲間になった。

そんなこんなで10分ほど待つとアレクは再び拡声魔法を使って話し始めた。

『10分がたった!それでは返答を聞かせてもらう!』

そうアレクが言うと俺達は突撃の準備を始める。

そして砦の兵士らが取り出したのはーーー木の棒に掲げられ、ヒラヒラと風になびいている真っ白な旗だった。

「へ?」

俺はその場で転びそうになるのを堪えながらもう一度砦を見た。

綺麗な白旗は一つだけでなく、砦のあちこちで掲げられている。

「アレク。これはどういうことだ?」

「見事な白旗だ。これは・・・降伏?」

俺とフィル(ファフニール)がそういう。

「あっれぇ?おかしいな。降伏しないと思ってたんだけど・・・?」

アレクはそういうが降伏の旗を上げているのなら仕方が無い。

『ソナタらの降伏を確認した。これより砦の門を開けて武器を捨てよ!』

そう言ってアレクは俺のところに来る。

「神夜、済まないが様子を見てきてもらってもいい?」

「了解だ」

その後俺はウルティマ砦に入って抵抗の意思がないことを確認し、オルフェリアス帝国軍はウルティマ砦を無傷で占拠した。


ーーーーなんか拍子抜けだったな。

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