BLIZZARD!

青色魚

interlude『英雄譚──終止符』

 ──まったく、何でこんなに柄でもないことしてたんだっけな。
 
 猛吹雪に晒され、身体は疲労で今にも倒れそうな状況で、冰崎すさきかけるはそう苦笑した。
 
 翔の意識が朦朧としているのもむりはないだろう。身体は凍え、視界は舞い散る雪に遮られ、その白の弾幕の向こうには翔のとなる存在けものがいる。そして何よりも懸念すべきことに、彼の後ろには守るべき対象ひとりのしょうじょがいるのだ。
 
 ──って、あれ? 前にもこんなことなかったっけか?
 
 翔は自らが置かれているその状況にどこか既視感デジャブを感じる。しかし、その正体こたえに辿り着くより前に、目の前の敵から攻撃が繰り出された。
 
「うおっ!」
 
 その一撃を何とか避け、翔はその敵との距離をとった。一瞬でも余分な思考を自らがしていたことを翔は恥じ、改めて目の前の敵に意識を集中させた。
 
 ──集中しろ。そして、覚悟を決めろ、ヒーロー
 
 翔は自らが守っているものの大きさを改めて実感し、そう自分に言い聞かせた。
 
 翔は目の前のその敵に向かい合うのと同時に、一つの覚悟を決めていた。それは、自らのあること・・・・終止符ピリオドを付けるというものだった。
 
 ──今まで俺は、色んな苦しいことから逃げて、失敗して、それでもただ漠然と日々を過ごしてきた。
 
 翔は自らの歩んできたその日々を振り返る。それらは自分の眼から見てもなんとも情けない日々であった。それこそ、英雄ヒーローなどとは程遠いような。
 
 ──そんなみっともない日々を、終わらせるんだろ。
 
 翔は必死に自分にそう言い聞かせる。
 
 ──あの、弱かったころの俺という過去に終止符ピリオドを打つんだろ!
 
 翔はそう自分に言い聞かせ、そして自分自身に言い聞かせたその言葉から活力エネルギーをもらう。
 
 翔の覚悟とは、そのようなものであった。自らのことを英雄ヒーローと呼びつつも、それに見合った努力はせず、失敗からは逃げ、ただ無為に日々を過ごす。そんな、自らの情けない過去と決別するために、翔はその場に立っていた。
 
 視界に舞う白が少しずつ晴れていく。目の前の敵との激突までそう長くはない。覚悟を決め、翔は後ろの存在コハルに語りかける。
 
「……安心しろ、『俺が絶対助けてやる』なんてカッコいいことは言えないが……」
 
 吹雪が晴れる、その瞬間、翔はニヤリと笑ってこう続けた。
 
 
「……お前を絶対死なせない、それくらいは約束するぜ」
 
 
 翔がそういったのと同時に、『新種』は翔に飛び掛かった。
 
 そしてそれと同時に、翔の戦いえいゆうたんは幕を開けたのだった。

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