BLIZZARD!
第二章31『罠』
──っ! これって……!
その雪原に転がった瀕死の獣を見て、翔は思わず驚愕する。その猛獣は通称『剣歯虎』。文字通り剣のように長く鋭い歯を持つ雪原の覇者であった。
──隊長達でも油断をしたら喰われる、そんな猛獣だったはずだ。
翔自身のその経験則に加え、先に聞いたフレボーグの話からもその強さは十分伺える。それほどの強さを誇っている猛獣がその雪原に横たわっているということはつまり……
「……遠征隊でも手こずる猛獣を倒せる猛獣か人かが、この雪原にいるってことか」
そう分析してから、少し考えて、翔はダイヤルを回して通信を隊長に繋ぎ言った。
「……あの、隊長これって多分……」
「ああ、そうかもな……」
元二もその翔の言わんとすることを考えていたらしく、翔の言葉は結論を言う前にそう遮られる。そして神妙な口調になってから、元二は言った。
「……これは、件の『新種』の猛獣の仕業かもしれないな」
そう元二が考えたのは偏にこれまでの経験によるものだった。雪原の生態系は悲しい程に単純だった。草食獣の牙象に捕食者の剣歯虎で構成されるこの世界においては、喰われるマンモスの死体が雪原に転がっていることこそあれど、喰う側のサーベルタイガーの死体が雪原に存在することなど稀であったのだった。
「……詳しく調べてみる必要がありそうだな」
元二はそう呟くと、全員に通信を繋げて遠征隊にその死体の調査を命令した。そして自らも改めて、その死体の様子をまじまじと見る。
──腹部に裂傷……。死因は恐らくこれか。そこ以外に外傷は見当たらないしな。
元二の推測通り、その剣歯虎の遺体は腹部を除いて驚く程綺麗であったのだ。微かに開かれたその口から除く牙も、獰猛に雪原を駆けるその脚も、まるで生きていた時のままであったのだ。
──それにしても、剣歯虎が殺られるなんてな……。
改めて目の前の事態にそう驚嘆してから、ふとその裂傷を見返して、元二はある可能性に気付く。
「……剣歯虎同士の仲間割れ、ってこともありえるか?」
その元二の推理は一見整合性のある論理のように思えた。同種同士で争ったならば雪原最強の獣が敗れたというのも納得がいくのに加え、腹の裂傷もその歯刃によってできたものだと考えることが出来る。
そうして、その死体がまだ見ぬ『新種』によるものではないという可能性が出てきたことで、遠征隊は少し安堵の色を見せる。が、その束の間の安心も、翔の冷静な分析により砕かれることとなるのだった。
「……いや、隊長。それにしちゃこの状況はおかしいです」
元二と同じことを推理していた翔は、一足早くその『違和感』に気付いていた。
「剣歯虎同士で戦ってたとしたら、なんで近くに血痕の類がないんですか?」
その翔の言葉に、遠征隊は辺りを見渡す。彼らの希望を裏切るかのように、その白のキャンパスにはほとんど赤色に染まっているところは見当たらなかったのだった。
「同種同士の戦いにしちゃ、この個体と戦った個体の損傷が少なすぎる。そもそも、同種同士の戦いの発端となりうるマンモスの取り合いの跡もありませんしね」
その翔の分析は冷徹に希望の光をかき消していった。そして仲間割れという可能性が潰えた今、その雪原に転がる猛獣を殺した殺戮者はまず間違いなく『新種』の獣であろうということは遠征隊の誰にも想像出来た。何故ならば殺された剣歯虎は雪原の覇者、つまりはこの凍える世界で最強の生物であったからだ。
──けど、この調子だとその『最強』の称号も直に別の猛獣に譲ることになりそうだな。
『であった』と過去形で表現した通り、その最強の座はこのままでは『新種』に奪われることになるからであった。周囲に血痕が少ないということはつまり、その『新種』はほぼ無傷で剣歯虎を倒したことになる。
──いや、僅かに残った血痕が剣歯虎のものであったとしたら……。
翔はそう推測してゾッとする。その翔の仮定がもし正しかったとすれば、最早その『新種』は一切の傷を負わず雪原最強の獣を倒したこととなるからであった。
──どちらにせよ、デタラメな強さみたいだな。『新種』の獣ってのは。
そうして翔がその『新種』のことを考えている一方、自らの推理を否定された元二は改めてその死体の傷跡を見て考える。
──確かに、同種討ちにしちゃこの傷跡も変だな。よく見るとこりゃ、『噛まれた』っつーよりも『刺された』感じだ。
その傷跡からも自らの先程の論が誤りであることが分かり、元二はため息をつく。そうして観察するその傷跡は、剣と呼ばれるほど鋭く長い剣歯虎の歯でも届かないほどの深部まで広がっていたのだった。
──『新種』の攻撃スタイルか……? ヒナの情報によると、やけに長い腕を持ってるらしいが。
その『刺された』ような傷跡を見て元二はそう考える。少なくとも牙象や剣歯虎のような、従来の猛獣とは一風変わった獣であることは間違いなさそうであった。
──それよりもむしろ、これじゃ人類に近い……。
そうして何か、妙な考えが元二の頭を過ぎろうとしたその時、元二はふと気付く。
──いや、ちょっと待て。何か、おかしくないか?
その時、元二はすっかり自らの頭から抜けていたことがあったことに気付く。
──この剣歯虎を殺した『新種』はどこに行った?
そうして元二は辺りを見渡す。だが、やはりその雪原に獣の姿は見当たらなかった。
──『新種』は肉は喰わないのか……? だとしたら喜ばしいことだが、その場合なぜ剣歯虎を殺した?
元二にとってその場に『新種』の獣がいないことは奇妙であった。この剣歯虎を倒したのがその『新種』であったとしたら、その倒した相手の肉を喰うことなくその場を立ち去るのはあまりに馬鹿げていた。
──なんで『新種』はここに死体を置いていった……? それこそこんなところに放ったらかしにしてたら、遠征隊みたいな輩に横取りされ……
ようやくその思考に至った元二は、戦慄して瞬時に通信を繋いで叫ぶ。
「──総員警戒!! これは……」
その元二の叫びとほぼ同時に、その雪原には爆音が轟いた。
********************
その元二の通信の少し前、翔は未だその『新種』の痕跡を探していた。
──とはいえ、この血痕が『新種』のものか剣歯虎のものかも分からない以上、これ以上探す痕跡なんてものないようなもんだよなぁ。
そうしてため息をつく翔の視界が、あるものを捉える。
「……! これは……」
翔が捉えたものは一面白のキャンパスに出来た僅かな窪み。円形状に出来たそれは、先程までそこにいた猛獣の足跡であろうということは翔にはすぐに想像出来た。
──見たこともない形だ。少なくとも剣歯虎のとは違う。
そうしてその足跡を観察していた翔に、ある考えが芽生える。
「──! もしかしてこれって……!」
翔はその言葉に続けて、自らの推理を心の中で呟いた。
──この剣歯虎を殺した『新種』の足跡か……!?
翔のその考えは何の確証もないが、同時にそれを否定するものも何も無かった。また『新種』がこの場に先程までいたという事実も相まって、翔はその自らの推理を正しいと思い込んでいたのだった。
──ってことは、この足跡の先には……。
その足跡は一方から生じ、一方へと消えていっていた。翔の論が正しいのならば、その足跡の先にいるものはもはや明白であった。
──『新種』が、いるはずだ。
そう考えを巡らせた翔は、その考えの正しさを実証するかのように、その足を足跡の進む方に一歩踏み出した。
それが既に、冰崎翔の犯した過失であったのかもしれない。その時『新種』の目論見に気付きつつあった元二にその報告をしていれば、或いは翔はそちらに向かうことは無かった。
否、若しくは翔がその足跡を見付け、その考えに至るまでのプロセスに問題があったのかもしれない。翔の考えは半分正解していて、半分間違っていた。その足跡は事実『新種』が付けたものであった。誤っていたのはあと半分。冰崎翔は、もう少し考えを巡らすべきであった。
「……この先に、『新種』が……」
そうして一歩、足跡の指す方向に足を踏み入れた翔の様子を、一人の男は静かに見ていた。が、その時、その男と翔を含めた全隊員に、元二からのその通信が入った。
「──総員警戒!! これは……」
しかしその先の言葉を聞くことは、翔にもその男にも叶わなかったのだった。彼らはまさにその時、一匹の獣と対峙していたのだから。
通信が入った瞬間、翔は何か嫌な予感を感じていた。
──おかしい。何かが気味悪い。これじゃまるで……
しかし翔はその予感が指し示す、迫り来る『新種』の獣の存在に気付くことは出来なかったのだった。
何故ならばそれは翔の正面からではなく、背後から迫っていたのだから。
「……バッカ、野郎がァァァァ!」
雪原にそのランバートの声が響く。それと同時に、翔は自らの身体が突き飛ばされる感覚を覚える。
「──っ!」
思わず数メートル程雪原を転がってから、翔は体勢を整えてその『先輩』の方を見る。
「……痛いなぁ……! 一体どういう……」
しかしその不平の声も途中で断絶される。何故ならばそこには既に『先輩』の姿はなく、ただ一匹の、白い獣だけがいたのだから。
──っ! こいつ……!
その白い獣は翔を見つけたかと思うと、微かにその口角を上げた。翔にはそれが、まるでその獣が笑っているかのように思えて、思わず身震いした。
「──総員警戒!! これは……」
その時、元二が発していたその指令の続きが、漸く翔の耳まで届いたのだった。
「……これは、これは全て、『新種』の罠だ!!」
そうしてその雪原で、絶望の遭遇は行われたのだった。
その雪原に転がった瀕死の獣を見て、翔は思わず驚愕する。その猛獣は通称『剣歯虎』。文字通り剣のように長く鋭い歯を持つ雪原の覇者であった。
──隊長達でも油断をしたら喰われる、そんな猛獣だったはずだ。
翔自身のその経験則に加え、先に聞いたフレボーグの話からもその強さは十分伺える。それほどの強さを誇っている猛獣がその雪原に横たわっているということはつまり……
「……遠征隊でも手こずる猛獣を倒せる猛獣か人かが、この雪原にいるってことか」
そう分析してから、少し考えて、翔はダイヤルを回して通信を隊長に繋ぎ言った。
「……あの、隊長これって多分……」
「ああ、そうかもな……」
元二もその翔の言わんとすることを考えていたらしく、翔の言葉は結論を言う前にそう遮られる。そして神妙な口調になってから、元二は言った。
「……これは、件の『新種』の猛獣の仕業かもしれないな」
そう元二が考えたのは偏にこれまでの経験によるものだった。雪原の生態系は悲しい程に単純だった。草食獣の牙象に捕食者の剣歯虎で構成されるこの世界においては、喰われるマンモスの死体が雪原に転がっていることこそあれど、喰う側のサーベルタイガーの死体が雪原に存在することなど稀であったのだった。
「……詳しく調べてみる必要がありそうだな」
元二はそう呟くと、全員に通信を繋げて遠征隊にその死体の調査を命令した。そして自らも改めて、その死体の様子をまじまじと見る。
──腹部に裂傷……。死因は恐らくこれか。そこ以外に外傷は見当たらないしな。
元二の推測通り、その剣歯虎の遺体は腹部を除いて驚く程綺麗であったのだ。微かに開かれたその口から除く牙も、獰猛に雪原を駆けるその脚も、まるで生きていた時のままであったのだ。
──それにしても、剣歯虎が殺られるなんてな……。
改めて目の前の事態にそう驚嘆してから、ふとその裂傷を見返して、元二はある可能性に気付く。
「……剣歯虎同士の仲間割れ、ってこともありえるか?」
その元二の推理は一見整合性のある論理のように思えた。同種同士で争ったならば雪原最強の獣が敗れたというのも納得がいくのに加え、腹の裂傷もその歯刃によってできたものだと考えることが出来る。
そうして、その死体がまだ見ぬ『新種』によるものではないという可能性が出てきたことで、遠征隊は少し安堵の色を見せる。が、その束の間の安心も、翔の冷静な分析により砕かれることとなるのだった。
「……いや、隊長。それにしちゃこの状況はおかしいです」
元二と同じことを推理していた翔は、一足早くその『違和感』に気付いていた。
「剣歯虎同士で戦ってたとしたら、なんで近くに血痕の類がないんですか?」
その翔の言葉に、遠征隊は辺りを見渡す。彼らの希望を裏切るかのように、その白のキャンパスにはほとんど赤色に染まっているところは見当たらなかったのだった。
「同種同士の戦いにしちゃ、この個体と戦った個体の損傷が少なすぎる。そもそも、同種同士の戦いの発端となりうるマンモスの取り合いの跡もありませんしね」
その翔の分析は冷徹に希望の光をかき消していった。そして仲間割れという可能性が潰えた今、その雪原に転がる猛獣を殺した殺戮者はまず間違いなく『新種』の獣であろうということは遠征隊の誰にも想像出来た。何故ならば殺された剣歯虎は雪原の覇者、つまりはこの凍える世界で最強の生物であったからだ。
──けど、この調子だとその『最強』の称号も直に別の猛獣に譲ることになりそうだな。
『であった』と過去形で表現した通り、その最強の座はこのままでは『新種』に奪われることになるからであった。周囲に血痕が少ないということはつまり、その『新種』はほぼ無傷で剣歯虎を倒したことになる。
──いや、僅かに残った血痕が剣歯虎のものであったとしたら……。
翔はそう推測してゾッとする。その翔の仮定がもし正しかったとすれば、最早その『新種』は一切の傷を負わず雪原最強の獣を倒したこととなるからであった。
──どちらにせよ、デタラメな強さみたいだな。『新種』の獣ってのは。
そうして翔がその『新種』のことを考えている一方、自らの推理を否定された元二は改めてその死体の傷跡を見て考える。
──確かに、同種討ちにしちゃこの傷跡も変だな。よく見るとこりゃ、『噛まれた』っつーよりも『刺された』感じだ。
その傷跡からも自らの先程の論が誤りであることが分かり、元二はため息をつく。そうして観察するその傷跡は、剣と呼ばれるほど鋭く長い剣歯虎の歯でも届かないほどの深部まで広がっていたのだった。
──『新種』の攻撃スタイルか……? ヒナの情報によると、やけに長い腕を持ってるらしいが。
その『刺された』ような傷跡を見て元二はそう考える。少なくとも牙象や剣歯虎のような、従来の猛獣とは一風変わった獣であることは間違いなさそうであった。
──それよりもむしろ、これじゃ人類に近い……。
そうして何か、妙な考えが元二の頭を過ぎろうとしたその時、元二はふと気付く。
──いや、ちょっと待て。何か、おかしくないか?
その時、元二はすっかり自らの頭から抜けていたことがあったことに気付く。
──この剣歯虎を殺した『新種』はどこに行った?
そうして元二は辺りを見渡す。だが、やはりその雪原に獣の姿は見当たらなかった。
──『新種』は肉は喰わないのか……? だとしたら喜ばしいことだが、その場合なぜ剣歯虎を殺した?
元二にとってその場に『新種』の獣がいないことは奇妙であった。この剣歯虎を倒したのがその『新種』であったとしたら、その倒した相手の肉を喰うことなくその場を立ち去るのはあまりに馬鹿げていた。
──なんで『新種』はここに死体を置いていった……? それこそこんなところに放ったらかしにしてたら、遠征隊みたいな輩に横取りされ……
ようやくその思考に至った元二は、戦慄して瞬時に通信を繋いで叫ぶ。
「──総員警戒!! これは……」
その元二の叫びとほぼ同時に、その雪原には爆音が轟いた。
********************
その元二の通信の少し前、翔は未だその『新種』の痕跡を探していた。
──とはいえ、この血痕が『新種』のものか剣歯虎のものかも分からない以上、これ以上探す痕跡なんてものないようなもんだよなぁ。
そうしてため息をつく翔の視界が、あるものを捉える。
「……! これは……」
翔が捉えたものは一面白のキャンパスに出来た僅かな窪み。円形状に出来たそれは、先程までそこにいた猛獣の足跡であろうということは翔にはすぐに想像出来た。
──見たこともない形だ。少なくとも剣歯虎のとは違う。
そうしてその足跡を観察していた翔に、ある考えが芽生える。
「──! もしかしてこれって……!」
翔はその言葉に続けて、自らの推理を心の中で呟いた。
──この剣歯虎を殺した『新種』の足跡か……!?
翔のその考えは何の確証もないが、同時にそれを否定するものも何も無かった。また『新種』がこの場に先程までいたという事実も相まって、翔はその自らの推理を正しいと思い込んでいたのだった。
──ってことは、この足跡の先には……。
その足跡は一方から生じ、一方へと消えていっていた。翔の論が正しいのならば、その足跡の先にいるものはもはや明白であった。
──『新種』が、いるはずだ。
そう考えを巡らせた翔は、その考えの正しさを実証するかのように、その足を足跡の進む方に一歩踏み出した。
それが既に、冰崎翔の犯した過失であったのかもしれない。その時『新種』の目論見に気付きつつあった元二にその報告をしていれば、或いは翔はそちらに向かうことは無かった。
否、若しくは翔がその足跡を見付け、その考えに至るまでのプロセスに問題があったのかもしれない。翔の考えは半分正解していて、半分間違っていた。その足跡は事実『新種』が付けたものであった。誤っていたのはあと半分。冰崎翔は、もう少し考えを巡らすべきであった。
「……この先に、『新種』が……」
そうして一歩、足跡の指す方向に足を踏み入れた翔の様子を、一人の男は静かに見ていた。が、その時、その男と翔を含めた全隊員に、元二からのその通信が入った。
「──総員警戒!! これは……」
しかしその先の言葉を聞くことは、翔にもその男にも叶わなかったのだった。彼らはまさにその時、一匹の獣と対峙していたのだから。
通信が入った瞬間、翔は何か嫌な予感を感じていた。
──おかしい。何かが気味悪い。これじゃまるで……
しかし翔はその予感が指し示す、迫り来る『新種』の獣の存在に気付くことは出来なかったのだった。
何故ならばそれは翔の正面からではなく、背後から迫っていたのだから。
「……バッカ、野郎がァァァァ!」
雪原にそのランバートの声が響く。それと同時に、翔は自らの身体が突き飛ばされる感覚を覚える。
「──っ!」
思わず数メートル程雪原を転がってから、翔は体勢を整えてその『先輩』の方を見る。
「……痛いなぁ……! 一体どういう……」
しかしその不平の声も途中で断絶される。何故ならばそこには既に『先輩』の姿はなく、ただ一匹の、白い獣だけがいたのだから。
──っ! こいつ……!
その白い獣は翔を見つけたかと思うと、微かにその口角を上げた。翔にはそれが、まるでその獣が笑っているかのように思えて、思わず身震いした。
「──総員警戒!! これは……」
その時、元二が発していたその指令の続きが、漸く翔の耳まで届いたのだった。
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