外れスキルのお陰で最強へ 〜戦闘スキル皆無!?どうやって魔王を倒せと!?〜
第111話 エーリカ
 エーリカはエルフである。
 エルフは長命種であり、数百年は余裕で生きるが、その生涯に子孫は1,2人程しか残さないので、非常に数が少ない。
 しかもそれに拍車をかけて、美形な顔つきのせいで、色々な種族に魅力的に映るせいで、性的な奴隷として人気があり、常に気を張ってないと、危険である。
 にも関わらず、エルフ達が絶滅しないのは、ひとえに、人里離れた地に、隠れ住んでるからであろう。
 だが、そんなエルフ達の中にも、その事をあまり快く思わず、外界に出てくる者たちも大勢居る。
 エーリカもその中の1人であった。
「うぅ…。ここは…。そっか、私はアイツらに…。」
 エルフとしては、まだ精神的に未熟な65歳の時に里を飛び出して来たエーリカは、呆気なく違法奴隷商人に囚われ、暗く光の入らない馬車に、放り込まれてしまった。
 暗闇は人の恐怖を煽る。これからの自分自身の末路を想像するが、その中には一切の希望は無く、あるのは変態野郎の愛玩人形として、壊れるまで酷い目に合う運命だけだ。
 暗闇の中、エーリカは後悔し、自分に絶望を与えるであろう男を、酷く恐怖した。
『こりゃツイてるな!』
『あぁ、全くだ!あの女は、エルフの中でもかなりの上玉の部類だ!』
『かぁ〜!一度で良いから、あんな女を抱きてぇ〜!』
『おいおい!上等な商品なんだ。傷を付けるんじゃねぇぞ!しかも初物っぽいぜ!』
『分かってる!言ってみただけだ。想像は自由なんだ。別に良いだろ?』
 男たちの、下世話な話が、外から聞こえてくる。
 それもまた、エーリカを恐怖させる。
 上機嫌な男たちは、馬車を走らせながら、呑気な会話を続ける。
 その為か、彼らに近付く存在に、気が付く事が出来なかった。
『ガァァァァァァァ!!!』
 彼らに近付いた影。それは、Sランクの魔物である、ドラゴンだった。彼らは、こうして気まぐれで襲いかかってくる為、この世界での旅は、運任せの危険なものであった。まぁドラゴンに襲われるなど、飛行機の墜落事故並の頻度なので、そうそうお目にかかれる存在では無いのだが。
『な、何でこんな所に!?』
『に、逃げ…ぐぎゃ!』
『クソっ!かなり勿体ないが、あの商品を囮にするしか無い!』
  奴隷商人の1人が、急いで走らせていた馬車の御者席から転がり落ち、情けない悲鳴をあげる。
 それを見た他の仲間が、エーリカを囮にそいつを助ける事を考える。こんな連中ではあるが、ちゃんとした仲間意識を持っているのだろうか。
 その仲間意識は、エーリカにとって楽になれるという希望であると同時に、その生の終わりという事で、絶望でもあった。が、既に諦めの境地に至っていたエーリカは、馬車の中で身動きせず、ただ大人しく終わりの時を待つだけだった。
「もう、お終いね…。」
 そう呟きながら、馬車の一番後ろで身体を丸める。
 それが功を奏したのだろう。
『うわぁぁぁぁ!?』
『クソがぁ!!』
 物凄い勢いで、ドラゴンが御者席に向かって激突し、馬車は半壊する。
 大型トラック並の質量が、空中で勢いをつけながら激突したのだ。エーリカが無事で済む訳も無く、衝撃で気を失い、馬車ごと吹っ飛びながら、川へと落ちてしまう。
 幸いな事に、その際に傷は打撲程度しか負わず、しかも運の良い事に、馬車の残骸である木片のお陰で浮きながら、下流へと流れて行くのだった。
「おい、大丈夫なのか!?」
「何馬鹿言ってんのよ!何かの残骸と一緒に川に浮いてたんだから、大丈夫な訳無いでしょ!?それと、アンタは気安くこの子に近付かない!意識の無い女の子の近くにアンタを置いといたら、直ぐに手を出すでしょ!?」
「し、失礼な!…た、確かにめっちゃ可愛いが…ゴクリ。」
「死ねぇ!」
 暗闇と、冷たさしか感じていなかったエーリカは、急に暖かく柔らかい感触に包まれ、そのミミにはそんなやり取りが聞こえてくる。
 ゴスっとにぶい音がしたかと思ったら、若い男の呻く声が直ぐに聞こえてくる。
「…一体、何が…。」
 重い瞼をを押し上げながら、辺りを見回す。見ると、辺りはすっかり夜の帳が落ちていて、焚き火の光が目に入った。
「お、目が覚めたか!」
「きゃあ!?」
 エーリカの声を聞きつけて、先程殴られていた若い男が大声を出し、それに驚いて軽く悲鳴をあげてしまう。そして、恐怖心を感じ、身体が震える。
「この大バカ!近付くなって、言ったでしょうがぁ!!」
「ぐぼげへぁ!?」
 若い女の声が響き渡り、男の顔面に拳が突き刺さって、勢い良くぶっ飛んでく。
 落ち着いて話を聞くと、彼女達はベルクフリートの冒険者であり、クエストで川の付近まで赴いたところ、流れてくるエーリカを発見し、慌てて引き上げたらしい。
 エーリカの運が良かったのは、助け出した冒険者が男女2人組であったことである。男だけだったら、植え付いた恐怖心により、差し伸べられた救いの手を取ることが出来なかっただろう。
 こうして、エーリカは心に傷を負ったまま保護され、何やかんやあってギルドの職員として、働く事になったのだった。最初は男性が怖いため、裏方から、段々と慣らすように受付へとなり、今では副ギルドマスターにまでなった。
 そして時が経ち、数十年後、そんな事情を一切知らない聡と、出会うのだった。
 エルフは長命種であり、数百年は余裕で生きるが、その生涯に子孫は1,2人程しか残さないので、非常に数が少ない。
 しかもそれに拍車をかけて、美形な顔つきのせいで、色々な種族に魅力的に映るせいで、性的な奴隷として人気があり、常に気を張ってないと、危険である。
 にも関わらず、エルフ達が絶滅しないのは、ひとえに、人里離れた地に、隠れ住んでるからであろう。
 だが、そんなエルフ達の中にも、その事をあまり快く思わず、外界に出てくる者たちも大勢居る。
 エーリカもその中の1人であった。
「うぅ…。ここは…。そっか、私はアイツらに…。」
 エルフとしては、まだ精神的に未熟な65歳の時に里を飛び出して来たエーリカは、呆気なく違法奴隷商人に囚われ、暗く光の入らない馬車に、放り込まれてしまった。
 暗闇は人の恐怖を煽る。これからの自分自身の末路を想像するが、その中には一切の希望は無く、あるのは変態野郎の愛玩人形として、壊れるまで酷い目に合う運命だけだ。
 暗闇の中、エーリカは後悔し、自分に絶望を与えるであろう男を、酷く恐怖した。
『こりゃツイてるな!』
『あぁ、全くだ!あの女は、エルフの中でもかなりの上玉の部類だ!』
『かぁ〜!一度で良いから、あんな女を抱きてぇ〜!』
『おいおい!上等な商品なんだ。傷を付けるんじゃねぇぞ!しかも初物っぽいぜ!』
『分かってる!言ってみただけだ。想像は自由なんだ。別に良いだろ?』
 男たちの、下世話な話が、外から聞こえてくる。
 それもまた、エーリカを恐怖させる。
 上機嫌な男たちは、馬車を走らせながら、呑気な会話を続ける。
 その為か、彼らに近付く存在に、気が付く事が出来なかった。
『ガァァァァァァァ!!!』
 彼らに近付いた影。それは、Sランクの魔物である、ドラゴンだった。彼らは、こうして気まぐれで襲いかかってくる為、この世界での旅は、運任せの危険なものであった。まぁドラゴンに襲われるなど、飛行機の墜落事故並の頻度なので、そうそうお目にかかれる存在では無いのだが。
『な、何でこんな所に!?』
『に、逃げ…ぐぎゃ!』
『クソっ!かなり勿体ないが、あの商品を囮にするしか無い!』
  奴隷商人の1人が、急いで走らせていた馬車の御者席から転がり落ち、情けない悲鳴をあげる。
 それを見た他の仲間が、エーリカを囮にそいつを助ける事を考える。こんな連中ではあるが、ちゃんとした仲間意識を持っているのだろうか。
 その仲間意識は、エーリカにとって楽になれるという希望であると同時に、その生の終わりという事で、絶望でもあった。が、既に諦めの境地に至っていたエーリカは、馬車の中で身動きせず、ただ大人しく終わりの時を待つだけだった。
「もう、お終いね…。」
 そう呟きながら、馬車の一番後ろで身体を丸める。
 それが功を奏したのだろう。
『うわぁぁぁぁ!?』
『クソがぁ!!』
 物凄い勢いで、ドラゴンが御者席に向かって激突し、馬車は半壊する。
 大型トラック並の質量が、空中で勢いをつけながら激突したのだ。エーリカが無事で済む訳も無く、衝撃で気を失い、馬車ごと吹っ飛びながら、川へと落ちてしまう。
 幸いな事に、その際に傷は打撲程度しか負わず、しかも運の良い事に、馬車の残骸である木片のお陰で浮きながら、下流へと流れて行くのだった。
「おい、大丈夫なのか!?」
「何馬鹿言ってんのよ!何かの残骸と一緒に川に浮いてたんだから、大丈夫な訳無いでしょ!?それと、アンタは気安くこの子に近付かない!意識の無い女の子の近くにアンタを置いといたら、直ぐに手を出すでしょ!?」
「し、失礼な!…た、確かにめっちゃ可愛いが…ゴクリ。」
「死ねぇ!」
 暗闇と、冷たさしか感じていなかったエーリカは、急に暖かく柔らかい感触に包まれ、そのミミにはそんなやり取りが聞こえてくる。
 ゴスっとにぶい音がしたかと思ったら、若い男の呻く声が直ぐに聞こえてくる。
「…一体、何が…。」
 重い瞼をを押し上げながら、辺りを見回す。見ると、辺りはすっかり夜の帳が落ちていて、焚き火の光が目に入った。
「お、目が覚めたか!」
「きゃあ!?」
 エーリカの声を聞きつけて、先程殴られていた若い男が大声を出し、それに驚いて軽く悲鳴をあげてしまう。そして、恐怖心を感じ、身体が震える。
「この大バカ!近付くなって、言ったでしょうがぁ!!」
「ぐぼげへぁ!?」
 若い女の声が響き渡り、男の顔面に拳が突き刺さって、勢い良くぶっ飛んでく。
 落ち着いて話を聞くと、彼女達はベルクフリートの冒険者であり、クエストで川の付近まで赴いたところ、流れてくるエーリカを発見し、慌てて引き上げたらしい。
 エーリカの運が良かったのは、助け出した冒険者が男女2人組であったことである。男だけだったら、植え付いた恐怖心により、差し伸べられた救いの手を取ることが出来なかっただろう。
 こうして、エーリカは心に傷を負ったまま保護され、何やかんやあってギルドの職員として、働く事になったのだった。最初は男性が怖いため、裏方から、段々と慣らすように受付へとなり、今では副ギルドマスターにまでなった。
 そして時が経ち、数十年後、そんな事情を一切知らない聡と、出会うのだった。
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