外れスキルのお陰で最強へ 〜戦闘スキル皆無!?どうやって魔王を倒せと!?〜
第110話 奪われました
「おぉ!サトシ!戻ったのか…って、そのボロボロの奴は?」
 ギルドに入ると、直ぐにルドルフが声をかけてくるが、やはりボロボロな『鏖殺』を見て、動きを止める。
「今朝から騒ぎになってる、例の奴ですよ。今は完璧に無力化してるので、二日酔いのルドルフさんでも、余裕で倒せます。」
「ははは…。そうか。というか、そいつがあのお尋ね者か。何と言うか、危ないヤツには見えないな。」
「そうですね。せっかくイケメンに産んでもらったのに勿体ない。クソ野郎じゃなければ、良い人と巡り合えて、幸せな人生でも送れただろうに。羨ましい限りです。」
 聡は肩を竦めながら言う。
「おいおい。この顔面の状態の理由は、腹いせとかそういう事なのか?」
「いや〜、ただの偶然ですよ。目で見た範囲内にある物を消せるっぽかったので、それを防ぐ為にガツンとやったんです。別に狙った訳じゃ無いです。」
 顔に大きな青アザを作っている『鏖殺』に、憐れみを込めた視線を送る。本来なら血だらけの両手足に注目すべきなのだが、ルドルフは痛々しいほど腫れている顔が気になったようだ。
「なるほど。そういう事なのか。ま、まぁサトシは楽しんで戦うタイプじゃないもんな。」
「あははは…。では、ルドガーさんに報告してきます。さっさとしないと、エーリカとフラウに余計に心配させますし。執務室で良いですかね?」
「あぁ、朝から篭もりっきりのはずだ。エーリカとフラウは、別室で待機中だ。別室は執務室の直ぐ横だから、先に声を掛けてから、ルドガーに会うといい。」
「分かりました。ありがとうございます。」
 どうやらルドルフは、聡の戦い方について、らしくないと感じていたらしく、その精神状態を心配したのだ。
 その気遣いには触れず、聡は頷いて受付嬢に声を掛け、奥に通してもらう。
「その方が例の…。」
「えぇ、例の奴です。奥に連れてっても問題無いですか?まずいなら、ここで見張ってて頂きますが。」
 受付嬢は緊張気味に、『鏖殺』を見る。聡が対処に向かったのを知っているのだろう。
「サトシ様がお見えになったら、恐らく捕らえてくるだろうから、そのまま通すように、ルドガー様に言われています。」
「そうですか。では、後は私が引き受けます。」
「「「了解しました。」」」
 敬礼しながら、『鏖殺』を此方に引き渡してくれる兵達。何故だか好感度というか、尊敬度が異様に高い気がするが、見なかった事にする。
「よっこらせっと。では、お疲れ様です。」
 軽く兵達に会釈してから、ギルドの奥に入って行く。
 そんな聡を受付嬢は好意的な目で、兵達は尊敬の念を込めて見送るのだった。
「さてと、ここか?…なら、【ヒュプノス】。」
 闇属性魔法の【ヒュプノス】を使い、更に深い眠りへと、『鏖殺』を誘う。これなら聡が効果を解くまで、対象の命が続く限り眠らせ続ける。
 『鏖殺』を、ルドガーの執務室前に放り投げてから、エーリカとフラウが待ってる部屋のドアをノックする。
『どうぞ。』
 中からエーリカが返事をする。その声を聞き、何故だか自然と笑みを浮かべてしまう口元を押さえて、普通の表情に戻してから中に入る。
「ただいま。」
「…サトシ!」
「え、サトシ様!?」
 声を掛けながら中に入ると、あんまり良い雰囲気とは言えない空気感で、2人はソファに座って紅茶を飲んでいたが、聡の姿を見るなり立ち上がり、駆け寄ってくる。
「少し知り合いの所に顔を出してたら、遅くなっちゃったよ。悪いね。」
 2人の様子に、聡は苦笑いを浮かべる。化け物過ぎるステータスを見せてなお、自身を心配してくれているのかと、そう思ったのだ。
「悪いね、じゃ無いわよ!サトシにしては遅いって、フラウさんと心配してたんだから!」
 聡の呑気な物言いは、エーリカを怒らせてしまったようで、ものすごい剣幕で詰め寄って来る。
「ご、ごめん!何か必ず埋め合わせするから、許してもらえないかな?」
 両手を合わせながら言うと、『その言葉を待ってました』とばかりに、エーリカは満面の笑みを浮かべ、そして少し恥ずかしそうに言う。
 フラウもどこか、恥ずかしそうである。
「…なら、頬にキスして。」
「はぁ、頬にキスね…。…はぁ!?キスゥ!?魚の鱚じゃなくて、あのキスの事か!?あれを俺にしろと!?そんな事俺がしたら、お詫びになってないどころか、即お縄になっても言い訳出来ないと思うんだが!?」
 聡は混乱のあまり、あちこち目を泳がせながら叫ぶ。
「魚のきすっていうのは聞いた事無いけど、私の言うキスは、口付けの事で間違い無いわね。やらなきゃ許してあげない。」
「いや、しかし、その…。そ、そういうのは、家族とか、恋人とかとすべきだよ!うん、その方が良い!」
 1人で勝手に納得しながら、後退りする聡。だが、何時の間にか背後にフラウが回り込んでおり、逃走は不可能な状態に陥っていた。
「ふ、フラウ?どうしてドアを塞ぐように立ってるのかな?ついでに目が怖い。」
 口元が引き攣り、足は竦んで動きが悪くなる。どうにも調子が出ない。おかしいと思っている内に、エーリカが飛び付いてくる。
「大人しく、キスしなさい!」
「い、いや、まっ、んん〜〜!?」
 自分がエーリカの頬にキスをしろという要求な筈が、何故、彼女が飛び付いてくるのか理解出来なかった聡は、反射的に正面を向いてしまう。
 その結果として、聡がエーリカを優しく受け止めながら、マウストゥーマウスでキスされてしまうという、何ともヤバい状況へと、至ってしまったのだった。
 ギルドに入ると、直ぐにルドルフが声をかけてくるが、やはりボロボロな『鏖殺』を見て、動きを止める。
「今朝から騒ぎになってる、例の奴ですよ。今は完璧に無力化してるので、二日酔いのルドルフさんでも、余裕で倒せます。」
「ははは…。そうか。というか、そいつがあのお尋ね者か。何と言うか、危ないヤツには見えないな。」
「そうですね。せっかくイケメンに産んでもらったのに勿体ない。クソ野郎じゃなければ、良い人と巡り合えて、幸せな人生でも送れただろうに。羨ましい限りです。」
 聡は肩を竦めながら言う。
「おいおい。この顔面の状態の理由は、腹いせとかそういう事なのか?」
「いや〜、ただの偶然ですよ。目で見た範囲内にある物を消せるっぽかったので、それを防ぐ為にガツンとやったんです。別に狙った訳じゃ無いです。」
 顔に大きな青アザを作っている『鏖殺』に、憐れみを込めた視線を送る。本来なら血だらけの両手足に注目すべきなのだが、ルドルフは痛々しいほど腫れている顔が気になったようだ。
「なるほど。そういう事なのか。ま、まぁサトシは楽しんで戦うタイプじゃないもんな。」
「あははは…。では、ルドガーさんに報告してきます。さっさとしないと、エーリカとフラウに余計に心配させますし。執務室で良いですかね?」
「あぁ、朝から篭もりっきりのはずだ。エーリカとフラウは、別室で待機中だ。別室は執務室の直ぐ横だから、先に声を掛けてから、ルドガーに会うといい。」
「分かりました。ありがとうございます。」
 どうやらルドルフは、聡の戦い方について、らしくないと感じていたらしく、その精神状態を心配したのだ。
 その気遣いには触れず、聡は頷いて受付嬢に声を掛け、奥に通してもらう。
「その方が例の…。」
「えぇ、例の奴です。奥に連れてっても問題無いですか?まずいなら、ここで見張ってて頂きますが。」
 受付嬢は緊張気味に、『鏖殺』を見る。聡が対処に向かったのを知っているのだろう。
「サトシ様がお見えになったら、恐らく捕らえてくるだろうから、そのまま通すように、ルドガー様に言われています。」
「そうですか。では、後は私が引き受けます。」
「「「了解しました。」」」
 敬礼しながら、『鏖殺』を此方に引き渡してくれる兵達。何故だか好感度というか、尊敬度が異様に高い気がするが、見なかった事にする。
「よっこらせっと。では、お疲れ様です。」
 軽く兵達に会釈してから、ギルドの奥に入って行く。
 そんな聡を受付嬢は好意的な目で、兵達は尊敬の念を込めて見送るのだった。
「さてと、ここか?…なら、【ヒュプノス】。」
 闇属性魔法の【ヒュプノス】を使い、更に深い眠りへと、『鏖殺』を誘う。これなら聡が効果を解くまで、対象の命が続く限り眠らせ続ける。
 『鏖殺』を、ルドガーの執務室前に放り投げてから、エーリカとフラウが待ってる部屋のドアをノックする。
『どうぞ。』
 中からエーリカが返事をする。その声を聞き、何故だか自然と笑みを浮かべてしまう口元を押さえて、普通の表情に戻してから中に入る。
「ただいま。」
「…サトシ!」
「え、サトシ様!?」
 声を掛けながら中に入ると、あんまり良い雰囲気とは言えない空気感で、2人はソファに座って紅茶を飲んでいたが、聡の姿を見るなり立ち上がり、駆け寄ってくる。
「少し知り合いの所に顔を出してたら、遅くなっちゃったよ。悪いね。」
 2人の様子に、聡は苦笑いを浮かべる。化け物過ぎるステータスを見せてなお、自身を心配してくれているのかと、そう思ったのだ。
「悪いね、じゃ無いわよ!サトシにしては遅いって、フラウさんと心配してたんだから!」
 聡の呑気な物言いは、エーリカを怒らせてしまったようで、ものすごい剣幕で詰め寄って来る。
「ご、ごめん!何か必ず埋め合わせするから、許してもらえないかな?」
 両手を合わせながら言うと、『その言葉を待ってました』とばかりに、エーリカは満面の笑みを浮かべ、そして少し恥ずかしそうに言う。
 フラウもどこか、恥ずかしそうである。
「…なら、頬にキスして。」
「はぁ、頬にキスね…。…はぁ!?キスゥ!?魚の鱚じゃなくて、あのキスの事か!?あれを俺にしろと!?そんな事俺がしたら、お詫びになってないどころか、即お縄になっても言い訳出来ないと思うんだが!?」
 聡は混乱のあまり、あちこち目を泳がせながら叫ぶ。
「魚のきすっていうのは聞いた事無いけど、私の言うキスは、口付けの事で間違い無いわね。やらなきゃ許してあげない。」
「いや、しかし、その…。そ、そういうのは、家族とか、恋人とかとすべきだよ!うん、その方が良い!」
 1人で勝手に納得しながら、後退りする聡。だが、何時の間にか背後にフラウが回り込んでおり、逃走は不可能な状態に陥っていた。
「ふ、フラウ?どうしてドアを塞ぐように立ってるのかな?ついでに目が怖い。」
 口元が引き攣り、足は竦んで動きが悪くなる。どうにも調子が出ない。おかしいと思っている内に、エーリカが飛び付いてくる。
「大人しく、キスしなさい!」
「い、いや、まっ、んん〜〜!?」
 自分がエーリカの頬にキスをしろという要求な筈が、何故、彼女が飛び付いてくるのか理解出来なかった聡は、反射的に正面を向いてしまう。
 その結果として、聡がエーリカを優しく受け止めながら、マウストゥーマウスでキスされてしまうという、何ともヤバい状況へと、至ってしまったのだった。
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