外れスキルのお陰で最強へ 〜戦闘スキル皆無!?どうやって魔王を倒せと!?〜

血迷ったトモ

第96話 怒られました

「うん、的確に命中させられてて、結構良かったね。他の属性に比べて、威力が低い水属性魔法で一撃は、中々出来ることじゃないよ。」

 破壊力という面では、他の属性である火や土、雷などに比べると、些か劣るのが水属性魔法だが、しっかりと弱点に当てたので、こうして一撃で倒す事が出来たのだ。

 その為聡は、満面の笑みを湛えながら、ニコラ達の方に向かうが、その途中で2人がこちらに駆け寄って来る。

「「サトシ様!大丈夫(ですか)!?」」

「え、う、うん、大丈夫だけど?」

 自分の周りをグルグル回って、身体中をペタペタと確認し始めた2人に、聡は戸惑いながらも答える。

「2人ともどうしたんだ?」

「どうしたもこうしたもありません!先程ゴブリン達の棍棒を、真正面から受け止めたじゃないですか!」

「そうだよ!あれで普通の人が、怪我しない訳無いじゃない!」

 涙目になりながら、怪我してないか見て回る2人の言葉に、今更ながらに心配させた事に気付く聡。

「…あ、そっか。普通なら怪我するとまずいのか。」

 完全にズレた点で納得をする聡。
 この300年間で、すっかり自身の身の安全を省みるという感覚を、すっかり無くしてしまった聡には、意識しないと普通に怪我するような事を、平然とやってのけてしまうのだ。

「良いですか?サトシ様が怪我をされたら、色んな人が悲しむんですよ?」

「そうだよ!私が言えた事じゃないけど、危ない事しないで!」

「りょ、了解です。今度から気を付けます…。」

 思った以上に心配をかけたのか、怒られてしまった聡は、少し気落ちしながら頷く。

「気を付けて頂ければ幸いです。」

「気を付けてね!」

 ゴブリンキングを素手で屠れる人間を、普通の人間と同等に扱っていいものか、悩みどころではあるが、そのように扱ってくれるのは、聡にとっては嬉しい事なので、しっかりと反省する事にした。

「えっと、次はフラウさんが攻撃でも良いか?」

 せっかく外に出てるのだから、序にフラウの戦闘能力も見ておきたかった聡は、ニコラに聞いてみる。

「うん、良いよ。…次は、気を付けてね。」

「分かったよ。じゃ、フラウさん、あっちから1匹来るんで、やって下さい。」

 丁度いいタイミングで、ゴブリンらしき気配がこちらに来たので、有難く利用させてもらう事にし、聡はそちらに向かって歩き出そうとした。

「お待ち下さい。」

 しかし、フラウは待ったをかける。

「え?前衛は必要ありませんか?」

 人は見かけに寄らないとはいえ、今のフラウは何の武器も装備していない為、聡は立ち止まって聞く。

「はい、問題ありません。寧ろ、私の魔法は効果範囲が広いので…。」

「あ、フレンドリーファイアの可能性があるって事ですね。」

「ふ、ふれんどりーふぁいあ?」

「あ、いや、味方に当たるって事です。」

「なるほど?…そういう訳なので、近付ききる前に、倒します。」

 思わず英語で呟いてしまい、フラウにキョトンとした顔をされてしまう。

 確かにフラウ達、吸血鬼が得意とする魔法は、派手で効果範囲が広いものであるので、聡は大人しく後ろに下がる事にする。
 別にくらっても無傷だが、フラウが味方に当てても気分は良くないだろうし、何より実際に見てみたい・・・・・から、口角を少し上げながら、集中しているフラウに視線をやる。

「…目視出来ました。」

 40メートル程先の茂みから、またもやゴブリンらしき姿がこちらを窺っているのが、聡の視界に入った。

「はい…。いきます!【降り注ぎ、敵を穿て、ブラッディレイン】!」

 何やら禍々しい雰囲気の魔法陣が、ゴブリンの上空に現れたかと思うと、そこからドス黒い血液のような液体が降り注ぎ、ゴブリンごと地形を破壊し尽くす。

「ほぉ…。これがあの…。」

 これが吸血鬼の得意とする魔法の、血液魔法である。自身や他人の血液を消費し、自由自在に操る他、付加効果を発生させて大規模破壊などを可能とする魔法である。
 また、この血液魔法Lv:1で行使可能となる、【エナジードレイン】によってHPとMPを血液を介して吸い取る事が出来るようになる。

 本では何度も勉強したが、実際にこうして見るのは初めてなので、聡は興味津々といった様子で、食い入るように観察をする。

 魔王城での300年間で、この世界で生きていく上で、非常に満足出来る程の知識を手に入れる事が出来たが、勉強する上で満足出来ない事が1つあった。

 それは実際に対象を観察出来ず、実験なども一切出来ない事である。

「お疲れ様です。ところで今の魔法は、使うとどのぐらいの負担があるんですか?」

「えっと、血液が少し足りなくなって、フラっとするくらいです。ですが、禁断症状までは、あと10回以上は使えると思います。」

「なるほど。使う時のイメージとしては、どこから降らそうとかイメージはしてるんですか?それとも、攻撃対象を指定するだけですか?」

「攻撃対象を指定するだけです。」

 食い気味に質問する聡に対して、少し戸惑いながらもちゃんと答えてくれるフラウ。
 こういう感覚的な事までは、本だと分からない事が多かったので、もうそれは満面の笑みで質問を次々と繰り出す聡。

 そんな聡達の傍で、目を大きく見開いて、震えている人影があった。

「…え、えぇぇぇぇぇぇ!?フラウさんって、吸血鬼だったのぉ!?」

「あれ?」

 てっきりコルネリウスから話がいってると思っていた聡は、唐突に叫んだニコラを見ながら、首を傾げるのだった。

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  • 血迷ったトモ

    実は私、Twitterアカウントを持ってます。名前はそのままで、『血迷ったトモ』です。

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