外れスキルのお陰で最強へ 〜戦闘スキル皆無!?どうやって魔王を倒せと!?〜
第89話 結ばれました
 聡は紙を広げてから、万年筆を取り出す。何とこの世界では、紙は過去の勇者が一儲けしようと、中国の蔡倫が作成したような、様々な植物の繊維をドロドロに混ぜ、乾燥させたものが作られた為、比較的安く手に入る。更には、手の汚れない筆という事で、万年筆も職人にそのアイディアを伝えて、無理言って開発させたようで、高価だが手に入りやすい代物となっている。
 職人達に『お疲れ様です』と、憐憫の情を感じながらも、その便利さには変えられないので、その苦労に精一杯の感謝を、心の中で言いながら、聡は契約書を書いていく。
・フラウ(以下甲とする)は、サトシ・アライ(以下乙とする)と、2ヶ月の短期労働契約を締結する。
・甲は、一方的に上記契約を即時破棄する事が出来る。
・乙から破棄を申し出た場合は、両者の同意により、即時破棄できるものとする。
・申し出が無い限り、上記契約は更新されるものとする。
・上記契約が6回以上更新された後、どちらかが契約破棄を申し出た場合は、次回の更新までは、契約は有効とする。
・職務の遂行にあたり、甲が乙に、または他者に損害を被らせた場合、全て乙が負担する。
・乙が甲に対して、犯罪行為をなした場合、または精神的苦痛を与えた場合、更新回数に関係無く、即時契約破棄が出来る。
「よし、これでどうでしょうか?」
 フラウ用と自身用を書き終わった聡は、わざと大事な文言をいくつか抜かして、フラウに契約書を手渡す。
 普通なら気付くだろうが、果たしてフラウはどうだろうかと、聡は契約書に目を通していく彼女に視線を向ける。
「…はい、全て読み終わりました。少し私に有利過ぎるとは思いますが、確かに私には財力が無いので、損害はサトシ様に補填して頂く他ありません…。」
 小声で『ご迷惑をおかけしないようにしなければ…!』と呟くフラウに、聡は口調を崩して大声でツッコミを入れていしまう。
「え、いや、そこですか!?もっと気にする所があると思うんですけど!?」
「え?どこですか?」
「いや、給料ですよ!給金!お金!労働には対価を!そして休日!」
「…お金?休日?」
 心底分からない風に首を傾げるフラウに、聡は一気に気が重くなる。
「まさかとは思いますが、『恩を返すのだから、お金も休みも要らない!』とは言いませんよね?」
「…そのまさかなのですが。」
「どこのブラック企業ですか!俺はフラウさんを、そんな乱雑に扱うつもりは、一切合切ありません!もっと丁寧に、優しく扱います!」
 フラウの覚悟に、聡は色んな意味で目頭が熱くなってくる。契約書の段階で、給与も、休日も、労働時間すらも定めない何て、どこのブラック企業でもやらない。…まぁ、ブラック企業は、そんな契約書を完璧に無視して、給与未払いに始まり、パワハラ、セクハラ、更には強制的な休日出勤や、時間外労働を強いるのだが。
 そんな感じの会社を、聡の知り合いの弁護士が、従業員からの依頼で、裁判所に提訴する事を伝えに行ったら、会社の社長が、『労働環境を改善したら、会社が潰れてしまう!お前はウチの会社を潰して、大勢の従業員を路頭に迷わせる気か!』などと罵って来たそうだが、弁護士からすれば、『お前の手腕が悪いから、潰れるんだろ?俺のせいにすんなや。というか、人を使い潰す事でしか存続出来ない会社なんて、さっさと潰れろ!』と思ったそうだ。
 話が大分逸れたが、聡としては、ちゃんとした契約書を作りたいのだ。
「でも給与という名目にすると、何だか赤の他人の様な扱いですので、何か良い方法は無いでしょうか?」
「…でしたら、私の財産を、フラウさんが自由に使える、というのはどうでしょうか?仕事に使うも良し、趣味に使うも良しって感じですね。」
「…どちらにせよ、サトシ様が私に手渡す形になるので、無駄遣いは避けられますね。分かりました。それでお願いします。」
 勝手にフラウが納得してくれたので、聡は肯定せずに次の話をする。
「じゃあ次は、休日ですね。休日は、週に2日で、フラウさんが自由に決められます。で、休日では私を主人扱い禁止って事で。」
「そ、それは…。分かりました。休日は、主人扱いしない事を約束致します。」
 一瞬、迷う様な表情を見せるが、直ぐに渋々ながらも了承するフラウ。
 この後、30分程かけて、細かい契約内容を決定していくのだった。
「では、これから、末永くよろしくお願いします、ご主人様。」
「…こちらこそ、よろしくお願いします。」
 太陽の様に眩しい笑顔を見せられて、聡は顔を引き攣らせながらも、何とか言葉を返す。
 こうして聡とフラウの間に、暫定的ではあるが、労働契約が結ばれるのであった。
 職人達に『お疲れ様です』と、憐憫の情を感じながらも、その便利さには変えられないので、その苦労に精一杯の感謝を、心の中で言いながら、聡は契約書を書いていく。
・フラウ(以下甲とする)は、サトシ・アライ(以下乙とする)と、2ヶ月の短期労働契約を締結する。
・甲は、一方的に上記契約を即時破棄する事が出来る。
・乙から破棄を申し出た場合は、両者の同意により、即時破棄できるものとする。
・申し出が無い限り、上記契約は更新されるものとする。
・上記契約が6回以上更新された後、どちらかが契約破棄を申し出た場合は、次回の更新までは、契約は有効とする。
・職務の遂行にあたり、甲が乙に、または他者に損害を被らせた場合、全て乙が負担する。
・乙が甲に対して、犯罪行為をなした場合、または精神的苦痛を与えた場合、更新回数に関係無く、即時契約破棄が出来る。
「よし、これでどうでしょうか?」
 フラウ用と自身用を書き終わった聡は、わざと大事な文言をいくつか抜かして、フラウに契約書を手渡す。
 普通なら気付くだろうが、果たしてフラウはどうだろうかと、聡は契約書に目を通していく彼女に視線を向ける。
「…はい、全て読み終わりました。少し私に有利過ぎるとは思いますが、確かに私には財力が無いので、損害はサトシ様に補填して頂く他ありません…。」
 小声で『ご迷惑をおかけしないようにしなければ…!』と呟くフラウに、聡は口調を崩して大声でツッコミを入れていしまう。
「え、いや、そこですか!?もっと気にする所があると思うんですけど!?」
「え?どこですか?」
「いや、給料ですよ!給金!お金!労働には対価を!そして休日!」
「…お金?休日?」
 心底分からない風に首を傾げるフラウに、聡は一気に気が重くなる。
「まさかとは思いますが、『恩を返すのだから、お金も休みも要らない!』とは言いませんよね?」
「…そのまさかなのですが。」
「どこのブラック企業ですか!俺はフラウさんを、そんな乱雑に扱うつもりは、一切合切ありません!もっと丁寧に、優しく扱います!」
 フラウの覚悟に、聡は色んな意味で目頭が熱くなってくる。契約書の段階で、給与も、休日も、労働時間すらも定めない何て、どこのブラック企業でもやらない。…まぁ、ブラック企業は、そんな契約書を完璧に無視して、給与未払いに始まり、パワハラ、セクハラ、更には強制的な休日出勤や、時間外労働を強いるのだが。
 そんな感じの会社を、聡の知り合いの弁護士が、従業員からの依頼で、裁判所に提訴する事を伝えに行ったら、会社の社長が、『労働環境を改善したら、会社が潰れてしまう!お前はウチの会社を潰して、大勢の従業員を路頭に迷わせる気か!』などと罵って来たそうだが、弁護士からすれば、『お前の手腕が悪いから、潰れるんだろ?俺のせいにすんなや。というか、人を使い潰す事でしか存続出来ない会社なんて、さっさと潰れろ!』と思ったそうだ。
 話が大分逸れたが、聡としては、ちゃんとした契約書を作りたいのだ。
「でも給与という名目にすると、何だか赤の他人の様な扱いですので、何か良い方法は無いでしょうか?」
「…でしたら、私の財産を、フラウさんが自由に使える、というのはどうでしょうか?仕事に使うも良し、趣味に使うも良しって感じですね。」
「…どちらにせよ、サトシ様が私に手渡す形になるので、無駄遣いは避けられますね。分かりました。それでお願いします。」
 勝手にフラウが納得してくれたので、聡は肯定せずに次の話をする。
「じゃあ次は、休日ですね。休日は、週に2日で、フラウさんが自由に決められます。で、休日では私を主人扱い禁止って事で。」
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