外れスキルのお陰で最強へ 〜戦闘スキル皆無!?どうやって魔王を倒せと!?〜

血迷ったトモ

第51話 事情聴取中(2)

「では、次の質問だ。その黒髪黒目は、何か勇者と関係があるのか?」

「勇者とは関係無いと思います。」

 勇者には会ったことも、すれ違った事すらも無いので、キッパリ答える。

「あの異世界人・・・・とは関係無いのか。」

 ルドガーは呟く。そう。今までの記述でお分かりだろうが、Lv:910にまで至った勇者とは、異世界の日本から召喚された、黒髪黒目の異世界人だったのだ。
 その勇者は、現在、生死不明の状態で、一部の人間からは神格化され、崇め奉られているそうだ。

「それじゃあ、その強大な力は、どのように手に入れたんだ?報告書を見る限り、サトシは魔力だけでなく、体術にも秀でているそうだが。」

 手元の書類に目を通すルドガー。その中身が非常に気になるところだが、今は取り敢えず、ちゃんと質問に答える事にする。

「強敵との戦闘と、自己研鑽です。誰かに師事していた事はありません。たまに、友人からアドバイスを貰う程度でした。」

「その強敵の名は?」

「言いたくありません。けれど、人間に友好的な種族では無いとだけ言っておきます。」

 言いたくないのは当然である。直接トイフェルと戦った事があるのは、今現在では長命種のエルフ族や妖精族に、数人残っている程度なのだ。

「その敵は、ランク付けするとどのくらいだ?」

「最低でもSランクは下らないかと。」

 本来なら魔王はSSSランクになるが、Sを下らない・・・・と言ってるので、間違いは無い。

 屁理屈ばかり捏ねていて、若干頭が痛んできた聡。『そろそろ終わってくんないかな〜』などと考えていると、応接室のドアがノックされる。

「誰だ?」

『エーリカです。お茶をお持ちしました。』

「おう、入ってくれ。」

「失礼します。」

 ルドガーが入室を許可すると、エーリカがカップが3つ・・乗せられた円形のトレーを持って入って来る。

「ん?1人1杯で十分だが?」

「あぁ、これは私の分です。」

「は?」

「私の分です。何か文句がおありですか?」

 無表情で同じ言葉を繰り返し、ルドガーに圧力をかけるエーリカ。

「い、いや、副ギルドマスター・・・・・・・・である君なら、話を聞いても問題は無いか。」

「へ?エーリカさんって副ギルドマスターなんですか?」

「えぇ、そうよ。勤続年数だけは無駄に長いから、自動的にこの地位になったの。その分、面白い話を沢山知ってるのよ?そこのルドガーなんて、まだ若い時に、私に大量の花を「うわぁぁぁ!?ちょ、待ってくれ!!」…うるさいですよ?」
 
 このように、ギルドの内部情報を大量に知っている訳で、エーリカを野放しにはしたくないギルドとしては、相応のポストと報酬を用意し、彼女を今の仕事に引き止めているのだろう。長年の知恵が、役に立つという理由もあるのだろうが。

「はぁ、はぁ…。全く、とんでもない事を口にするな。それよりも、お茶は別の者に頼んだ筈だが?君には別の仕事があるとも聞いている。」

「その者と代わってもらいました。」

「は?」

「代わってもらいました。何か文句がおありですか?」

「い、いえ、ございません。」

 また何か、黒歴史を暴露されでもしたら、翌日からギルマスとしての地位が、危ういところなので、エーリカへの追求は諦めるルドガー。その背中には、酷く哀愁が漂っていた。

「では、私も話を聞かせてもらいますね。」

「はい…。」

  酷く落ち込んだ様子のルドガーの対面・・のソファに腰掛けるエーリカ。

「え?」

 つまり、今、驚きの声をあげた、聡の隣に腰掛けた事になる。2人の間には、拳1つ分程度の距離しか空いていない。
 それに聡以上に驚愕したのは、対面で呆けた面をしているルドガーであった。

「な、何故そっちに座るんだ?」

「いつも、ギルマスの隣に座ると、加齢し…、にお…、いえ、何でもありません。」

 非常に言いにくそうに、口篭るエーリカ。

「そうなのか!?俺ってば、もうそんな歳なのか!?」

 それに、オーバーにショックを受けるルドガーは、悲鳴のような声をあげている。

「まぁ冗談はさておき、ギルマスの様な、見た目が恐ろしい人から、尋問なんてされたら、サトシさんが可哀想なので、弁護をしようかと思いまして。」

「え?だ、大丈夫ですよ?」

「私、お邪魔ですか?」

「い、いえ、居てくださると、とても心強いです。」

 うるうるとした瞳で、上目遣いで言われ、咄嗟にそんな事を口にしてしまう。

「そう?なら良かったわ。」

 微笑みを浮かべながら、エーリカは言う。
 良いように話を転がされたルドガーは、顔を引き攣らせながら、口を開く。

「じゃ、じゃあ話の続きをするか。えっと、次は、サトシのステータスを見せてもらう事は可能か?」

「嫌です。断固拒否させていただきます。」

「ここに来て、一番の拒否か。ちなみに、その理由はなんだ?」

「やましい事は一切ありませんが、確定で今後の私の人生は滅茶苦茶になり、自由は欠片も無くなる事待った無しだからです。」

 300年前の召喚されたての時点でもヤバいのに、今現在の馬鹿げた数値、及びスキル『魔法創造』、称号の『亜神』など見られる訳には絶対にいかない。
 その思いから、少し強く否定してしまう聡。

「ギルマス。サトシさんが嫌がってますので、その質問は止めてください。」

 と、そこに、エーリカからの援護射撃が放たれる。

「うぐ。…やりづらいな。で、では、家族構成を聞こうか。」

「両親と妹1人。ただし、全員の生死は不明で、それを確認する術も、連れて来る手段も持ち合わせていません。まぁ恐らく、死んでるとは思います。」

「そ、そうか…。え、エーリカ。そんな目で見るな。」

「ギルマスが酷い事を聞くからです。…サトシさん。安心して。私は長命種のエルフだから、少なくとも貴方が寿命を迎えるまでは生きてる筈よ。いつでも頼って良いからね?」

「は、はぁ…。ありがとうございます。」

 急にエーリカが優しい態度をとってきた為、聡の頭の上には、クエスチョンマークか大量に浮かぶのだった。

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