外れスキルのお陰で最強へ 〜戦闘スキル皆無!?どうやって魔王を倒せと!?〜

血迷ったトモ

第48話 漸くらしくなってきました

 ルドルフが勝手に依頼を吟味始めてから5分後、『これだ!』と突然声をあげたかと思ったら、聡に1枚の依頼書を押し付けてきた。

「『薬草採取』ですか?これなら、俺の希望通りですよね?」

 それに目を通し、首を捻る聡。なぜなら、戦闘のせの字も無いような、実に平和的な内容の依頼だったのだ。
 別に聡としては問題無いのだが、勝手に決めたルドルフが、見かけ通りの平和な依頼を渡してくるとも思えないので聞いてみる。

「と思うだろうが、場所と薬草の種類を見てみろ。」

「何々?『ルング草を採取しに、小鬼の森へと向かってくれ。10本毎に金貨1枚支払う。期限は本日から5日。』ですか。確かルング草って、お年を召した紳士諸君・・・・のお薬の材料ですよね?」

 この依頼の対象となっているルング草は、夜のお薬であり、ルング草とその他、数種類の薬草を混ぜた状態で、薬として販売される。その効果と、安全性から、古くから扱われており、子供を成すのが仕事の一環でもある貴族たちを始め、あらゆる男性から好まれて使用されている。

「あぁ、そうだ。そして、その薬草が大好物の魔物が居る。」

 だが1つ、このルング草には、大きな欠点があった。

「ゴブリンですか。」

 そう。この薬草の群生地帯にはきまって、ゴブリンの巣がセットになっているのだ。
 1匹見れば、100匹は居ると言われている程の、脅威の繁殖能力を備えた魔物である。
 大体のファンタジー系の物語同様、この世界においても、醜悪な見た目であり、性欲旺盛で、地球のヨーロッパの民間伝承にあるような、妖精の要素が欠片も見当たらない存在である。
 その見た目と性質から、全ての女性から嫌悪されている。
 しかし一方で、一部の男性からは、その欲の高さにあやかり、睾丸が薬として重宝されており、鮮度と状態が良いものは、それなりの高値で取引される。

「その通りだ。弱いが、奴らは徒党を組むからな。兎に角面倒くさいんだ。Eランクにはキツい仕事だが、慣れた冒険者だと、もっと効率の良い依頼があるから、割に合わないって理由で誰も受注しないんだ。」

「なるほど。で、その面倒くさい依頼を、俺がやる事のメリットって何ですか?」

「ギルドカードには、持ち主が討伐した魔物が記録される機能が付いてる。だから、Eランクでも受けられるこの依頼で、効率的にランク上げが出来るって寸法だ。」

 EランクからDランクに上がるには、Eランクの依頼を30個達成するか、Eランク評価される魔物を30匹以上討伐する必要がある。

 ちなみに、魔物には、E〜SSSまでランクが付けられており、それぞれ同じランクの冒険者で倒せるようだ。しかし、例外として、SSランクは、Sランク冒険者が全員で徒党を組んで、ギリギリ倒せる魔物で、SSSランクの最上位の魔物は、天変地異と同レベルの扱いを受けており、それこそ勇者でないと倒せないと言われている。

「確かに一理ありますね。」

 聡としては、1つの街に長居するつもりは無く、あちこち旅して回るので、最低でもBランクは欲しいと考えていた。なので、そこまではランク上げに集中したかった。

 だが、ルドルフは別の事を考えていた。

「だろ?」

ーコイツは将来、確実にSランクになる人材だ。だから、下位ランクでまごまごしてもらう訳にはいかない…。ー

 互いの思惑は別だが、ランク上げという目的は同じなので、ルドルフの言う通り、この依頼を受ける事にする。

「じゃあ、これで「ちょっと待てやコラ。」…何ですか?」

 聡が依頼書をエーリカの元へ持って行こうとしたところ、赤ら顔の、ルドルフ並にガタイが良いおっさんに絡まれる。

「『何ですか?』じゃねぇよ!てめぇみてぇなヒョロいクソガキが、エーリカにちょっかい出してんじゃねぇぞ!それに、その依頼を受けたところで、雑魚のお前じゃあ逃げ帰って来るのがオチだ!そういうの、迷惑なんだよ!」

 唾を飛ばしながら、口汚く罵るおっさん。どうやら、ルドルフとは違い、このおっさんは見た目通りのワルだったようだ。

「???」

「いや、サトシ。こっちを見て、『何で絡まれてるの?』みたいな、心底不思議そうな顔をするな。エーリカは人気者だからな。さっきのやり取り見て、お前に嫉妬してんだろ。」

「何だてめぇ。俺は嫉妬なんかしてねぇ!ただ、この身の程知らずのクソガキに、世の中の厳しさを教えてやろうってんだ!」

 ルドルフの言葉にキレるも、酔っ払っていながらルドルフに喧嘩を売るのは、マズいと本能的に察知できたのか、腰から剣を抜き、聡に向かって構える。
 すると、依頼ボードの前に、半径15メートル程の、円形の空白が生まれる。どうやら、ギルドに居る者達は、野次馬になるようだった。

「あ、ルドルフさん、エーリカさん。」

 そんな中、元から近くに居たルドルフと、騒ぎを聞きつけやってきたエーリカに、聡は声をかける。

「何だ?」

「どうしたの?」

「この方、剣を抜かれましたので、対処しても問題無いでしょうか?」

「「問題無いんじゃない(か)?」」

 2人同時にそう判断してくれたので、聡は静かに頷く。

「分かりました。」

 こうして、『冒険者ギルドで絡まれる』という、ベタな展開へと、聡は巻き込まれるのであった。

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